国会質問と回答 その2

第128回国会 厚生委員会 第3号   平成五年十一月十一日(木曜日)午前十時二分開会
質問者 栗原君子参議院議員   回答者 佐々木典夫厚生大臣官房総務審議官 大内啓吾厚生大臣 
栗原君子君 次は、旧陸軍の軍医学校がありました跡地で発見されました人骨のことでございますけれども、この真相究明につきましてお尋ねをさせていただきたいと存じます。
 厚生省は、一九八九年の七月二十二日に、国立予防衛生研究所建設現場、これは旧陸軍の軍医学校がありましたその跡地でございますけれども、ここで発見されました人骨に対して、今日までどのようにかかわっておいでであったのかお伺いいたします。

政府委員(佐々木典夫君) お答え申し上げます。
 旧陸軍軍医学校跡地で発見されました人骨について、厚生省は今日までどのようなかかわりを持ってきたかというお尋ねでございます。
 今お話にもございましたけれども、平成元年七月二十二日でございますが、新宿区戸山にございます現在の厚生省戸山研究庁舎、これは三つの国立の研究機関を合築するということで始まったものでございますけれども、そこの建設工事現場におきまして人骨が発見されたわけでございます。
 直ちに、工事を担当しておりました建設省関東地方建設局の職員から牛込警察署に届け出がなされたわけでございます。翌日二十三日には牛込警察署から警視庁科学捜査研究所に鑑定が依頼されまして、翌二十四日、人骨は最低二十年以上は経過しておる、それから犯罪と認められる証跡はなかったという結果が発表されたところでございます。また、その翌日でございますが、東京都によりまして現状調査の上、埋蔵文化財には該当しないという確認があった、こんな経過をたどったわけでございます。
 そして、二十四日に牛込保健所によります現場確認が行われまして、翌二十五日に同保健所から新宿区に人骨発掘確認書が提出された、こういった経過をたどってございます。そして七月二十六日、新宿区は人骨を引き取った、こういう経過を経て、現在新宿区において人骨が保管をされておるという状況でございます。
 厚生省は、発見場所の土地管理者という立場から、この人骨につきまして、引き取り人の判明しないものとして、同年八月、墓地埋葬法等の関係法令に基づきまして、新宿区に対して手厚く葬っていただくよう依頼をしたところでございます。
 その後、経過を経まして、現在厚生省としましては、平成四年二月の衆議院厚生委員会におきます御審議等の国会におきます御質疑を踏まえまして、当該人骨の由来について、旧陸軍軍医学校関係者への事情聴取あるいは関係文献の調査等を実施してまいっておるところでございます。
 なお、この間新宿区におきましては、平成三年九月にこの人骨につきまして独自に専門家による鑑定を依頼されました。厚生省は、その結果につきまして平成四年五月に区の方から報告を受けておるわけでございますが、新宿区と今後の取り扱い等について協議を重ねてきておる、こういったような経過をたどっておるところでございます。

栗原君子君 今いきさつをいろいろ聞かせていただきましたけれども、こういった中で新宿区が佐倉さんと言われる方に依頼をなさいまして、佐倉さんが鑑定をしていらっしゃるわけでございますけれども、私はその佐倉鑑定というのをどのように評価していらっしゃるのかな、こう思うわけでございます。
 一九九二年の四月二十二日に公表されました、ここに佐倉鑑定という佐倉さんがお出しになられました鑑定の報告書があるわけでございますけれども、これが旧陸軍の軍医学校の標本類であることが明白になっているというようなことが書かれているわけでございますが、この佐倉鑑定というのをどのように評価していらっしゃるのか、また標本として認識をしていらっしゃるのかどうかお尋ねをいたします。

政府委員(佐々木典夫君) 旧陸軍軍医学校跡地の人骨につきましては、先ほども申しましたが、新宿区の依頼によりまして、いわゆる佐倉鑑定というふうに言っておられるわけでありますが、札幌学院大学の佐倉教授が「戸山人骨の鑑定報告書」ということでまとめられまして、私どもも新宿区から報告を受けているところでございます。
 この鑑定につきましては、現時点における科学的な調査としては手は尽くされたものではないかと私どもも考えておるところでございますが、この人骨が旧陸軍軍医学校の標本であるかという点につきましては、この佐倉鑑定によりますれば、例えば、一つに多数の人骨が集中して発見されていること、二つには人為的な加工の痕跡が認められること、三つにはホルマリン等によって固定されたものがあったことなどが指摘をされておりまして、そういう意味でその可能性は私どもも否定できないものというふうに思っております。
 厚生省といたしましては、現在、先ほども申しましたが、旧陸軍軍医学校関係者に対しまして人骨の由来についての聞き取り調査、アンケート調査あるいは関係文献の調査を鋭意進めているところでございます。旧陸軍軍医学校の標本であるかどうかにつきましては、その結果も含めて判断をしてまいりたいというふうに考えております。

栗原君子君 この鑑定書の中にいろいろ頭蓋骨が出ているわけでございますけれども、中には頭蓋骨の中で切り取ったようなものも実際にあるわけでございます。それから、ここに写真を持ってきておりますけれども、これは骨なんですけれども、ここにのこぎりでひいたような跡のようなものがついているわけでございます。それから、こちらはドリルで穴をあけたような状況になった、こういったものも出てきたわけでございます。そしてもう一つ、こちらには鈍器で切り取ったといいますか、こういった写真もあるわけでございまして、どう見てもやっぱりこれは普通の行旅死亡人とかそういうものじゃないし、何かいわれのあるような人骨に思えるわけでございます。この骨が何かすごく私たちに重いものを物語っている、このように私は思っているわけでございます。
 次に、この人骨の取り扱いに対して法的な措置をどのようになさろうと考えていらっしゃるのかお伺いをさせていただきたいと思いますが、軍医学校の実験に使用された人骨であるならば行旅死亡人には当たらないわけでございます。それから、死体解剖保存法というのがございますけれども、これらに基づいた処置をすべきだが、どのように厚生省の方では考えていらっしゃるのかお伺いいたします。

政府委員(佐々木典夫君) お尋ねは、人骨が軍医学校の実験なりに利用されたものではないのか、そうだとすれば死体解剖保存法に基づく処置が要るのではないかというふうに受けとめるわけでございますが、私どもとしましては、仮に人骨が軍医学校の実験に利用されたものでありましても、長期間を経まして工事現場で発見された人骨でございますので、墓地、埋葬等に関する法律第九条の適用があるものというふうに考えているところでございます。

栗原君子君 それでは、人骨の所有権ということが言われると思うんですけれども、これらはどこにあるものか。私たちは、厚生省に所有権があるのかな、こういうことを考えるわけでございますが、人骨が標本であるならば、軍医学校のその後の事務を引き継いだ厚生省にその所有権があるように思うわけでございます。そして私は、そうすれば厚生省がこれに対して適切な対応をしていく必要がある、こう思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

政府委員(佐々木典夫君) お尋ねは、人骨が陸軍の軍医学校の標本であるとするならば、軍医学校の事務を引き継いだ厚生省の所有になるんではないかということかと存じますが、先ほども申しましたけれども、人骨につきましては、軍医学校の標本であったかどうか、なお厚生省としましては人骨の由来についての調査をいたしてございますので、その結果を待って判断をしたいと思うわけでございます。
 なお、その人骨の所有権についてのお尋ねにつきましては、仮に旧陸軍軍医学校の標本であったといたしましても、人骨として発見されたものでありまするので、先ほども申しました墓地埋葬法等の法令に基づいて新宿区において手厚く葬っていただくのが適当であるというふうに考えているところでございます。
 先ほど、死体解剖保存法の関係で墓地埋葬法の九条の適用があるとやや簡潔に申したわけでございますが、若干補足させていただきますと、死体解剖保存法は、医学の教育または研究に資するために死体の解剖を行い、標本として保存する場合に適用があるというわけでございますが、仮に標本であったといたしましても、それを処分する場合には他の死体同様墓地埋葬法が適用される扱いになっておるわけでございます。
 当該人骨は工事現場で発見されたものでございまして、身元の判明しない人骨といたしまして墓地、埋葬等に関する法律に従って火葬または埋葬に付されることが適当というふうに私どもは考えているところでございます。

栗原君子君 それで、先ほど写真を見ていただきましたように、人骨がこれは私たちに何か歴史の重いものを呼びかけているように思うわけでございますけれども、これはやっぱり戦争犯罪に関与しているんじゃないかな、私たちはそういう懸念を抱くわけでございます。
 この人骨の鑑定を行った佐倉朔札幌学院大学教授は、実験材料は手に入りやすい戦場などから持ち込まれたことがあり得る、このようにされているわけでございます。侵略戦争時の戦争犯罪とも関係すると見られていることについてはどのように承知していらっしゃるのかお伺いをいたします。

政府委員(佐々木典夫君) お尋ねにつきましては、人骨の由来につきまして鑑定を行いました佐倉教授が、平成四年四月二十二日に鑑定結果を記者発表されました会見の際に、確かに個人的には実験材料が不足した場合には材料を入手しやすい場所を探すというのは当然考えられるといったコメントをされておりますことにつきましては、私ども新宿区を通じて報告をいただいているところでございます。
 厚生省といたしましては、土地の管理者としての立場でございますわけですが、平成四年二月の衆議院の厚生委員会におきます御質疑の際に、当時山下厚生大臣からも、私といたしましては、単に十分な調査をしないで、無縁仏として弔うということについては心残りがあります、今局長の方から十分調査をしたと言っておりますが、私の責任においてもう一回やってみたい、こういったような趣旨の御答弁をしていただいたわけでございます。
 私どもはこういう経過も踏まえまして、先ほど申しましたような形で、当時の軍医学校の関係者への事情聴取あるいは文献調査等をその後鋭意進めてまいってきているところでございます。

栗原君子君 何さま数が多いものですからみんな驚いているわけでございまして、頭蓋骨だけでも三十五人分とか、それからいろいろ骨の破片も調査をされましたら百体以上に上るという、それだけのたくさんの人骨が出てきたわけでございます。こういうことになりますと、中国の犠牲者の遺族の人たちから人骨の保存とそれから調査を求められているというようなことも聞くわけでございます。
 軍医学校の防疫研究室は、中国などで生体実験やそれから細菌戦を行った第七三一部隊、石井部隊とよく言われておりますけれども、七三一部隊の中枢であったことが明らかになっているわけでございます。このために、中国の七三一部隊犠牲者遺族の人たちよりその人骨の保存と調査が求められているということも聞くわけでございます。
 厚生省はこのことに対してどのように対応されて、今後どのようになさろうとしていらっしゃるのかお聞かせいただきたいと思います。

政府委員(佐々木典夫君) 中国の旧陸軍第七三一部隊犠牲者の遺族の方から、軍医学校跡地で発見された人骨を究明する会という団体の方を通しまして私どもの方に、人骨の由来の調査をすること、それから二つには、殉職者及びその遺族へ謝罪をすること、それから三つに、遺族への経済的賠償をすることといった趣旨の要望書が届いていることは私どもも承知をいたしてございます。
 先ほども申しましたけれども、厚生省といたしましては、現在、旧陸軍軍医学校関係者や関係の文献に当たって人骨の由来の調査を進めているところでございます。人骨の取り扱いにつきましては先ほど申しましたが、発見当時より引き取り人のないものとしまして墓地埋葬法に基づく手続が進められているところでございますが、ただいま進めております人骨の由来の調査の結果を待って対応をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

栗原君子君 広島県の竹原市の向かいに大久野島という小さい島があるんですけれども、戦争中は地図からもその島は消えていたわけです。何で消えていたかといいますと、御案内のようにそこは毒ガスを製造していたところでございます。実は私は、先般、その島に行ってまいりました。
 そこの毒ガス資料館の館長さんにもいろいろお話を伺いました。現に広島県にもまだたくさんの、毒ガス製造にその当時かかわって被害を受けていらっしゃる方が、今もずっと体の調子が悪くて病院通いをして大変な生活を送っていらっしゃるわけでございます。そこで、その大久野島でつくった毒ガスあるいは細菌、そういったものが中国大陸で使われていたというお話をいろいろ伺ったんです。
 それとあわせまして、今回のこの問題が出てきたときに、実は今、七三一部隊展というのを市民団体の人たちが中心になって展示会といいますか、そういうものをやってずっと全国を回っていらっしゃるわけでございます。
 広島でも五カ所合計画をしていらっしゃるわけでございますが、そこの中にさまざまな情報が寄せられてきていると、このようにおっしゃっておられます。その情報が寄せられたものをずっと書きとめていらっしゃって、それを五十一枚ほどちょっと私ぱらぱらと見せていただいたんですけれども、現に自分はそこの軍医学校に生徒として行っていたと、そういう人たちの生々しい証言があるわけでございます。
 そのときに、石井四郎さんという人が教官で教鞭をとっておられた。そして目の前にはマルタと言われるのをずっと並べていた。マルタと言われるのは、例の、何といいますか大陸から持ってきたものでございますけれども、かめに入れて運んだようでございまして、水がめも幾つもそこにあったりとか、ホルマリン漬けにしたものがあったとか、そういったさまざまな生々しい証言が今七三一部隊展をなさっているところに寄せられてきている、あるいはまた一一〇番に寄せられてきている。
 そういうことと私はあわせてみましたら、戦争中日本の大久野島でつくった毒ガスが中国大陸で使われて、またそこでいろいろ人体実験されたものが標本として日本に送られてきたと思えるわけでございます。中国大陸に当時いらっしゃってお帰りになっておられる方が、木箱にこれは東京行きというものを押して、その中に標本を入れて送ったと、そういうことも証言していらっしゃる方があるわけでございます。
 私は、この問題というのは本当に戦後補償の大きな一つの問題であろうと思うわけでございまして、何としても、やっぱり取り扱いにつきましては厚生省も十分にまた配慮していただき、それからまた、これらが国民に戦争の怖さ、悲惨さ、そういうようなものをもっと私は考えていただくそういった機会になってほしいなと、このように思っているわけでございます。
 厚生省は、これらの人骨を保存し、国際的な見地で戦後責任を果たすために慎重に私は調査を行っていただきたい、このように思うわけでございます。新宿区より人骨を引き取り、焼却とか埋葬することなくこれを保存し、国際的な見地でぜひ私は戦後責任を果たすべく十分な時間をとって慎重な調査をしていただきたい、今後ともこういったことを考えて厚生行政の一つにまたこれもしっかりと生かしていただきたい、こう思うわけでございますが、最後に、先ほどからのやりとりを聞いていただきましての大臣の所見をお伺いさせていただきたいと存じます。

国務大臣(大内啓伍君) 栗原先生の非常に熱心な御研究に対しまして敬意を表します。
 札幌学院大学の佐倉教授のこの鑑定というのはなかなか貴重な鑑定ではないかなと、拝聴しておりましてそう感じた次第でございます。特に、具体的に頭部の損傷であるとか四肢ののこぎりによる切断であるとか、通常の場合ではそういう事態は考えられない事実が事実として鑑定で出てきておるわけでございますし、また先ほどの広島の大久野島等におけるいろいろな状況報告等々も、それは決してつくり話とは聞こえない非常に大事な報告ではないかと思っております。
 したがいまして、先ほど政府委員から答弁をいたしましたように、その事実関係を究明するために今御指摘いただきましたようないろんな報告書あるいはGHQ資料、その他の公文書、あるいは聞き取り調査等々を十分経まして、この事件の明確な解明の上に埋葬という問題を考えるべきことであろうというふうに考えておりますので、これをうやむやにして埋葬を急ぐ、こういうようなことは避けたい、こう思っている次第でございます。

栗原君子君 ありがとうございます。
 ちょっともう一度局長さんにお伺いをさせていただきたいと思うんですけれども、墓地埋葬法に従ってということを御答弁いただきましたんですけれども、死体解剖と考えられる場合、死体解剖保存法では、標本を廃棄するときなどは遺族が判明しない場合は標本の保存者が墓地埋葬法に従って埋火葬すべきということがあるわけでございますけれども、このことについては間違いないのか、もう一度ちょっとそこのところを触れてください。

政府委員(佐々木典夫君) ただいまのお尋ねの死体解剖保存法の場合におきまして、遺族が判明しない場合に保存者が埋葬をするということについてはどうかというお尋ねでございます。
 その点につきましてはそのとおりでございます。今お尋ねのありましたとおりでございまして、もう一度申しますと、死体解剖保存法に基づきます標本を保存する者が当該標本を廃棄する場合は、墓地、埋葬等に関する法律に基づき埋葬あるいは火葬すべきであるというふうなとおりでございます。
 なお、本件の場合につきましては、先ほども申しましたけれども、仮にかつて標本であったことが判明いたしました場合でも標本としての用が廃された状態で発見されておりまして、標本の保存者に当たる者はないというふうに考えておるところでございます。そういうことで、先ほど申しましたような形で手厚く対応することが適当ではないかということを申し上げたところでございます。

栗原君子君 今厚生省の方ではずっと調査をしているということを先ほどからおっしゃっておられましたけれども、この調査というのがいつごろまでかかるものなのか、いつまでもいつまでもずるずるとするわけにはいかないと思うんですけれども、大体のめどというのをお知らせください。

政府委員(佐々木典夫君) どんな調査をやっておるかということにつきましては先ほど来申しましたとおりでございまして、当時の旧陸軍軍医学校関係者への面談調査、御協力をいただくというようなことでお話をいただく、あるいはアンケート調査を実施いたしまして、例えば当時の、平成元年七月時点で人骨が発見されました際の新聞等の報道についてどの程度の情報を得て知っていらっしゃるか、あるいは今回発見された人骨はどのような由来のものであるか、何か知っている情報があるか、どのような経緯の人骨であるか、あるいはどのくらいあったのか等々、ありまする情報についての御提供方をアンケート調査方式で要請をしたというようなこと、さらに文献調査をやっておるわけでございます。
 スタートしましてある程度たつわけでございますが、例えば本年八月ごろには戦時中の関係方面の資料が新たに発見されたといったようなこともありまして、先ほど大臣からも御紹介いただいておりますが、引き続き国立公文書館あるいはGHQ文書等調査を続けているというところでございます。
 いつまでかかるのかというふうなことでございますが、そういうことで今考えられる文献につきましてはなるべく丁寧な対応をしようということで、例えば先ほど申しましたGHQ文献等もアメリカの公文書館から提供を得たものを見ているわけでございますが、英文資料なわけでございますけれども、こういうのを精査してまいりますので、今我々が当たる必要があるものというものについてはできるだけ早く対応したいと思っております。いつごろまでに全部見切ってとなかなか申し上げられないわけでございますけれども、担当課の職員をもってひとつ誠実に調査を急ぎたいというふうに存じます。

栗原君子君
 ありがとうございます。
 先ほど申しましたように、市民団体の方にはもうすごい情報がたくさん私は来ているな、こう思うわけでございまして、ぜひ厚生省の皆さんもそういったところとも連絡をとって確かな情報をしっかりと入手してこの問題に対応していただきますように、最後にお願いを申し上げたいと思います。


第136回国会 厚生委員会 第6号   平成八年三月二十五日(月曜日)午後一時三分開議
質問者 岩佐恵美衆議院議員   回答者 亀田克彦厚生大臣官房総務室審議官 菅直人厚生大臣
岩佐委員 まず、人骨問題について伺いたいと思います。
 今から七年前の一九八九年七月二十二日、新宿区戸山町の国立予防衛生研究所の現在の所在地である旧陸軍軍医学校跡地から、百体を超える人骨が発見されています。この軍医学校の一画には、細菌兵器の研究開発部隊である七一三部隊の司令部ともいうべき防疫研究室がありました。この七三一部隊が戦時中、中国人や朝鮮人、ロシア人の捕虜をマルタと呼んでチフス菌やペスト菌、炭疽などの細菌を使った生体実験をやったことは、これは明らかになりつつある事実であります。この跡地から百を超える人骨が見つかったことから、この人骨が人体実験された外国人捕虜あるいは民間中国人らの遺骨ではないかという疑念が持たれています。
 当委員会でも、九二年二月に、山下徳夫厚生大臣がこの件について調査を約束しておられます。その後、どういう調査になったのか、教えていただきたいと思います。

亀田政府委員 御指摘の、人骨が発見されました旧陸軍軍医学校跡地は、現在、国立予防衛生研究所の敷地となっております。このことから、厚生省といたしましては、人骨が発見された土地の管理者という立場から、人骨の由来につきまして調査を行っておるところでございます。
 調査の内容でございますけれども、旧陸軍軍医学校関係者約三百人に対しまして、郵送によるアンケート調査を行っております。また、そのうち一部の方につきましては、直接訪問をしてお話をお伺いする、あるいは電話によりまして聞き取り調査を行っているところでございます。また、あわせまして、例えば「陸軍軍医学校五十年史」あるいは「大東亜戦争陸軍衛生史」等々の陸軍軍医学校関係の文献調査等も行ってきたところでございます。
 現在、これらの三つの調査、アンケート調査、聞き取り調査、それから文献調査でございますが、これらの調査内容の関連等につきまして引き続き調査をしておるというのが現状でございます。

岩佐委員 大臣に、時間がありませんので、三点について検討をお願いしたいと思います。
 もう七年もたっているわけですけれども、今お話があったように、まだ調査結果がきちんと出ていないわけです。最近まで、予防研究所の歴代所長、副所長の多くが軍医学校や七三一部隊関係者で長年占められてきました。もうそうした関係者は高齢に達しています。ですから、早急に調査をしていく必要があると思います。まず第一点は、専門の調査班を設けて、ぜひ取り組んでいく必要があるというふうに思います。その点について検討をいただきたいと思います。
 それから、新宿区が札幌学院大学の佐倉教授に依頼をした人骨に関する鑑定書が九二年四月二十二日に公表されました。
 内容については十分御承知だと思いますけれども、念のためちょっとかいつまんで申し上げたいと思いますが、「(一)人骨の土中経過年数は数十年から百年以下。(二)固体数は前頭骨だけで六十二体、全体では百体以上。女性は四分の一で未成年者も含む。(三)モンゴロイド系の異質な人種が混在しており、一般日本人集団の無作為標本ではない。(四)切断、刺創、銃創、の痕跡、ドリルによる削孔、鋸断、破切など人為的加工の痕跡あるものを含み四肢骨の多くはいろいろな位置で意味不明の鋸断跡がある。」などが明らかにされています。
 単純な身元不明の行き倒れ人集団ではありません。戦争犠牲者の可能性が高いと言われています。しかも、非戦闘員の女性あるいは未成年者が含まれているわけです。数十年を経過した百体以上の主に外国人の人骨で人為的加工、つまり殺害の痕跡が認められるというふうになれば、真相の究明なしに焼却することは許されないと思います。国としても、鑑定を行うなり、今の区の鑑定結果について検討するなりの必要があるというふうに思います。厚生省として真相を究明し、結論が出るまで人骨をきちんと保管すべきだと思います。この点が第二点です。
 また、新宿区の小野田区長は、北京市東城区との友好交流都市提携の際に、遺骨が中国人被害者のものと判明すれば中国に返還をする、そういう約束をしておられます。中国の敬蘭芝という方は、日本政府に対して、遺骨の中に夫のものがあるかもしれないという申し立てを行っております。敬さんの申し立てにこたえるためにも、少なくともDNA鑑定などが必要であるというふうに思います。
 以上、三点について大臣のお考えを伺いたいと思います。

亀田政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいま鋭意調査をしておりまして、できるだけ早くとりあえずのまとめをいたしたい、こう考えておるところでございます。

岩佐委員 大臣九二年二月に、大臣は調査をいたしますということで答弁をされて、もう九六年ですから四年になるわけですね。鋭意調査をしておりましてという段階ではないと思います。
 それで、毎年毎年、新宿区はこの骨についてもう焼却をするという予算を計上しているわけです。この問題がうやむやにされるということは私は許されないというふうに思います。戦後処理の点についても、外国人の、日本人でない、そういう骨の疑い、可能性が非常に強いという場合には外交問題にもなるというふうに思うのです。
 そういう点で、政府として積極的にこの問題に取り組んでいかなければいけない、事務方に任せているだけでは済まない、そういうふうに思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

菅国務大臣 この問題、以前から時折耳にはしておりましたが、きょうの質疑でこういう形で御質問があるというのは、私も十分承知をしておりませんで、必ずしも細かい状況を私自身はまだ把握をいたしておりません。
 ただ、今の質疑を聞かせていただいておりまして、従来、以前の大臣が国会に対して調査のお約束をしておられるわけでありますので、当然、その調査をきちんとした上で、報告できるところまで来ましたら報告しなければいけない。私も、もうちょっと状況を把握した上で、そうした方向についてどのようにできるか検討させてみたい、こう考えております。

岩佐委員 それでは、大臣、非常にみんなが心配しているのは、うやむやのうちに焼却をしてしまうということがないようにという心配を非常にしているわけですね。そういうことだけは、その焼却という結論だけは急がない、こういう約束はされますか。その点、いかがですか。

亀田政府委員
 例えば、建築工事現場等から遺骨等が発見されまして引き取り者が判明しない、こういう人骨につきましては発見地の市町村において埋火葬を行う、こういうことになっておるところでございますが、本件につきましては、先ほど申し上げましたように、大変難しい調査でございますけれども、人骨の由来につきまして現在調査を進めておるところでございます。
 したがいまして、この調査の結果でございますとか、あるいは新宿区に対しまして現在裁判が起こされておりまして、最高裁で審理が行われております。そういう結果等を見ながら、大臣とよく相談をしながら対応を検討していきたい、こういうふうに考えております。


第147回国会 厚生委員会 第3号  平成十二年三月十四日(火曜日)午後二時三十一分開議
質問者 金田誠一衆議院議員   回答者 額賀福志郎内閣官房副長官 丹羽雄哉厚生大臣
金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。
 額賀副長官には、御出席をいただきまして大変ありがとうございます。
 質問の一点目は、新宿の旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨問題についてでございます。
 経緯を申し上げますと、一九八九年、平成元年の七月二十二日、厚生省戸山研究庁舎の建設現場、国立栄養研究所跡地でございますが、ここから百体以上に上ると推定される人骨が発見されました。現在、人骨は新宿区において保管中ということでございます。
 人骨が発見された土地は旧陸軍軍医学校の跡地であり、そこには戦前、石井四郎軍医によって防疫研究室が開設されておりました。さらに、防疫の実地応用のためとして、満州防疫機関が出先として設立をされたわけでございますが、これが関東軍防疫給水部、いわゆる七三一部隊であったわけでございます。
 このような背景から、人骨はその発見当初から七三一部隊との関連が指摘され、厚生省は土地の管理者としての立場から、あくまでも土地の管理者ということでございますけれども、その立場からその由来について調査することとなり、今日に至っているわけでございます。
 そこで、まず官房副長官にお伺いをいたしますが、このような人骨であるならば、土地の管理者としての立場ではなくて、戦後処理という観点から内閣の責任において調査を行うべきと考えるわけでございますが、いかがでしょうか。

額賀内閣官房副長官 金田誠一先生の御質問にお答えをしたいと思いますが、先生が御指摘のとおり、戸山庁舎から大量に発見されました人骨につきましては、その土地が旧陸軍軍医学校であったことから、御指摘のように七三一部隊との関連づけで国会でも議論があったことはよく承知をいたしております。
 このため、厚生省におきまして、土地の管理者の立場から、人骨の由来、経緯について、当時の教官や学生等から種々意見を聞いたり、あるいは聴取をしたりして調査を行ってきたということも聞いておりますし、御承知のとおりであります。
 政府といたしましては、厚生省の調査結果が明らかになった段階で、人骨を管理している新宿区が依頼している専門家の鑑定結果なども踏まえまして、種々の観点から対応を検討しているというふうに考えていただきたいと思っております。
 現時点におきまして、いわゆる七三一部隊との関係について、具体的な関連づけを証明する資料は政府部内で発見されておりませんし、また持っておりません。したがって、政府といたしましては、事実関係が明らかになった段階でこれは考えるべきものと思っております。新しい事実関係が生まれれば、厳粛な気持ちで対応させていただきたいというふうに思っております。

金田(誠)委員 新たな事実関係が実は既に明らかになっているわけでございまして、その辺のところを副長官は十分御承知おきでないのかなと思うわけでございます。
 先般、厚生省から、二月の二十五日付でございますが、「人骨の由来に係る調査の概要」という資料をいただきました。これはお持ちだと思いますが、いかがでしょうか。その中に、旧陸軍軍医学校関係者二百九十三名に対し郵送で調査をしたと。回答があったのが百四十四名、何も知らなかった者が百二十一名、具体的記載のあった者が二十三名ということですから、この二十三名の方の回答が非常に重要な意味を持つと思うわけでございます。
 その中で、「戦場に遺棄されている多数の戦死体の中から、主として頭部戦傷例を選別し標本として、持ち帰ったものと聞いている。」というのが五通ございます。あるいは、「軍陣病理学教官より「研究には戦死体が必要であるが、その入手は甚だ困難である。諸官は、これより戦場に赴くが、機会をとらえて戦死体を軍医学校に送ってもらいたい。」と卒業があるごとに頼んでいたので送った者もあったかも知れません。」というのが一通でございます。
 こういう当時の関係者、恐らく教官か卒業生だと思うわけでございますが、このような極めて重大な証言がある。もちろん七三一部隊と直接関係があるという証言にはなっておりません。しかし、遺棄されている戦死体の中から持ち帰ったという証言は極めて重大でございまして、この二月段階で初めて明らかになった、それ以前は明らかになっておらなかった、私はこう思うわけでございます。これは戦時国際法にも違反することでございます。そして、この遺棄された戦死体なるものが、七三一部隊との関係がないという証言は何もないわけでございます。あるかもしれない。仮になくても極めて重要な問題だ。
 したがって、土地の管理者という立場ではなくて、戦後処理という観点から処理する段階に来た、調査する段階に来たということを問いただしているわけでございます。改めて御回答をお願いします。

額賀内閣官房副長官 先生が御指摘のとおり、二百九十三名に対しまして郵送をし、その中から具体的に二十三名の者から回答があったということは、御指摘のとおりなのであります。そしてまた、今おっしゃられたことも先生の言うとおりであるというふうに理解をいたしております。
 しかしながら、七三一部隊との関連づけの中でこの回答がなされたというふうには聞いておりませんし、また、我々が防衛庁の防衛研究所あるいは国会図書館等におけるさまざまな資料を検討した結果においても、七三一部隊との関係を直接裏づけるものはありません。
 したがって、私どもがこの調査について断念をしたということでもないわけでございますけれども、引き続いて調査をしていく過程で新しい事実関係が生まれれば、これはきちっと対応していくものであるというふうに考えております。

金田(誠)委員 戦場に遺棄されている多数の戦死体の中から持ち帰ったと。七三一部隊ではないかもしれないし、あるかもしれない。しかし、いずれにしても、戦場に遺棄された死体を持ち帰ったということは戦時国際法に違反をする行為であって、戦後処理という観点から当然解明されてしかるべきだということを私は申し上げているわけで、その点どうでしょうか。

額賀内閣官房副長官 この文書を全部詳細にまだ読んではいないんですけれども、この統計をまとめた中で、「戦場に遺棄されている多数の戦死体の中から、主として頭部戦傷例を選別し標本として、持ち帰ったものと聞いている。」というふうにありますから、直接この方もそれを見ているわけではないというふうに承知をしておりまして、事実関係が、いかようにこれがなされてきたのかという経緯について判断をしかねる場面があるわけでございます。
 したがって、確かに七三一部隊とは関係がないということを断言しているわけでもないし、また関係があるとも断言をしているわけではありませんから、私どもは、これについて、きっぱりともうこれ以上調査をしませんというふうに言っているわけではないのであります。

金田(誠)委員 もはやその調査が土地の管理者という非常に限定された立場からの調査であってはならないということを申し上げているわけです。
 戦地から持って帰ってきたということは、かなり確実な状況ではないでしょうか。御自身が持ってきたという方がもしおられたとしても、その方が果たして証言していただけるかというと、極めて困難な状態になるのではないでしょうか。あるいは、五十年という歳月の流れを考えれば、その方が直接証言される可能性は極めて少ないかもしれない。この軍医学校に関係していた恐らく卒業生の方が証言をされたというのは、これ以上の証言というのはあり得るんでしょうか。かなり確度の高い証言として受けとめて、土地の管理者という立場ではなくて、戦後処理という観点からの調査に切りかえるべきだということを私は申し上げているわけです。
 内閣として検討対象になりませんか。今、恐らく副長官は官房長官なり総理なりとも話を詰めてここに来ておられるわけではないと推測するわけですが、そうした立場で持ち帰っていただいて、総理、官房長官、あるいは厚生大臣、こういう中で戦後処理という観点から調査に踏み出す状況になったという御判断をいただけるかどうか、検討していただけませんでしょうか。

額賀内閣官房副長官 先生の御指摘についてのことでございますけれども、例えばこのアンケートの中で、戦場からそういう遺棄死体を標本として持ってきたのではないかという証言があるということについては重く受けとめる必要があるのではないかと思います。しかし、事実関係についてきちっと我々が確認しているわけではないのでありますから、そこのところは、今後我々がどういうふうに対応していくかについて、十分先生の御指摘を踏まえて検討させていただきたいというふうに思います。

金田(誠)委員 検討していただけるというふうに受けとめさせていただきます。それでよろしいですね。ぜひ戦後処理という観点から検討をいただくようによろしくお願いをしたいと思います。
 次の質問に移ります。厚生大臣、今日までの調査結果についてお聞きをしたいと思います。
 歴代厚生大臣、九二年には山下徳夫大臣、九三年に大内啓伍大臣、九六年には私どもの菅直人大臣ということで、歴代大臣が調査を約束して今日に至っております。
 そこで、事の重大性からして、調査はずさんなものであってはならないと思うわけでございます。聞き及ぶところでは、どうも、担当者の方はほかに仕事をお持ちで、いわば仕事の合間にという状況のようでございます。調査委員会などもなければ専門の事務局もないし、予算もないという状態と聞き及んでおります。どのような体制かということでお聞きをしようと思いましたが、何も体制はできていないということのようでございます。
 そこで、大臣、今検討されるということで副長官はお答えいただきましたけれども、今まで土地の管理者として調査をしてきたお立場から、この戦死体の中から持ち帰ったという状況を受けて、内閣として戦後処理という観点から調査を行うように総理、官房長官に進言をしていただく、厚生省、厚生大臣としてはそうすべきだということで進言をしていただけないか。通告書に書いてございませんでしたが、大臣、いかがでしょうか。

丹羽国務大臣 これまで、厚生省といたしましては、一応の調査結果の取りまとめをしつつあるわけでございます。真相を究明すべきという主張をなさる市民団体の方々にも情報の提供をお願いいたしておりますが、現実問題として、四年近く新たな情報は得られておらない状況でございます。いずれにいたしましても、速やかにこれまでの調査結果を公表できるように取りまとめ作業を急がせたいと考えております。
 公表時期につきましては、聞き取り調査に協力していただいた当時の関係者に、報告書の内容の御確認をいただく必要があると考えておりまして、ある程度の時間をいただきたいと思っております。

金田(誠)委員 厚生大臣、副長官が内閣としても検討する、戦後処理の観点から調査をするかどうか検討するという御答弁でございましたが、厚生大臣としても、検討すべきだという進言をするという御答弁をいただけませんでしょうか。それが一つ。
 あわせて伺いますけれども、ぜひ資料を提出していただきたいと思います。
 調査の計画書なりに基づいて調査がされたものと推測をするわけですが、調査の計画書なりこれに類するものがあれば御提出をいただきたい。それから、収集した資料の目録をできるだけ正確にお出しいただきたい。それから、九三年十一月十一日の参議院厚生委員会での答弁を見ますと、GHQの資料についても調査をするということでございました。このGHQ資料、翻訳されていればその翻訳されたものをお出しいただきたいなと思います。四つ目、関係者の聞き取り調査とアンケートということで実施をしておりますから、その内容といいますか、調査票、回答書というのですか、それは固有名詞などは出せないと思いますが、その他の部分をお出しいただきたい。
 以上四点でございますが、この資料をお出しいただけるかどうかでございます。

丹羽国務大臣 厚生省といたしましては、土地の管理者としての立場から人骨の由来調査を行ったものでございます。戦後処理の観点から調査を行う立場にはないと考えておりますが、議員からの強い御指摘がございますし、政府全体として考えていただければ幸いだと思っております。
 それから、数々の調査資料につきましては、早速内部で検討させていただきます。

金田(誠)委員 大臣、ぜひ閣僚の一人として、内閣の一員として、これは国際的にも日本が責任を負うべきものだと私は思います。その点では同意いただけると思いますので、もはや土地の管理者などでやっているものではないという観点から、今まで調査をしてきたお立場から、内閣としての調査ということでぜひ進言をしていただきたいと思います。資料については、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 時間が大分過ぎてしまいましたが、途中をはしょりまして、最後に一点。今新宿区で保管されている人骨でございますが、これを調査が終了するまで、遺骨として丁重に内閣の責任で保存をすべきではないか、保管をすべきではないかと思うわけでございます。新宿区さんも大変御苦労されているようでございますけれども、これはそこで出土したのだからという墓埋法云々の話ではない。戦地から持ち帰ったということが証言として出ているわけでございますから、遺骨の保管についても政府の手に移すという形で御検討をいただけないか。大臣と副長官、それぞれお願いします。

丹羽国務大臣 厚生省といたしましては、先ほども申し上げたわけでございますが、土地の管理者の立場で由来調査を行ってきたところでございます。したがいまして、墓地、埋葬等に関する法律に基づきまして人骨を既に新宿区に引き渡しました時点で法律上の義務を果たしていると考えておりますが、御指摘の趣旨を踏まえまして、関係省庁とも対応を検討の上、新宿区と相談してまいりたい、そう考えております。

額賀内閣官房副長官 現在、今厚生大臣からお話がありましたように、人骨は、墓地、埋葬等に関する法律に基づいて新宿区において保管をされているわけであります。厚生省の調査で、公表に向けて手続を始めたというふうに聞いておりますので、政府としても、厚生省の対応を見ながら検討してまいりたいというふうに思っております。

金田(誠)委員 墓埋法の機械的な適用などということは、間違っても考えないでいただきたい。歴史的な、国際的な責務を日本政府は負っているという立場でぜひお考えをいただきたい、強く要請をしておきたいと思います。
 実は委員長、この人骨の現物を私は見たいと思いまして、新宿区さんに電話で要請をいたしました。どなたにも見せておらないということで丁重に断られたわけでございますけれども、国政上極めて重要な問題だと思っております。国政調査権ということもあるらしいのですが、そうしたものも含めまして、何とかこの委員会あるいはそのメンバーである私という形で現物を拝見できるように、その重さというものを、事の重大さというものを直接体験することによって受けとめさせていただくというふうに思っているものですから、しかるべく手続をとるようにお願い申し上げたいと思うのですが。

安倍(晋)委員長代理 後ほど理事会で協議をしていただきたいと思います。

金田(誠)委員 ありがとうございます。
 それではもう一点、人骨発見地の隣接地における新たな人骨問題ということでお尋ねをしたいと思います。
 この人骨が発見されたところに隣接する用地が今多目的運動広場の建設予定地ということになっておるわけでございますが、これに対して、人骨問題を調査していた市民団体から、陸軍軍医学校の元看護婦であった女性の証言ということで、こういう証言があったそうでございます。事務の男性幹部から、敗戦直後、防疫研究室の空き地に穴を掘って標本などを処分した、進駐軍が来て掘り返されると困るので、埋めた場所に病院の官舎を建てて住んでいるという話を聞いたと。こういう証言をもとに、新宿区議会に調査を要望する陳情が一九九八年に提出されております。
 そこで、質問項目をいろいろ用意したのですが、最後に一点だけにしまして、官房副長官、この問題もまた戦後処理の問題であろうと思います。内閣として、前段申し上げた人骨問題とあわせて検討して、しかるべく所管を決めて調査をしていただきたい、前段の人骨問題と一緒に検討していただきたい。こう御要請申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

額賀内閣官房副長官 私が最初の人骨問題について検討をしたいと申し上げましたのは、先生が御指摘のとおり、戦場に遺棄されている多数の戦死体の中から、主として頭部戦傷例を選別、標本として持ち帰ったものと聞いているという、言ってみれば回答もあったわけでありますから、それは重く受けとめて、事実関係があったのかどうかということを調べていく必要があるという意味で申し上げたつもりでございます。
 そしてまた、今の御指摘で、多目的運動広場を建設する地域の調査をしたらどうかという御指摘につきましては、既に発見された人骨について厚生省がさまざまな視点から調査検討をしてきておりますので、私どもは、その結果が近く公表されるというふうにも聞いておりますので、その事実関係を見た上で考えるべきものであるというふうに思っております。

金田(誠)委員 現在の百体以上に及ぶと言われる人骨、この問題を解明する上でも、その隣接地に埋めた、その上に官舎を建てて住んでいるという証言は極めて重大な証言だと私は思います。そちらもあわせて調査することによって、現在新宿区に保管されている人骨の調査もより進むことになる。一体のものとして調査することが有効だと思います。今即答はなかなか難しいようでございますけれども、今後また機会を改めて質問もさせていただきたいと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。


     

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