The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College
文責:河西 悦子
2005年7月23日、末永恵子さんの講演「戦時医学の実態:旧満州医科大学の研究」が行われた。参加者は約40人、小学校の先生や医師、ノンフィクションライターなど多彩な顔ぶれ。
末永先生の丁寧な説明と豊富な資料により、旧奉天でその近代性を誇った旧満州医科大学の実態が立体的に浮かび上がった。同医科大学は後藤新平の発案により創立、満州植民地行政の一機構として「開拓衛生」を担うよう期待された。その一方で微生物学的、解剖学的レベルに還元された人間の身体を「人種」のラインで分断することにより「中国人」「日本人」を再定義、それによって積極的に植民地社会を構築していった。更に、医学と戦争の関連が説明された。
講義の後、常石先生の司会で質疑応答、多くの質問があった。特に植民地における知の生産機構としての「医学部」、また支配のエージェントとしての「医者」の権威・権力については、植民地状況だけに還元しえない問題を含む。また植民地社会が「人種」だけでなく階級の軸によっても構成されていたという末永先生のご指摘(旧満医大出身の「愛新覚羅憲均」が抗日軍兵士の身体を実験に供することを提案した問題など、「中国人」のグループが戦時医学の主体・客体に分断されたということ)への驚きの声も聞かれた。
旧満医大の建物を取り壊す予定。旧図書館に放置されている満医大時代の資料はその際廃棄される可能性がある。資料だけでも保存する必要性が指摘された。
末永先生の今回の講演によって私たちは、医学犯罪と戦争のつながりが七三一部隊や新宿戸山の問題を越え、広い裾野を持つことを学んだ。様々な意味でイベント性に富んだ集会となった。
人民網日本語版2005年7月25日
3月1日山陽新聞:「63年ぶり無言の帰郷 遺骨 遺族と再会」
6月4日朝日新聞:「戦争遺跡、文化財に 国・自治体指定や登録 軍施設・壕…100件超す」
6月12日朝日新聞:「遺骨返還60年目の道 朝鮮半島出身徴用者」
7月2日朝日新聞神奈川版:「早大キャンパス隣にかつて陸軍軍医学校731との関連指摘も」
8月4日朝日新聞:「七三一部隊長名ノート発見元側近宅から2冊、直筆か」
8月15日朝日新聞:「731部隊に現金供与 GHQデータ提供見返りに米文書に記述」
8月6日~7日 フォーラム「戦後60年共生のアジアを!」でパネル展示
8月13日 「平和のための戦争展」でフィールドワーク
平野 利子
私が犠牲者なら、いまさら謝罪の言葉も補償も必要ない。私は思い上がっていた。無念の思いでなくなられた、かわいそうな犠牲者のためにと!… 「七三一部隊」や「人骨」の問題は亡くなられた人々のことだけではなく、これからを生きる人の問題であると思い始めた。
「人体の不思議展」で展示されている『プラストミック標本』は、人の遺体の体液部分を樹脂に置換させたもの。主催者側はこの「標本」から人間や命等について学び、この標本を「自分自身」であると感じてほしいと言う。でも、私は、彼等が生前、このような標本になることを望まれたのかという疑問は感じたが、主催者側が期待することは学べなかった。ある講演会で、監修委員会の委員の一人である養老孟司さんに「プラスティネーションの将来と必要性」を質問したところ「世の中に必要ない物はない。」と答えた。しかし、世の中にはあってはならないものもあるのではないか。
「遺体は抜け殻で魂は宿っていない。だから不要になった入れ物はどんな風に利用しても問題はない。」という考え方もあるが、心と体が同じ世界にあるからこそ一人の人間だ。あの空から「日本人は我々の骨をどうするつもりなんだろう?」と心配している彼等(人骨たち)に、一日も早く事実を解明して、遺骨(体)を送り届けたいと願っている。
(了)
2005.8.28
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