軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

第136回 国会 厚生委員会 第6号
平成八年三月二十五日(月曜日)午後一時三分開議

質問者岩佐恵美衆議院議員
回答者亀田克彦厚生大臣官房総務室審議官
菅直人厚生大臣

岩佐委員
 まず、人骨問題について伺いたいと思います。
 今から七年前の一九八九年七月二十二日、新宿区戸山町の国立予防衛生研究所の現在の所在地である旧陸軍軍医学校跡地から、百体を超える人骨が発見されています。この軍医学校の一画には、細菌兵器の研究開発部隊である七一三部隊の司令部ともいうべき防疫研究室がありました。この七三一部隊が戦時中、中国人や朝鮮人、ロシア人の捕虜をマルタと呼んでチフス菌やペスト菌、炭疽などの細菌を使った生体実験をやったことは、これは明らかになりつつある事実であります。この跡地から百を超える人骨が見つかったことから、この人骨が人体実験された外国人捕虜あるいは民間中国人らの遺骨ではないかという疑念が持たれています。
 当委員会でも、九二年二月に、山下徳夫厚生大臣がこの件について調査を約束しておられます。その後、どういう調査になったのか、教えていただきたいと思います。

亀田政府委員
 御指摘の、人骨が発見されました旧陸軍軍医学校跡地は、現在、国立予防衛生研究所の敷地となっております。このことから、厚生省といたしましては、人骨が発見された土地の管理者という立場から、人骨の由来につきまして調査を行っておるところでございます。
 調査の内容でございますけれども、旧陸軍軍医学校関係者約三百人に対しまして、郵送によるアンケート調査を行っております。また、そのうち一部の方につきましては、直接訪問をしてお話をお伺いする、あるいは電話によりまして聞き取り調査を行っているところでございます。また、あわせまして、例えば「陸軍軍医学校五十年史」あるいは「大東亜戦争陸軍衛生史」等々の陸軍軍医学校関係の文献調査等も行ってきたところでございます。
 現在、これらの三つの調査、アンケート調査、聞き取り調査、それから文献調査でございますが、これらの調査内容の関連等につきまして引き続き調査をしておるというのが現状でございます。

岩佐委員
 大臣に、時間がありませんので、三点について検討をお願いしたいと思います。
 もう七年もたっているわけですけれども、今お話があったように、まだ調査結果がきちんと出ていないわけです。最近まで、予防研究所の歴代所長、副所長の多くが軍医学校や七三一部隊関係者で長年占められてきました。もうそうした関係者は高齢に達しています。ですから、早急に調査をしていく必要があると思います。まず第一点は、専門の調査班を設けて、ぜひ取り組んでいく必要があるというふうに思います。その点について検討をいただきたいと思います。
 それから、新宿区が札幌学院大学の佐倉教授に依頼をした人骨に関する鑑定書が九二年四月二十二日に公表されました。
 内容については十分御承知だと思いますけれども、念のためちょっとかいつまんで申し上げたいと思いますが、「(一)人骨の土中経過年数は数十年から百年以下。(二)固体数は前頭骨だけで六十二体、全体では百体以上。女性は四分の一で未成年者も含む。(三)モンゴロイド系の異質な人種が混在しており、一般日本人集団の無作為標本ではない。(四)切断、刺創、銃創、の痕跡、ドリルによる削孔、鋸断、破切など人為的加工の痕跡あるものを含み四肢骨の多くはいろいろな位置で意味不明の鋸断跡がある。」などが明らかにされています。
 単純な身元不明の行き倒れ人集団ではありません。戦争犠牲者の可能性が高いと言われています。しかも、非戦闘員の女性あるいは未成年者が含まれているわけです。数十年を経過した百体以上の主に外国人の人骨で人為的加工、つまり殺害の痕跡が認められるというふうになれば、真相の究明なしに焼却することは許されないと思います。国としても、鑑定を行うなり、今の区の鑑定結果について検討するなりの必要があるというふうに思います。厚生省として真相を究明し、結論が出るまで人骨をきちんと保管すべきだと思います。この点が第二点です。
 また、新宿区の小野田区長は、北京市東城区との友好交流都市提携の際に、遺骨が中国人被害者のものと判明すれば中国に返還をする、そういう約束をしておられます。中国の敬蘭芝という方は、日本政府に対して、遺骨の中に夫のものがあるかもしれないという申し立てを行っております。敬さんの申し立てにこたえるためにも、少なくともDNA鑑定などが必要であるというふうに思います。
 以上、三点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

亀田政府委員
 先ほど申し上げましたように、ただいま鋭意調査をしておりまして、できるだけ早くとりあえずのまとめをいたしたい、こう考えておるところでございます。

岩佐委員
 大臣九二年二月に、大臣は調査をいたしますということで答弁をされて、もう九六年ですから四年になるわけですね。鋭意調査をしておりましてという段階ではないと思います。
 それで、毎年毎年、新宿区はこの骨についてもう焼却をするという予算を計上しているわけです。この問題がうやむやにされるということは私は許されないというふうに思います。戦後処理の点についても、外国人の、日本人でない、そういう骨の疑い、可能性が非常に強いという場合には外交問題にもなるというふうに思うのです。
 そういう点で、政府として積極的にこの問題に取り組んでいかなければいけない、事務方に任せているだけでは済まない、そういうふうに思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

菅厚生大臣
 この問題、以前から時折耳にはしておりましたが、きょうの質疑でこういう形で御質問があるというのは、私も十分承知をしておりませんで、必ずしも細かい状況を私自身はまだ把握をいたしておりません。
 ただ、今の質疑を聞かせていただいておりまして、従来、以前の大臣が国会に対して調査のお約束をしておられるわけでありますので、当然、その調査をきちんとした上で、報告できるところまで来ましたら報告しなければいけない。私も、もうちょっと状況を把握した上で、そうした方向についてどのようにできるか検討させてみたい、こう考えております。

岩佐委員
 それでは、大臣、非常にみんなが心配しているのは、うやむやのうちに焼却をしてしまうということがないようにという心配を非常にしているわけですね。そういうことだけは、その焼却という結論だけは急がない、こういう約束はされますか。その点、いかがですか。

亀田政府委員
 例えば、建築工事現場等から遺骨等が発見されまして引き取り者が判明しない、こういう人骨につきましては発見地の市町村において埋火葬を行う、こういうことになっておるところでございますが、本件につきましては、先ほど申し上げましたように、大変難しい調査でございますけれども、人骨の由来につきまして現在調査を進めておるところでございます。
 したがいまして、この調査の結果でございますとか、あるいは新宿区に対しまして現在裁判が起こされておりまして、最高裁で審理が行われております。そういう結果等を見ながら、大臣とよく相談をしながら対応を検討していきたい、こういうふうに考えております。

人骨問題・答弁記録

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