軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』148号・要約

試掘調査で軍医学校時代の遺構を発見
―地下1メートルにコンクリートの基礎―

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

D地区から見つかったコンクリート基礎

 厚生労働省は2月21日、元陸軍軍医学校の敷地内にあたる戸山5号宿舎跡地の試掘調査に着手・続いて本調査に入る。発掘調査は軍医学校跡地に埋められたとされる人骨の有無を確認するためのもの。
 人骨の会は調査に当たって、厚生労働省に「身元確認や遺棄された原因解明などにつながる周辺情報も併せて収集するよう求める」コメントを発表した。

 発掘を担当するテイケイトレード株式会社は、埋蔵文化財の発掘を手がけている会社。すでに軍医学校時代の建物の址とみられるコンクリートの基礎が発見された。

(2011年3月1日)

1月31日に厚生労働省は郡和子議員に発掘調査の説明をした

戸山5号宿舎跡地発掘調査について
  1. 目的
    • 地層・深度を確認する試掘と、その後の全範囲(約3千㎡)の掘削により、人骨の有無を確認する。
  2. スケジュール
    1. ① H23.1.27
      • 公共調達委員会審査(省内)
      1. ② H23.1.28
        • 入札公告開始 省内掲示板及び厚労省HPにて
        1. ③ H23.2.7
          • 開札(業者決定)
          1. ④ H23.2.8
            • 発掘調査開始
            1. ⑤ H23.3.31
              • 発掘調査終了

解説:人体標本の発掘調査について

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

左から郡議員・石井さん・川崎大臣(2006年)

 「松下さんは進駐軍に掘り出されたら困るので、木造の宿舎を建てて国立東京第一病院の医長クラスの人たちに住んでもらい、監視の意味もあって自分も住んだと言っていました。」(2006年6月23日 石井元看護師による証言)
 松下菊松・東一病院庶務課長の宿舎は住宅地図の中にある。そこは(今の)戸山5号宿舎解体跡地。石井証言に対し、2006年6月5日の衆議院決算行政監視委員会第三分科会において、川崎厚労相は郡和子衆議院議員の質問に、「(人体標本は)当然掘り出して、日本人であっても中国人であっても、丁重に埋葬しなきゃならない」と答弁した。これを契機に川崎厚労相と石井元看護師の面談が実現し、その場で川崎厚労相は発掘を明言し、真相究明の必要があるとの認識を示した。

昭和18年?頃の陸軍軍医学校配置図
東京航空写真地図第二集
(創元社 昭和29年3月31日発行昭和28年3月~4月撮影)
東京都全住宅案内地図帳(昭和37年1月1日印刷昭和37年1月5日発行)
入札説明書(仕様書)抜粋
    1. 件名
      • 戸山5号宿舎跡地発掘調査一式
    2. 目的
      • 旧陸軍軍医学校跡地に埋められたとされる人骨について、掘削によりその有無を確認することを目的とする。
    3. ~5. 調査期間・場所・対象面積 略
    4. 調査概要等 抜粋
      • (5) 人骨と思われるものが出土した場合には、掘削を中止し、速やかに監督員(厚生労働省職員)に連絡する。
      • (9) 調査に当たっては、埋蔵文化財(江戸層)の地質を見極められる調査員を常時2名配置する。
      • (10) 調査期間中に調査関係者及び一般住民を対象にした現地説明会を厚生労働省とともに開催する。
    5. ~9. 一般事項、施工計画等、施工 省略
    6. 施工写真
      1. 施工及び品質管理状況を撮影する。
      2. 撮影した写真は、説明書を添付して整理し、提出する。
      3. 現地発掘調査期間中は定点ビデオを設置し、調査の過程をすべて記録する。
    7. ~12. 完成写真、その他 省略
  • 試掘及び本格調査位置図 省略
平成23年度新宿区議会第一回定例会一般質問(2月25日)
国の戸山5号宿舎跡地の人体標本等の発掘調査について

質問者:河野 達男

発掘はD地区から始まった

 厚労省は今回の調査の目的を「人骨の有無を確認すること」としています。この地は、尾張徳川家の下屋敷跡だったところに、1929年旧陸軍軍医学校が移転し、周辺にも陸軍に関係のある施設が集中していました。敗戦後、戦争に関するさまざまな物証の隠蔽が行われ、その中で人体標本も埋められました。石井十世元看護師の証言に基づき、2006年、当時の川崎厚生労働大臣は、「標本が埋まっている可能性が高い戸山5号宿舎周辺を調査する」と明言されました。大臣は、平成22年度予算に調査費を計上し、昨年この宿舎は解体されました。本年2月8日、業者と契約、2月15日に地元説明会を開催しました。そこでは、2月21日試掘を6ヵ所で開始し、3月3日から敷地全体の本調査を開始するとのこと。そこでお聞きします。

 一点目は、本年度に入ってからのこの間の経緯について、また、2月15日の地元町会長への説明の概要とその時の質疑や意見について。
 二点目は、区も調査を見守ることと思いますが、調査内容などお聞かせいただきたい。
 三点目は、厚生労働省の調査概要には、「調査に当たっては埋蔵文化財包蔵地であることから、埋蔵文化財等の地質を見極められる調査員を常時2名配置する」としています。新宿区としての対応について。
 四点目は、新宿区として、厚生労働省に調査の公開などをしっかりと申し入れるべきではないか。

《 答弁要旨 》
 一点目について、戸山5号宿舎跡地の人体標本等の発掘調査については、昨年5月に、厚生労働省から区に対して、22年度予算で当該調査を実施する旨説明があり、当該調査に伴う文化財保護法の手続きについて意見交換を行いました。また、9月には区が立ち会う中で地元町会長に解体工事の説明が行われ、10月には解体工事が完了したところです。このような経緯を踏まえ、本年2月15日には区立ち会いの下、地元町会長に発掘調査の説明が行われています。
そこでは、人骨の有無を確認することを目的として、試掘調査と敷地全体を対象として掘削調査等が説明されました。また、各地区の町会長からは地域住民への説明用チラシや人骨等が見つかった場合の再度の説明等について意見や要望が出され、厚生労働省もその要望に答えるという回答がなされました。
 二点目について、場内6ヵ所で試掘調査を実施し、掘削する地層・深度を確認する。その後、重機及び人力によって、敷地全体の掘削を行い、人骨の有無を確認するとしています。
また、人骨らしき物が出土した場合には、一旦作業を中止し、法令に従い適正に処理することや、埋蔵文化財等の地質を見極められる調査員を常時2名配置するとの説明を受けています。
 三点目について、厚生労働省に区として申し入れを行い、遺跡の保護、保存に必要な指導・助言も行い、試掘調査には埋蔵文化財を毀損することのないよう、区の学芸員を現地で立ち会わせています。
 四点目について、調査期間中の説明会の実施や調査結果を公表する等、適切な対応をとるよう、厚生労働省に申し入れを行っていきます。

<新聞報道>
発掘前:東京新聞:2011年2月6日(日)
発掘後:河北新報・東京新聞・日経新聞・朝日新聞・THE JAPAN TIMESなど:2011年2月22日(火)

「人体の不思議展」監修委員会 委員長 森 亘様

平野 利子

 現在、「人体の不思議展」は開催準備中。厚生労働省の聞き取りに対して、主催者側は、標本は死体ではなく、「プラスチック解剖標本」といいだしています。
 京都府警は、プラストミック標本が人間の死体かという鑑定を求めていますが、今さら必要? 2003年、主催者が東京都に後援を求めたときに提出した養老孟司氏の文章(下)や、パンフレット中の監修委員長の森亘先生(東京大学名誉教授、病理学、元日本医学会会長)のごあいさつで、すでに認めています。
 昭和天皇は、当時、七三一部隊の実態を知ったら、人間としてどのような対応をされたでしょうか。
 森先生におかれましては、早急に、監修委員長として、日本医学界の代表として、展示されている標本は人間の死体(遺体)であることを含め、「人体の不思議展」に対する見解と今後の対応をご提示下さいますようにお願い申し上げます。

お花見ウォーク 毒ガスと人骨
第6陸軍技術研究所跡地から陸軍軍医学校跡地

4月3日(日)大久保駅集合

編集後記

鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)

東北太平洋沖地震の被害に遇われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
同時に、原発のような大規模・中央集権的エネルギーに頼る愚かさを指摘したい。

2011.3.13

定期購読者募集のご案内

年間4~6回発行している『究明する会ニュース』の定期購読をお願いしています。お申し込み詳細は【定期購読者募集】のページをご覧ください。
inserted by FC2 system