軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』147号・要約

厚労省、戸山5号宿舎跡地の発掘調査に着手
―埋蔵文化財調査員を常駐―

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

 厚生労働省は1月28日、元陸軍軍医学校の用地で人体標本が埋められているとされる戸山5号宿舎跡地の発掘調査に関する入札公告を行った。調査は2月中に開始、3月31日までに終了。「埋蔵文化財調査員(地質を見極めることができる者)を2名専任で配置」する。発掘は「工事」ではなく「調査」になった。厚労省の対応は評価できる。
 「人骨の会」は2月4日、厚労省から概要説明を受けた。試掘後の本調査では約三千平米の敷地全体を地下5メートルまで掘り込み、見落としのないようにするとのこと。 私たちはプレパラート標本などの「死体の一部」を見落とすことなく採集すること、調査を公開し、調査報告書を作成・公開するよう申し入れた。

人骨の会と厚生労働省との話し合い
日時:2011年2月4日(金)午後3時~4時
場所:厚生労働省 一階共用第二会議室
出席者:河内企画調整官(医政局政策医療課)、西岡運営管理係長(同)、渡邉久志営繕専門官
人骨の会:常石敬一、鳥居靖、渡辺登、石川久枝、根岸恵子、奈須重雄、平野利子、川村一之

発掘調査を間近に控え、報道の波紋

朝日新聞:陸軍軍医学校跡地 初の発掘調査へ《1月6日(木)》

その後、韓国聯合ニュース、京郷新聞、The Times、The Australianでも報道。

人骨発見21周年集会
「専門家にきく!軍医学校跡地の発掘調査で何がわかるか?」報告

質疑応答(二)

  • H・S
    •  衆人が検証できる体制が必要。毎日誰かが現場に行く、考古学の知識がある人間が調査体制の中に参画する、オープンな体制をつくる。人類学、軍事、医学の専門家も入って学際的に行うこと。ここは尾張藩下屋敷。東京は埋蔵文化財センターでもやれる。
  • 常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)
    •  厚労省に任せてしまうのではなくて、みんなで見守って行きましょう。できるだけ報道をしてもらい、みんなが楽しみに待っとるんだ、監視ではなくそういう雰囲気を何とかつくれないか。
  • 佐藤 正己
    •  調査主体はどこか。民間の調査会社は人骨調査の経験はない。その点はしっかり学際的にやらないといけない。我々が圧力をかけないと、後世の検証に耐えるような調査にならない。
  • 川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)
    •  今度の調査は私どもは考古学的な調査に準じてやってほしいと言っているが、厚生労働省としては人体標本がその土地に埋められているか否かの調査。この地域は埋蔵文化財の包蔵地に指定されているので、東京都・新宿区と調整をしながら進める。
       厚生労働省が競争入札でどういう調査会社を選定するか、ということになるだろう。
  • H・S
    •  東京都では教育委員会は関与しない?
  • 川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)
    •  東京都の埋蔵文化財調査の場所だが、土地は公園課が買収する。
  • 小野 賢一
    •  厚労省の副大臣(現・厚労大臣)の一人に戦後補償に関心のある方がいる。
  • 常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)
    •  今回は、自民党内閣時代の厚生労働大臣の時に約束をした。副大臣が公に約束したら、ずっと引き継がれる。
  • 河野 達男
    •  6月10日に新宿区議会本会議で一般質問した。区としては地域文化部の文化国際観光課が文化財保護の担当なので、そこがきちんと相談すべき。区長も、連携をとりながらやっていくという。議会としてもきちっと報告を求めながら、これからも戦争の加害の現場にも関心を持っていきたい。
  • 長谷川 順一
    •  一つは菊池さんに質問。解体は入札だが調査は入札か、随意契約か。例えば群馬県の道路工事の時には財団法人埋蔵文化財センターに指名になるのか。曙橋の外苑東通りの拡幅工事では、埋蔵文化財センターの管理下で新井組がやっている。もう一つは提案。ネットでの仮囲いだから、調査している所がいつも見える。今回もあの場所で毎日見る体制がとれないか。
  • 菊池 実(群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員)
    •  群馬の場合は教育委員会が調整事務をするが、実際の発掘になると事業団で指名競争入札になる。全体像は私たちが見て、その都度細かく指示をする。
  • 常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)
    •  みんなでウォッチするとき、楢崎さんの資料などで勉強しておくと、監視ではなくて楽しみながら現場に行く事が出来るんじゃないかと思う。
  • 楊帆
    •  中国から来た留学生。行政は大事(おおごと)にしたくないと思っている。調査にどれだけオープンになるのか、データは公開されるのか、どういう形で保存するのか。
  • 李 一満(東京朝鮮人強制連行調査団の朝鮮側事務局長)
    •  隠ぺいされた過去を掘り返すという事だが、新しい隠ぺいが一番危惧される。僕は戦前の日本の体制が今も続いていると思っている。僕らが主体的アクションを起こせればと考えている。
  • 常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)
    •  今日は日本の報道機関の方も来ておられる。今、中国や朝鮮の方の発言もあった。日本は外圧に弱いというから、ぜひそれぞれの国の報道機関にも働きかけてほしい。僕らは僕らとして、一人一人が出来る事をやろう。今回の調査は本当に画期的。集会アピールの提案をどうぞ。
  • 根岸 恵子
    •  集会アピールを朗読・承認(内容はニュース144号に掲載)
    • アピール
  • 楢崎 修一郎(生物考古学研究所・人類学者)
    •  世界中どの医学部にも、人体標本はある。
      アメリカでは、南北戦争・第二次世界大戦と、遺体をきちんと祖国に帰すということを行っている。法医人類学が発展したきっかけは、朝鮮戦争。アメリカ兵の戦死者の死体を福岡県の小倉で回収し、鑑定・同定した。
      その当時、後の東大教授・埴原和郎、元立教大学・香原志勢、アメリカで法医人類学の研究をされた古江忠雄の各先生が雇われて協力した。
       一方、日本では、私の実父の兄は当時のビルマ(現ミャンマー)で戦死したが、遺骨は帰っていない。
  • 菊池 実(群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員)
    •  埋蔵文化財の取り扱いを含めて、試掘の段階できちんと調査計画を立てないと失敗する。最初の調査は慎重に。先ほど発言されたSさんは、私が大学一年で初めて発掘調査をした時にお世話になった。その節はどうも有り難うございました。

専門的な質問が続く
河野 達男 さん
長谷川 順一 さん
李 一満さん
後ろは小野さん
恒例2011年 お花見ウォーク
毒ガスと人骨 第六陸軍技術研究所跡地から陸軍軍医学校跡地へ

期日:4月3日(日)
集合場所:JR大久保駅北口改札口

訪日団来日
七三一部隊被害者遺族、李鳳琴さん集会で証言
父親の写真を掲げる李鳳琴さん

害者遺族・李鳳琴さん、ハルビン市社会科学院・鄭懋暁の各氏が来日。李さんは、遺骨の遺族の可能性もある。

 訪日団は23日、金館長が「15年戦争と医学・医療研究会」で講演。夕方から証言集会「父は帰ってこなかった」に参加。登戸研究所資料館に所蔵されていた石井式濾水機の濾水管が七三一記念館に寄贈された。

 24日は議員と懇談。その後、京都、広島へ。

人体の不思議展」の標本は遺体!
厚生労働省、見解を示す

 厚生労働省は、京都の市民グループの質問に対して、展示標本は遺体であることを認めた。
京都新聞・夕刊:2011年1月19日(水)

質問書

 ドイツでは、プラスティネーションを開発したハーゲンス氏が標本をネット販売。ドイツのカトリック教会とプロテスタント教会は、反対の共同声明を発表。

共同声明:「人間の尊厳は、遺体に対しても該当する」

(プロテスタント教会のバーデン領邦教会のサイトから。)(訳 佐藤健生)

ドイツ教会の声明を伝えるロイターの記事
https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-17820920101025
第四回(最終回)連続フィールドワーク
無事終了「上野戦争の戦跡」を辿る

安松 貉

 1月23日、「坂の上の雲を斬る」最後のフィールドワーク開催。参加者10名。
 上野公園は戊辰戦争・上野戦争の戦場であり、東京大空襲の追悼碑もあり、坂の上の雲の主人公の一人、正岡子規も関係が深い。

上野大仏・首から下は戦時中供出

2011.2.6

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