軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

第120回 国会法務委員会 第5号 平成三(1991)年三月八日(金曜日)午前十時開議

質問者鈴木喜久子衆議院議員
回答者井口憲一警察庁刑事局鑑識課長

鈴木(喜)委員
 これは科捜研の方にお聞きしたいことなんですが、新宿区の元陸軍軍医学校があったところで、そこのところに現在国立予防衛生研究所というものを建設しようとして工事を始めたところが、そこから人骨約三十五体分ぐらいのものが出てきたという事件が、平成元年の七月に起こりました。このことに関して、この遺体といいますか、人骨をどのような形で処理するかということで、もう大分たちました、平成元年ですから二年ぐらいたつわけですけれども、その間に、この人骨が果たして犯罪に関係あるかどうかという意味を含めてでしょうか、出てきてからすぐに、警察署の方でまず現場写真を撮ったりして、人骨をいろいろと検査されたということなんですが、この点については、現在どの程度のことが科捜研の方で判明しているのでしょうか、教えていただきたいと思います。

井口説明員
 お答え申し上げます。
 本件につきましては、警視庁牛込警察署に、平成元年七月二十二日に通報がございました。現場におきまして調査を行いました牛込警察署は、当初、頭蓋骨を含めました人骨と思われるものが発見されたわけでございますが、これを、科捜研と今先生おっしゃいましたが、警視庁の科学捜査研究所のことでございますが、ここに調査を依頼いたしました。これを受けました科学捜査研究所におきましては、運ばれました頭蓋骨五個それから人骨の、完全ではございませんで、断片でございますが、頭蓋骨以外の骨二個について調査を行ったわけでございます。
 この調査結果によりますと、頭蓋骨五個分のうち二個は男性のもの、一個は女性のもの、この女性のものにつきましては二十歳ぐらいというふうに年齢が推定されております。残り二個については、性別、年齢ともに推定ができなかったということでございます。また、頭蓋骨以外の骨の断片二個につきましては、これがそれぞれ、左大腿骨それから左脛骨であろうという推定がなされただけでございまして、それ以外の点については不可能でございました。
 また、全体といいますか、すべてのものにつきまして、外観検査は当然のことでございますが、紫外線照射検査と申しまして、紫外線を当てまして、これは目的は古さを調べるものでございますが、この検査によりまして、この骨は非常に古いということなのでございますが、その古さが少なくとも二十年以上経過しているという結果が得られたわけでございます。
 現在のところ判明いたしておりますのは、以上のことでございます。

鈴木(喜)委員
 今わかったことの中に、性別はわかったのとわからないのとあるのでしょうが、まあわかったと。それから推定年齢のわかったものもあるということですね。それからもう一つの、紫外線照射検査ですか、その検査の中で、埋蔵されてから少なくとも二十年はたっているということがわかったというようなお話でしたけれども、これは人種はわからないのですか。

井口説明員
 お答え申し上げます。
 人種というその考え方でございますが、例えばで申し上げますと、形態人類学と申しますか、そういう立場からは、日本人と西欧に住んでいる西ヨーロッパ人との比較をいたしますと、一般的には頭蓋骨の形状その他からある程度の推定は可能というふうに学会でも言われているようでございますが、それ以上の細かい人種の分類ということは、骨からは不可能というふうに理解いたしております。これも、もちろん骨が壊れていないといいますか、完全な状態に近いという前提でございまして、その場合でそういうある程度の推定が可能、いわゆる大きい人類の分類と申しますか、大分類の推定は可能かというふうに理解いたしております。

鈴木(喜)委員
 分類が可能であるとすれば、これは一緒に、現在この事件に関して、この人骨、頭蓋骨について、大分類で結構でございます、例えばモンゴルとかアジア系の方とか、またはヨーロッパの方だとか、そういった大きな分類でも結構でございますけれども、その検査の結果はいかがでしたでしょうか。

井口説明員
 お答え申し上げます。  今回の科学捜査研究所の調査は、その目的と申しますか、警察といたしまして犯罪に関係がありやなしやという観点から調査いたしたものでございますので、そのいわゆる人類学的な観点からの調査はいたしておりません。

鈴木(喜)委員
 犯罪に関係があるかどうかということでいうなれば、性別にしろ推定年齢にしろ、直接的な関係はないと思うのですよ。あるとすれば、二十年たってしまって時効の問題が成立しているのでもうこれ以上ないということであるならば、その点があるとしても、人種の問題というのは、どこでどのような犯罪が行われたか、属地主義なのか属人主義なのか、被害者がどういう方なのかということも、一つの犯罪の問題の中ではかなりかかわりのある問題になると思うのです、もし犯罪であれば。
 だから、そういう意味ではそこを調べないでおくということは非常におかしいと思うのですけれども、ここだけ抜けている。
 大体、私たちが、骨が出てきて、一体どうかということを見れば、人の骨なのかそうでない何かほかの動物の骨なのかという区別から始まって、人種というのは頭の中にすぐくると思うのです。人種がきて性別がきて年齢がきて、まあ血液型まではちょっと骨からはどうかなとは思いますが、そういうことが頭にきます。そういった年齢とかそういうものの中に絶対出てくる一つの要件だと思うのですよ。それを抜かして、そしてあえて検査されるということがあるのかなということがまず疑問なんですが、その点いかがでしょうか。

井口説明員
 お答え申し上げます。
 ただいま大変言葉足らずのお答えでございました。
 調査をいたしておりませんと申し上げましたが、現状では、実際に発見された頭蓋骨が非常に古いという状況のもとで、例えば完全に形をとどめているものがないというような状況でございます。そのような状況のもとで、先ほど申しましたように人種の大分類が可能と申しますのは、これはあくまで頭蓋骨の形状だけではなく、例えば鼻孔と申しますか鼻の穴の大きさ、あるいは顴骨、頬骨、これらをいろいろ厳密に測定しなければいけないわけでございますが、それが可能な状態ではなかったというふうに理解いたしております。

鈴木(喜)委員
 可能でなかったということと、しなかったということでは随分な違いがあると思うので、その点は、言葉足らずとか説明足らずの問題ではなくて、実際に人種というものについて調べたけれども調べようがなかった、技術的に不可能であったとおっしゃるんならば、もしもっと技術が進んでできるようなことがあればするということが可能なわけですよ。それと、これは全く関係がないからしなかったという御説明は何となくわからないのですが、ここで今私が確認をしますと、人種ということについては、調べようと思ったけれどもまだ資料不足で、または資料が古くて調べられなかったというふうにお答えをいただいておきます。今そうおっしゃったと思います。間違っていたら後で言ってください。
 時間がないので、この問題についてはまた折に触れてやらなければならないと思っておりますけれども、人骨がたくさん出てきた、少なくとも二十年、もっとたっているであろうというけれども、これが何百年も昔のものであることもないし、百年はたっていないんでしょうか、その幅ですね。例えば二十年から五十年ぐらいの幅とか、そのあたりのことは調べておられるのでしょうか、どうでしょうか。一言で結構です。

井口説明員
 先ほど申しましたように、犯罪に関係があるかどうかという観点からというものでございますから、それが百年前のものかあるいは二百年前のものかという点での調査は、いたしておりません。

鈴木(喜)委員
 時間が来ましたのでここまでになりますが、要するに人道上の問題です。これはほかの方から見て百年も前のものではない。四十年、五十年前ということぐらいまでしかない。もっと幅が短いかもしれません。そうすると、その間にあったら、この骨は、どこの国であれ、その故国で眠ることが必要なものでございますから、これをきちんと眠らせるということは、人道上もそして国際法上の問題からいっても、そこまで調べる必要があると思うのです。  これから先、また機会がありましたら何回でもいろいろと教えていただきたいと思います。

人骨問題・答弁記録

inserted by FC2 system