このたび「軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会」では、「人体の不思議展」を企画立案そして興業しているハーゲンスの最近の、特に人体標本のネット販売を計画したことに対する、ドイツのカトリック教会およびプロテスタント教会の声明文の翻訳を佐藤健生さんにお願いしていました。それが完成しましたので、公開します。引用は自由で、「人骨の会」のクレジットを入れても入れなくても結構です。

 

「人間の尊厳は、遺体に対しても該当する」 

プロテスタント教会のフィッシャー領邦教会監督とカトリック教会のロベルト・ツォリッチュ大司教が、計画中の人体加工標本(プラスティネーション)のネット販売に対して見解を表明 

20101020日)プロテスタント教会の領邦教会監督ウルリヒ・フィッシャー博士(カールスルーエ)とカトリック教会の大司教ロベルト・ツォリッチュ博士(フライブルク)は、プラスティネーションのネット販売を阻止し、「このタブー破壊を許さない」よう政界や各省庁に要請する意向である。両者は、諸外国では標本化された遺体はすべて、本人が生前に標本化に同意したものであるという証明を司法機関が要求していると指摘している。センセーションを巻き起こしている巡回展示会(「人体の不思議」)などを通じて物議を醸し出している商売人も同様に、彼の手で加工された屍体が、例えば中国で死刑判決を受けた囚人のものではないことを証明する必要がある。ドイツは「少しずつであれグローバルな屍体取引の拠点になって」はならない。

 

領邦教会監督ウルリヒ・フィッシャー博士の見解:

 「屍体の標本を作るという『人体標本作成者』グンター・フォン・ハーゲンスの本来の関心事は、学問と啓蒙に奉仕することにあった。しかし屍体から『芸術品』を作り、それを展示するというその後の歩みは、受け入れがたい。人間の尊厳は、遺体に対しても該当する。

 そして今さらに進んで、ハーゲンスは屍体をネットで『販売する』すると予告しているが、それに対して私は厳しく抗議する。人間の亡骸が商品になるという時点で、彼は人間の尊厳を侵している。グンター・フォン・ハーゲンスは、過去においてメディアや経済上の成功を志向した「人体の不思議」展を通じて、彼が学問にのみ奉仕するつもりではないことを示している。ネットでの屍体販売に際して悪用を回避することはまことに難しい。」

 

同様にフライブルクの大司教ロベルト・ツォリッチュ博士も、屍体の販売を通じて人間の尊厳が死後も傷つけられると見ている。

 「人間の尊厳は不可侵である。それは死後もかわりない。それ故人間の身体が見せ物の対象やスペアの在庫品に貶められてはならない。計画された屍体プラスティネーションのネット販売では、遺体が経済的利害の対象となっている。このような道具化は、タブー破壊であり、キリスト教の信仰に基づき、私たちの文化を特徴づけている死者への敬意に背くものである。

 グンター・フォン・ハーゲンスによって開発されたプラスティネーションの方法が、―学問的に見て―画期的なものと評価されようとも、今や以下の点は明らかである。ここにおいてはもはや、学問や研究にとっての新たな認識が問題なのではなく、医学的解明を隠れ蓑にした屍体の略奪とスペクタクルにほかならないのである。」

(マルク・ヴィッツェンバッハー、広報担当官) 

http://www.ekiba.de/12310_14232.php 
(プロテスタント教会のバーデン領邦教会のサイトから。)(訳 佐藤健生)

以下はドイツ教会の声明を伝えるロイターの記事です。

ドイツの解剖学者、人体標本のネット販売を開始

2010 10 25 17:26 JS

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-17820920101025


     

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