国会質問と答弁(その1)

第120回国会 法務委員会 第5号   平成三(1991)年三月八日(金曜日)午前十時開議
質問者 鈴木喜久子衆議院議員   回答者 井口憲一警察庁刑事局鑑識課長

鈴木(喜)委員 これは科捜研の方にお聞きしたいことなんですが、新宿区の元陸軍軍医学校があったところで、そこのところに現在国立予防衛生研究所というものを建設しようとして工事を始めたところが、そこから人骨約三十五体分ぐらいのものが出てきたという事件が、平成元年の七月に起こりました。このことに関して、この遺体といいますか、人骨をどのような形で処理するかということで、もう大分たちました、平成元年ですから二年ぐらいたつわけですけれども、その間に、この人骨が果たして犯罪に関係あるかどうかという意味を含めてでしょうか、出てきてからすぐに、警察署の方でまず現場写真を撮ったりして、人骨をいろいろと検査されたということなんですが、この点については、現在どの程度のことが科捜研の方で判明しているのでしょうか、教えていただきたいと思います。

井口説明員 お答え申し上げます。
 本件につきましては、警視庁牛込警察署に、平成元年七月二十二日に通報がございました。現場におきまして調査を行いました牛込警察署は、当初、頭蓋骨を含めました人骨と思われるものが発見されたわけでございますが、これを、科捜研と今先生おっしゃいましたが、警視庁の科学捜査研究所のことでございますが、ここに調査を依頼いたしました。これを受けました科学捜査研究所におきましては、運ばれました頭蓋骨五個それから人骨の、完全ではございませんで、断片でございますが、頭蓋骨以外の骨二個について調査を行ったわけでございます。
 この調査結果によりますと、頭蓋骨五個分のうち二個は男性のもの、一個は女性のもの、この女性のものにつきましては二十歳ぐらいというふうに年齢が推定されております。残り二個については、性別、年齢ともに推定ができなかったということでございます。また、頭蓋骨以外の骨の断片二個につきましては、これがそれぞれ、左大腿骨それから左脛骨であろうという推定がなされただけでございまして、それ以外の点については不可能でございました。
 また、全体といいますか、すべてのものにつきまして、外観検査は当然のことでございますが、紫外線照射検査と申しまして、紫外線を当てまして、これは目的は古さを調べるものでございますが、この検査によりまして、この骨は非常に古いということなのでございますが、その古さが少なくとも二十年以上経過しているという結果が得られたわけでございます。
 現在のところ判明いたしておりますのは、以上のことでございます。

鈴木(喜)委員 今わかったことの中に、性別はわかったのとわからないのとあるのでしょうが、まあわかったと。それから推定年齢のわかったものもあるということですね。それからもう一つの、紫外線照射検査ですか、その検査の中で、埋蔵されてから少なくとも二十年はたっているということがわかったというようなお話でしたけれども、これは人種はわからないのですか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 人種というその考え方でございますが、例えばで申し上げますと、形態人類学と申しますか、そういう立場からは、日本人と西欧に住んでいる西ヨーロッパ人との比較をいたしますと、一般的には頭蓋骨の形状その他からある程度の推定は可能というふうに学会でも言われているようでございますが、それ以上の細かい人種の分類ということは、骨からは不可能というふうに理解いたしております。これも、もちろん骨が壊れていないといいますか、完全な状態に近いという前提でございまして、その場合でそういうある程度の推定が可能、いわゆる大きい人類の分類と申しますか、大分類の推定は可能かというふうに理解いたしております。

鈴木(喜)委員 分類が可能であるとすれば、これは一緒に、現在この事件に関して、この人骨、頭蓋骨について、大分類で結構でございます、例えばモンゴルとかアジア系の方とか、またはヨーロッパの方だとか、そういった大きな分類でも結構でございますけれども、その検査の結果はいかがでしたでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 今回の科学捜査研究所の調査は、その目的と申しますか、警察といたしまして犯罪に関係がありやなしやという観点から調査いたしたものでございますので、そのいわゆる人類学的な観点からの調査はいたしておりません。

鈴木(喜)委員 犯罪に関係があるかどうかということでいうなれば、性別にしろ推定年齢にしろ、直接的な関係はないと思うのですよ。あるとすれば、二十年たってしまって時効の問題が成立しているのでもうこれ以上ないということであるならば、その点があるとしても、人種の問題というのは、どこでどのような犯罪が行われたか、属地主義なのか属人主義なのか、被害者がどういう方なのかということも、一つの犯罪の問題の中ではかなりかかわりのある問題になると思うのです、もし犯罪であれば。
 だから、そういう意味ではそこを調べないでおくということは非常におかしいと思うのですけれども、ここだけ抜けている。
 大体、私たちが、骨が出てきて、一体どうかということを見れば、人の骨なのかそうでない何かほかの動物の骨なのかという区別から始まって、人種というのは頭の中にすぐくると思うのです。人種がきて性別がきて年齢がきて、まあ血液型まではちょっと骨からはどうかなとは思いますが、そういうことが頭にきます。そういった年齢とかそういうものの中に絶対出てくる一つの要件だと思うのですよ。それを抜かして、そしてあえて検査されるということがあるのかなということがまず疑問なんですが、その点いかがでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 ただいま大変言葉足らずのお答えでございました。
 調査をいたしておりませんと申し上げましたが、現状では、実際に発見された頭蓋骨が非常に古いという状況のもとで、例えば完全に形をとどめているものがないというような状況でございます。そのような状況のもとで、先ほど申しましたように人種の大分類が可能と申しますのは、これはあくまで頭蓋骨の形状だけではなく、例えば鼻孔と申しますか鼻の穴の大きさ、あるいは顴骨、頬骨、これらをいろいろ厳密に測定しなければいけないわけでございますが、それが可能な状態ではなかったというふうに理解いたしております。

鈴木(喜)委員 可能でなかったということと、しなかったということでは随分な違いがあると思うので、その点は、言葉足らずとか説明足らずの問題ではなくて、実際に人種というものについて調べたけれども調べようがなかった、技術的に不可能であったとおっしゃるんならば、もしもっと技術が進んでできるようなことがあればするということが可能なわけですよ。それと、これは全く関係がないからしなかったという御説明は何となくわからないのですが、ここで今私が確認をしますと、人種ということについては、調べようと思ったけれどもまだ資料不足で、または資料が古くて調べられなかったというふうにお答えをいただいておきます。今そうおっしゃったと思います。間違っていたら後で言ってください。
 時間がないので、この問題についてはまた折に触れてやらなければならないと思っておりますけれども、人骨がたくさん出てきた、少なくとも二十年、もっとたっているであろうというけれども、これが何百年も昔のものであることもないし、百年はたっていないんでしょうか、その幅ですね。例えば二十年から五十年ぐらいの幅とか、そのあたりのことは調べておられるのでしょうか、どうでしょうか。一言で結構です。

井口説明員 先ほど申しましたように、犯罪に関係があるかどうかという観点からというものでございますから、それが百年前のものかあるいは二百年前のものかという点での調査は、いたしておりません。

鈴木(喜)委員 時間が来ましたのでここまでになりますが、要するに人道上の問題です。これはほかの方から見て百年も前のものではない。四十年、五十年前ということぐらいまでしかない。もっと幅が短いかもしれません。そうすると、その間にあったら、この骨は、どこの国であれ、その故国で眠ることが必要なものでございますから、これをきちんと眠らせるということは、人道上もそして国際法上の問題からいっても、そこまで調べる必要があると思うのです。
 これから先、また機会がありましたら何回でもいろいろと教えていただきたいと思います。



第120回国会 法務委員会 第6号   平成三(1991)年三月十二日(火曜日)午前九時三十二分開
質問者 鈴木喜久子衆議院議員   回答者 井口憲一警察庁刑事局鑑識課長

鈴木(喜)委員 では次に、前回もちょっと取り上げたのですけれども、新宿区において元の陸軍軍医学校の跡地、現在そこに国立予防衛生研究所を建設中でございますけれども、その建設現場から三十五体にも上る人骨が掘り出されたという事件についてお伺いをしたいと思います。
 科学捜査研究所の方でいろいろとお調べになったということで、前回伺ったのですが、この事件が新宿区の牛込警察署にまず通報されたときに、牛込警察署の方ではどのような手続といいますか、捜査方法をとられたのか、まずそこから伺いたいと思います。

井口説明員 お答え申し上げます。
 本件の通報を受けました警視庁牛込警察署は、平成元年七月二十二日に通報を受けたわけでございますけれども、直ちに現場に臨場いたしまして、いわゆる現場の状況につきまして調査をいたした次第でございます。この工事現場の工事関係者からの事情聴取並びに人骨様のものにつきまして発掘と申しますか、収集を行い、この骨につきまして警視庁科学捜査研究所におきまして鑑定をいたした次第でございます。

鈴木(喜)委員 犯罪捜査の過程でございますから、まず現場写真をお撮りになったことだと思います。それから実況見分調書も多分つくられていると思うのですが、その点はいかがでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 先ほど申しました通報のありました平成元年七月二十二日に、牛込警察署員が現場で写真を撮影いたしております。また、現場の状況につきましては、報告書にまとめてございます。
 以上でございます。

鈴木(喜)委員 それからもう二年ぐらいたつわけなんですけれども、これがなかなか外にあらわれない。もちろん捜査の過程で収集したものだから公開をすることは原則的にできないことはよくわかっておりますけれども、他に見るべきものがない場合、しかも、これは犯罪に関係ないという御判断があった場合、写真なり実況見分の報告書というものを私どもの方に見せていただくというわけにいかないのでしょうか。

井口説明員 警察といたしましては、捜査の過程で収集いたしました資料につきましては公表いたしておりません。

鈴木(喜)委員 これは本当にどうなっているのか。三十五体ものたくさんの、言うなればばらばら死体です。ばらばらの死体。しかも一つではなく三十五体もあるという異常な、人骨が正規に埋葬されずに、しかも、もともとが陸軍軍医学校の跡地にあったという、そういう状況があれば、一体これはどういうことなのかというさまざまな憶測を呼びます。幾ら犯罪に関係がないと言われても、それはどういう状況かというと、骨がもう古くなって、二十年以上たっているので、これから先公判維持は関係がないということにもしもこれをおとりになってしまうとするならば、住民たちの疑惑はいつまでたっても消えることなく残ってしまいます。むしろ中身を公開していただいて、きっちりと、これはこれこれこういうわけで犯罪とは関係がないものだ、または全くわからないものだということがわかるような形で公開していただきたいものだと思います。
 今はそれができないということであれば、伺っていくよりしようがないと思うのですが、最初、建設現場の作業員が掘ったらば骨がたくさん出てきた。写真はその状況のままで撮られたのですか。また調書も、骨がばらばらな形というか、発掘を一遍した、そのままの状況ということでその現状を報告されているのでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 写真に写っている中身の具体的な詳細については控えさせていただきます。その報告書でございますが、現場の状況につき客観的に報告しているという内容でございます。

鈴木(喜)委員 この骨をすべて拾い出して収集をされたのは警察でございますね。それで、その中から一応の鑑定に回すということで数体の部分を鑑定に回されたと聞いておりますけれども、どういう基準でその骨を選ばれたりしたのでしょうか。

井口説明員 まず一般に、白骨といいますか骨からいろいろなことを鑑定と申しますか、いろいろ情報を得るというためには、骨の保存状態がいいといいますか、そういうことが理想的なわけでございます。今回発見されました人骨は、大変入りまじった状態といいますか、しかも消失している部分もかなり多くあるというふうに思われましたので、したがいまして、発見されたときの状況から比較的原形をとどめた骨を抽出した、こういうふうに報告を受けております。

鈴木(喜)委員 それが大体五体分くらいあったということなんでしょうけれども、その余の骨については、原形をとどめていないというか、保存が悪いという御判断のもとに何も手をつけておられずに、だれが保管しているのでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 これは、鑑定を行いました後に、七月二十七日に鑑定をすべて終わっておりますから、一部は二十五日に、それからほかのものにつきましても二十七日に、新宿区の方に引き渡ししてございます。

鈴木(喜)委員 この鑑定をするときにどのような方法でやられたかということなんですけれども、外観から見たということのほかにやられたことは、紫外線照射検査ですか、それによってなされたという、その二通りでなされたのですか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 まず、今回の鑑定を具体的に若干申し述べさしていただきますが、まず人骨か否かについて調査をいたしたわけでございます。人骨か否かという検査につきましては、形態学的検査を行いまして、頭蓋骨及び骨片から人の骨である、こういうふうに推定いたしました。
 また、性別の推定につきましては、頭蓋骨について、みけんと申しますか、あるいは眉弓、まゆの上の部分のところ、こういったいろいろな特徴点がございます。これも形態学的に検査をいたしまして、五個の頭蓋骨のうち二個は男性、一個は女性のものと推定いたしました。残りの二個につきましては、今申し上げました特徴点というのが非常に欠損いたしておりまして、性別の推定はできませんでした。大腿骨及び脛骨につきましては、骨の長さなどをはかって調べる、いわゆる人類学的と申しますか計測方法によりまして、大腿骨並びに脛骨いずれも男性のものと推定いたしました。
 年齢の推定につきましては、頭蓋骨のうち女性と推定された方の頭蓋骨、これにつきましては、頭蓋縫合と申しますか、いわゆる頭蓋骨の真ん中を前後に走っている縫い目と申しますか、これの癒着が年齢によって違いますので、この消失の度合いによって年齢の高い低いというものを推定いたしております。したがいまして、本件につきましては、これの癒着による消失の状況からおおむね二十歳代の骨であろうかというふうに推定いたします。残り四個の頭蓋骨につきましては、成人に達しているということは推定されますが、何歳かということは推定は不可能でございました。大腿骨及び脛骨につきましては、骨の両端が完全にくっついておりましたものですから、成人に達していることは推定されましたが、それ以上の詳細な年齢は推定不可能でございました。
 死後経過時間につきましては、これは先ほど紫外線照射と先生おっしゃいましたけれども、まず骨の色調、色合いの観察、それから骨の表面のいわゆる脂肪分の状況、こういったものを調べる、私ども、外観検査と申しますか、そういった検査を行いました。さらに加えまして、紫外線を骨の断面部に当てまして、これによる螢光の発生の度合いを調べる、いわゆる紫外線照射検査をあわせて行いました。これらのもろもろの検査の結果、五個の頭蓋骨と骨片はいずれも死後少なくとも二十年以上経過しているもの、こういうふうに推定されたわけでございます。

鈴木(喜)委員 少なくとも死後二十年以上経過しているという点がわかったということですけれども、じゃ今度は、長くともどのくらいは経過していないといいますか、要するに二十年から五十年の間であるとか百年の間であるとか、そういう方はわかるのでしょうか。

井口説明員 お答えいたします。
 少なくとも二十年以上経過しているということ以外には推定されることはありません。

鈴木(喜)委員 これも不思議な気がします。これが何百年もたっているものであれば、当然今度は文化財の問題でありますとか遺跡の問題でありますとか、そういう問題が生ずるわけでございますから、どのくらいまでたっているかということが大ざっぱな関係でもわからなければいけないと思うのですが、その点も何もお調べになっていないということですから、これについても鑑定の結果報告書というものが存在しているわけでございますから、私それを見せていただければ一番いいことだと思うのです。それも公開というか公表されないのでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 捜査の過程で収集いたしたものについては、公表を控えさせていただきます。

鈴木(喜)委員 ここらあたりが私の一番何とも腹立たしいところでございますけれども、今すぐにここで公開されないということであれば、お聞きする以外ないので聞いていきます。
 実はこのことに関しまして、この鑑定書の依頼の項目なんですけれども、その中には人種というのが抜けております。前回お聞きしたときに、人種の場合、それは調べなかったのではなく、調べようとしたのだけれども調べることが不可能であったのだというようなことを、初めはそうじゃない、人種は調べてなかったとおっしゃったのを訂正されて、そして、調べたけれども調べようがなかったというか、わからなかったのだというお答えをいただいたのですが、実はその鑑定書というものの中の調査依頼の項目の中に、そもそも人種ということは入っていなかったのではないでしょうか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 鑑定の依頼の内容の具体的な詳細につきましては、要するに捜査上必要なことについての鑑定ということでございます。

鈴木(喜)委員 それではお答えになっていないと思うのです。
 今聞きましたのは、それは捜査上必要がないというふうに人種の問題について判断されたから、人種については調査を依頼しなかったということなんでしょうか、それともしたということなんでしょうか。非常にあいまいだと思いますけれども、ここにまた国民の疑惑が生ずるわけでございますから、明確にお答えをいただきたいと思います。

井口説明員 お答え申し上げます。
 人種という具体的な項目での依頼はなかったというふうに理解いたしております。

鈴木(喜)委員 前回も申し上げましたけれども、人種ということが犯罪の捜査の中に必要がないかどうかということになりますと、これは重大な問題だと思います。警察で調べるときに、やはりこの被害者が何人(なにじん)であったのかということ、または少なくともどういった系統の人であったのかということを調べないという方がおかしいと思うのです。まず、鑑定の依頼書の中から、性別や推定年齢や、また死後の経過年数というものを調べると同時に、人種と出てくるのが当然のことだと思うのですけれども、それをあえて除外したということは、犯罪に関係ないから除外したということでは説明にならないと思うのです。そのことは、犯罪捜査の中、またはそういうことに人種というものが全くかかわりがないということが言えますか。やはり属地主義、属人主義の問題もございます。ですから、そういうことについては調べるのが当然なのに抜かしているということであれば、そこに何らかの警察の意図が働いていたのではないかというふうに思われても仕方がないと思いますけれども、いかがでしょうか。

井口説明員 お答えいたします。御指摘のような意図はございません。

鈴木(喜)委員 意図はございませんということで信じられるものならこんなところでこういうふうに申し上げて聞くこともないのですけれども、ここについてはもう少し明快なお答えをいただきたいと思います。意図はないからといっても、ではなぜ人種を除いたんですか。その点についてお答えいただきませんと何とも言いようがないのです。そこのところでもう一度お答えください。

井口説明員 先生、人種について除外したのではないか、こういう御指摘でございますが、人種について除外したということではございませんで、本件人骨からわかる範囲のことすべてについて慎重に鑑定をする、こういう内容の依頼でございました。

鈴木(喜)委員 またお答えが二転三転と、よくわからないのです。今のでいきますと、人種について除外したわけではないというお答えに今度は変わっているのですね。さっきは人種はやらなかったと。一体どっちなのか、どうしてそう明確に答えが出てこないのか、ますます疑問が深まってしまうのですけれども、この点いかがですか。

井口説明員 お答え申し上げます。
 人種についてという具体的な項目はなかったと先ほど申し上げましたが、これは人種を除外したということではございませんで、現在の警察の、科学捜査研究所の能力の範囲内でできる限りの鑑定をする、こういう依頼でございました。

鈴木(喜)委員 その鑑定の依頼書の中に、具体的に人種という言葉がなかったことは明確にわかりました。そして、それは何でもできる限り調べるというようなこともあったのだと口頭で言われましても、一体どうなのか、これはまだまだわからず、これからも究明していかなければならないことだと思います。
 ですから、そのことについて結果を見ましても、鑑定書の中に一言も、人種についてはこのような鑑定が不可能であった、これこれの理由で、例えばもはや古いので鑑定することが不可能であったとか、そういうふうな形での報告というものが一行も見当たらないわけでございます。私もそれを承知しておりますけれども、その点に間違いありませんか。

井口説明員 鑑定の結果につきましては、先ほど申し上げました鑑定の結果、頭蓋骨二個につきまして性別あるいは年齢等が判明した、それ以外のことはわからなかったことでございまして、推定が可能なものにつきまして鑑定書といいますか、その結果として出された次第でございます。

鈴木(喜)委員
 時間が来ましたのでここでやめなければなりませんけれども、この問題は日本人だけの問題ではなく、アジアの各国またはヨーロッパの国においても取り上げられ、新聞にも報道されて、一体これはどういうことなのかということで非常な関心を持たれている事案でございます。
 その中で、今の警察のそこでの調べ方、検査の仕方、鑑定の依頼の仕方というものは非常に多くの問題を含んでおりまして、また、そういう世界の各国から非常な不信感を持ってとらえられる問題になると思います。また、心情的に言いましても、どこの方だかわからない、その故国で眠りたいと思っておられる方をそこにきちんとした形で葬って眠らせてあげることもできない、葬儀屋さんの段ボールにそのまま骨が入って今も保管されているというような状況は早くなくしてあげたい、そういう思いがいっぱいであるわけですけれども、その中で、警察の方が調べられるときにわざわざ人種を外して調べながら、そしてわからなかった、犯罪に関係がないからこれでおしまいだというような形では、とても国際的な信用は得られないと思います。これからいろいろな究明が続くとは思いますけれども、その点よく御了解いただきまして、これからの調査についても御留意いただきたいと思います。


第120回国会 予算委員会第四分科会 第3号   平成三(1991)年三月十三日(水曜日)午前九時開議
回答者 鈴木喜久子衆議院議員   回答者 寺松尚厚生省保健医療局長 岸本正裕厚生省援護局長

鈴木(喜)分科員 私は、二年ほど前の平成元年七月二十二日に、新宿区にあります旧陸軍軍医学校の跡地から、現在は厚生省の国立予防衛生研究所の建設現場なんですけれども、そこからたくさんの、三十五体にも上る白骨死体が掘り出されたということについて、それからのてんまつ状況その他について伺いたいと思います。
 この問題につきましては、国会では昨日、一昨日というふうに続けて、ある程度白骨を調べていただきました警視庁の科学捜査研究所の方からのお話は伺っています。これについては、その死体が発見されたという当時、新聞では我が国ばかりでなく外国の方にもその記事が出て、ニューヨーク・タイムズ等にも取り上げられ、またアジアの諸国からもきちんとその身元を解明してほしいというような意味での声明等が発表されております。こうした国際的な問題でありますこの問題について、今現在はどこにも身元を確認するでもなく、やはり新宿区にあります葬儀社の倉庫の中の段ボールに入れられてそのまま放置といいますか、保管されているような状態でございます。
 これについて、何とかしなければならないという見地から今いろいろと御質問をしていきたいと思います。まず、このてんまつがございますので、その点について簡単に御説明いただきたいと思います。

寺松政府委員 今鈴木先生から御質問の、私どもの予研建設現場におきまして人骨が発見されたということにつきまして、その後の事実経過を申し上げたいと思います。若干長くなりますが、お答えをいたしたいと思います。
 平成元年の七月二十二日に、新宿区戸山にあります三研究機関、国立健康・栄養研究所の敷地の中でございますけれども、そこで三研合築のための建設工事をやっておったわけでございますが、その土中から人骨が見つかった、こういうことでございます。そこで、すぐその日に建設省の関東地方建設局の職員が牛込警察署に届け出をした、そういうことで、牛込警察署は現場確認を行われた、こういうふうに聞いております。
 翌二十三日には、牛込警察署が警視庁科学捜査研究所に鑑定を依頼いたしまして、人骨数個、私ども聞いておりますのでは、警察では人骨五個と骨片二片ということになっておりますが、持ち帰りまして、翌二十四日には牛込警察署から次のような発表がございました。
 その一つは、三十五体の人骨が発見されたこと、それから、発見された人骨は最低二十年以上経過していること、それから三番目といたしまして、犯罪に起因したものと認められる証跡はなかった、こういうことでございました。
 それからまた、同日、二十四日でございますが、東京都学芸員によりまして現場調査が行われまして、埋蔵文化財に該当しないということが確認されております。
 さらに、二十四日には牛込保健所の関係職員によりまして現場確認が行われまして、二十五日には、同保健所から新宿区に対しまして人骨発掘確認書が提出され、新宿区は二十六日に、人骨発見現場で職員立ち会いの上人骨を引き取ったものと承知しております。

鈴木(喜)分科員 そこで、一番初めのところから少しずつ伺っていきたいのですけれども、本建設現場の土地は国有地であると思います。現在は厚生省が管理をしておられる土地だというふうに伺っているのですが、その点と、その人骨が発見された場所というのは現在ほとんどもう建ち上がっているというふうに聞いておりますけれども、その建物の下の方にちょうどなってしまうような、そういう位置のところなんでしょうか。

寺松政府委員 当時出ましたころは国立栄養研究所と申しておったかもしれませんが、現在は国立健康・栄養研究所が土地管理をやっております。
 それから、今御指摘の、工事中でございますけれども、その部分が今どこになっておるか、それは、私の持っております資料からいきますと、管理棟の下、こういうふうに聞いております。

鈴木(喜)分科員 では、まず、ちょっと前の所有、管理の点から伺いますけれども、栄養研究所が持たれた、それは何年ごろから栄養研究所が管理されて、その前はどこが管理をされていたところなんでしょう。ずっとさかのぼりまして、わかるところまで教えていただきたいと思います。

寺松政府委員 国立栄養研究所が二十三年に移ってまいりましてから管理者となっておるわけでございます。

鈴木(喜)分科員 昭和二十三年から栄養研究所ですね。そうすると、その前はどこが管理をしていたのですか。

寺松政府委員 今お答えいたしたいと思いますのは、国立医療センターと現在呼んでおりますが、前の国立東京第一病院でございましょうか、そういう施設がございましたのですが、そこが管理いたしておったと存じます。

鈴木(喜)分科員 国立第一病院ですか、そのところもやはり厚生省の管轄であることは間違いがないと思うのですが、そのもっと以前、昭和二十年以前はどうなっておりましたですか。

寺松政府委員 その以前は、御承知のように、東京第一病院は陸軍病院でございましたわけでございますので、陸軍軍医学校が所有しておった。したがいまして、陸軍省でございましょうか、ということになるのではないかと存じます。

鈴木(喜)分科員 どうもありがとうございました。
 そういうふうなところで、国立栄養研究所というところが使っていた当時の図を私いただいて拝見しているのですけれども、その図で見ますと、栄養研究所の研究棟というところからかなり離れた、何もない敷地ですね、ただの広い。そのところが人骨の発見場所というふうになっているのですけれども、栄養研究所ではこのような形でずっと昭和二十三年以来お使いになっていたのかどうか、おわかりになりますでしょうか。

寺松政府委員 現在の状態で続いてきたと、今工事中でございますが、それ以前の壊す前の段階ではそういうふうなことだと承知しております。

鈴木(喜)分科員 まことに一々御質問して申しわけありませんが、旧陸軍軍医学校のころの位置でいきますと、この人骨の発見場所というのには何か建物が建っていたんでしょうか。

寺松政府委員 残念ながら私ども承知いたしておりません。

鈴木(喜)分科員 今昭和二十三年からが栄養研究所というふうに伺いました。その前が国立第一病院、軍ではなくなってからが第一病院の管轄だった。それが多分昭和二十年から続いていると思うのですが、そのころのことはおわかりになりますか。そこは病院であり、しかも厚生省の管轄のところだから、陸軍省になっている昭和二十年以前のものとは違うと思いますが、その点はいかがでしょうか。

寺松政府委員 重ねての御質問でございますけれども、その辺の詳細は存じておりません。

鈴木(喜)分科員 私ども、普通ここを管理するまたは所有するというような場合に、それ以前のどのような形で使われていたということについては何かしらの図面その他のものが、引き渡しなり引き継ぎなりするときにあるというふうに思いますけれども、そういうものを何もなしで引き継ぎ等をされているのでしょうか。

寺松政府委員 今先生の方からの御指摘でございますが、私ども、その御質問の中にもございませんでしたので承知しておりませんが、今のところは承知しておらないわけでございますけれども、必要なら一応調査してみることはできるかと存じます。

鈴木(喜)分科員 ぜひともお願いしたいと思います。一体どういうふうな形でここが使われていたのかということも、こうした身元の全くわからない人骨が一体ではなくて三十五体というような非常に異常な形で出てきているわけでございますので、もしこれを埋葬して早く冥福を祈るというふうなことをするにしても、きちんとした形がなければそれもすることができない。そういう方のこれからの安らかな眠りについていただくためにも何としても身元をはっきりさせなければならないと私は思います。ぜひともこの点、一体どういう建物が、栄養研究所のときはこういう広い土地になっているわけですけれども、その前のときにどのようになっていたのか、その点についてお調べいただいて私の方に知らせていただきたいと思います。
 それから次に、この人骨が出てきたからその後警察等にお知らせになり、そこから、警察から科捜研の方にいって人骨自身の鑑定をされた。それからまたもう一つは、都の学芸員ですか、その方の方からこれは文化財ではあり得ない、そういう何か結果の報告をもらったという御説明がさっきありました。その科学捜査研究所の方は昨日伺いましたので承知しているのですけれども、東京都の学芸員の方からこれは文化財には当たらないということの報告はどのような根拠に基づいて、どういう理由でそういうふうに言われたのかおわかりになりますでしょうか。

寺松政府委員 私ども、そういう専門的なことでございますので、中身については承知しておりません。

鈴木(喜)分科員 これは口頭で言われたんですか、それとも、学芸員が調べて調査されたのであれば何かの文書でその報告が来ているはずだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

寺松政府委員 細かい御質問でございますのであれでございますが、私どもが今承知しておりますのでは、口頭ではなかろうかと思います。

鈴木(喜)分科員 口頭でなされたということでは、後で付近の住民それからまた世界の関心というものも、ああそうか、本当にそうなのかというふうになかなか納得ができないのじゃないかというふうに思います。この点も、もし何か文書があるようでありましたらばお調べをいただきたいと思います。きょうはその東京都の学芸員の方には来ていただいていませんので、そこのところはそちらから伺うわけにはいきませんから、またの機会にいたしたいと思いますけれども。
 そういうふうなことで、これであとは埋葬かということになるわけなんですけれども、その段階で、平成元年の八月五日に新宿区の方から厚生省のその国立栄養研究所長あてで、ここでいろいろと身元調査をしてほしい、引き取り者がいないかどうかということを調査してほしいというような依頼書が出ております。それに対して同年同月の八日付の回答が栄養研究所長の名前で新宿区の方に来ております。その中を見ましたらば、ここでは、埋葬文化財にも当たらない、犯罪にも関係がない、身寄りの人からの申し出もない、だから手厚く葬ってほしい、こういう内容になっているわけです。その中に、身元確認調査については、当該土地の管理者ではあるけれどもこれを行わなければならないということにはならないから、私どもの方では身元確認調査ということはできませんというようなことがなお書きでつけ加わっております。
 この点について私はちょっと疑問に思うのでお尋ねするのですけれども、当該土地の管理者ということばかりでなく厚生省というお役所の性質上、こうした身元不明でしかも三十五体どこのどういうふうな形で出てきたかわからない、そこが前からずっと厚生省関係の使用をして管理をしている土地であるにもかかわらず、自分の方には何の責任もないということが本当に言えるのでしょうか。

寺松政府委員 私どもの考えでございますけれども、土地管理者としては通常の場合の取り扱いと同様、その人骨の発見につきまして牛込警察署に通報し、新宿区に人骨を引き渡したことにより、その果たすべき義務は完了しているのじゃないか、こういうように思っておるわけであります。

鈴木(喜)分科員 引き渡したらばそれで済むという問題ではないと私は思います。ここでの身元確認をするのに一番適しているのは、それまでずっと長いことそこを管理してこられた厚生省の方にその職責というものがあるのではないかというふうに思います。法令上の問題を云々する前に、この人骨の死後の経過年数というのは、科捜研の方からの報告によれば、鑑定によれば、死後少なくとも二十年以上たっているというふうに言っています。少なくとも二十年です。そうしますと、その当時が平成元年ですので、亡くなったのが昭和四十年よりは昔だと言っているわけですね。それは何も昭和二十年以前の問題ではなく、それから二十年以後または二十三年以後、その四十何年かそのぐらいまで、少なくとも昭和四十年ぐらいまでの間にそういう人骨というものがそこに何らかの形で正式な埋葬をされることもなくばらばらの形で、ばらばらの人骨で、しかも三十五体が入っていた。そうなりますと当然そこをそれまで使っておられた栄養研究所というものにそこの管理または責任というものが出てくるわけではないかというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。

寺松政府委員 先ほどお答えしたことだと思いますが、私どもは所管の牛込警察署に届け出ることによってその義務は終了しておる、こういうふうに考えるわけでございます。

鈴木(喜)分科員 牛込警察署に届けるのは、犯罪のおそれがあるかどうか、そこから出てきたものが犯罪的な何かの傾向がある、事件性のあるものかどうかという意味で、届けることはいいと思います。しかし、そこの中を御自分のところで使っておられて、その間に、もしかしたら死亡して埋められたかもしれないその死体についての責任が、骨を渡してしまえばそれで済んでしまう、そういうことにはならないのじゃないですか。それは大変責任逃れの話だと思います。この点についてもう一度だけお答えを伺いたいと思います。

寺松政府委員 何度も同じお答えをいたすことになるわけでありますけれども、私どもは、身元不明ということで、その工事をやっておりました建設省の職員から警察署に届け出た、こういうことによってその義務は完了しているんじゃないか、こういうふうに思います。以上、あとは、それぞれの所管のところでもっていろいろ御検討いただく、こういうことになるのではないかと存じます。

鈴木(喜)分科員 昭和二十年以降か、または以前か、それはわかりませんけれども、もし昭和二十三年以降に埋められたものであったとしても、そこで責任が切れてしまうかどうかということについては、事実上そこについて使用されていた厚生省の栄養研究所の責任は絶対あると思います。その身元を調べるということの責任は出てくるはずでございます。ですから、それについてはもう一度考え直していただきたいと思います。
 加えて、その後もまだ新宿区と栄養研究所の方でやりとりが何通か続いているわけでございますけれども、その中で厚生省援護局等々の文言が出てまいります。そしてそういうところから一つの法令の――厚生省がたとえこういうような場合に、土地をただそこに持っていた、または管理していたというだけで、そこに人骨があったというだけでも、なおかつ、こうした場合に何らかの身元を探る責務がまだあるのではないかということについてのやりとりがあると思うのです。それは、厚生省設置法という法律を見せていただきました。この厚生省設置法というのは、厚生省の所掌事務はこういうものであると、所掌事務が出ています。その中に、内地からの引き揚げであるとか旧軍人云々とかいうことがいろいろ書いてあって、引揚者の問題、復員の人の問題、それからあちらで俘虜になった人の問題、そうした者の手当てが書いてある中に、「前三号に掲げるもののほか、旧陸海軍の残務の整理に関すること。」という一条がございます。
 この建物が、旧陸海軍の残務の整理に関するという意味でいえば、陸軍軍医学校であった、特にこの軍医学校の中でもこの辺ではいろいろな細菌でありますとか化学兵器等を研究する何か医療の関係のものがあった、研究所があったというふうに言われているところでございますので、特にこの点についても「旧陸海軍の残務の整理」ということに当たるのではないかと思われるのですけれども、この点はいかがでしょうか。

岸本政府委員 援護局の所掌事務のことで御質問でございますけれども、旧陸海軍の活動範囲というのは非常に広範多岐な業務を行っていたわけでございます。終戦に伴いまして旧陸海軍の機能が停止するということで、それから残務の整理というのが出てくるわけでございますけれども、これは国有財産の処理等を初めといたしまして非常に多岐にわたるものでございまして、それぞれの所管の部局が対応したわけでございます。
 私どもの援護局というものの経緯から申し上げなければいけないわけでございますけれども、戦争の終結に伴いまして海外から多数の同胞が引き揚げてこられるということで、そこに上陸をいたしますと、そこからの緊急の生活援護ということが必要なわけでございます。そういうことを始めてまいって、それから昭和二十二年の十月に至りまして、担当している引き揚げ援護業務に密接に関連するということで、それまで復員庁というところでやっておりました旧軍人軍属の復員、身分を解くということでございますが、復員等の業務をその人事関係資料とともに引き継ぐことになったわけでございます。
 このような経緯にかんがみまして、厚生省設置法の第四条第二項第三号に規定してございます「旧陸海軍に属していた者の復員その他旧陸海軍の残務の整理」に関する事務というのは、旧陸海軍から引き継いだ人事関係資料をもとにいたしまして行う事務である、具体的に申し上げますと、旧陸海軍関係者の恩給進達でございますとか履歴証明等々の人事関係の事務をいうというふうに考えているわけでございます。したがいまして、今回のお尋ねの人骨の身元確認調査、こういうものは、その設置法に言う「旧陸海軍の残務の整理に関すること。」には該当しないというふうに考えております。

鈴木(喜)分科員 今お聞きしたのは、厚生省組織令の中の「援護局の事務」というところのことについて伺ったのでしょうか。私はまずその前に、厚生省設置法の第五条で厚生省の所掌事務がある、その中の第五条百七というところに「旧陸海軍の残務の整理に関すること。」というのがある。それはもちろん「旧軍人軍属の復員手続に関すること。」というのが百四にあり、未帰還者の問題は百五にあり、百六に俘虜に関するものがあり、それぞれのそういう条項があるわけですね。それの中で見まして、その中の一つで百七というところに「旧陸海軍の残務の整理に関すること。」というのがあるから、これはまず厚生省というお役所がその残務の整理を引き受けるわけであるということをまず決めているんだというふうに私理解するわけですよ。その後で、厚生省組織令というものの中では、援護局はどうだこうだということでまた同じように「旧陸海軍の残務の整理」というのが出てきます。組織令ですから、あなたの局ではこういうことをしなさいよという形でそういう政令が出ているんだと思いますけれども、初めに厚生省設置法というのは、これは法律ですから国会で決めたものだと思いますが、その中で、ここで決めたときにこれはそういう、今言ったように、「旧陸海軍の残務の整理」というものをそのように限定した意味でやったということがどこかに書いてあるわけでしょうか。

岸本政府委員 これは今経緯を申し上げたわけでございます。先ほどの繰り返しの部分が多くなりますけれども、陸軍省、海軍省というものが解体をされた、残務の整理というのはたくさんの問題があると思いますが、そういうものは第一復員省、第二復員省を初めといたしましていろいろな担当部局で処理をしたわけでございます。そうして厚生省といたしましては、今申し上げましたように、海外から引き揚げていらっしゃった方々の臨時防疫の問題でございますとか、また、その日からの生活援護の問題、こういうところを担当したわけでございます。そういうことでしてまいりまして、終戦から二年余りたちましてから初めて人事資料というものを復員庁から引き継ぎを受けまして、その人事資料をもとにして、今申し上げましたような人事関係の残務の整理を行うということになったわけでございまして、これはそのときの経緯から明らかであろうと思っております。

鈴木(喜)分科員 そのときの経緯というものが、例えばこの法律をつくるときの議事録に残っているとかそういうことがあっても、この条文を素直に読めばということは海部内閣総理大臣はよくおっしゃることでございまして、素直に読めば、そのまま見たら「旧陸海軍の残務の整理に関すること。」でありまして、それがたとえ議事録を見てもおっしゃるようなことでございますので、その点、これはその問題とはまた全然別にして、非常にわかりやすい文言で、そのままですし、しかも、そういった議事録等々がない場合にはこのまま読むのが一番素直な解釈だと思うのです。もしもこういったいろいろな意味での旧陸海軍の残務整理を厚生省が引き受けておられないとするならば、一体どこの省庁がこういうものを引き受けるというふうにおっしゃるのでしょうか。私は、厚生省というのは揺りかごから墓場まで全部について人の生活が安心してできるようにということででき上がっている、そういうお役所だと思います。私どもの味方のお役所だと思っているわけです。でも、これが仮に日本人の人骨だとす
れば、それをほったらかしにしておくということは厚生省のお役所の性質からいっても非常にうまくないのじゃないかと思うし、旧陸海軍の残務の整理をもしもされないとすれば、一体どこの省庁がされるというふうにお考えなのか、その点も含めて一言だけお答えください。

岸本政府委員 どこの省庁がするかというのは、私からお答えをするのは適当ではないと思いますが、一言で言って、厚生省という役所が陸軍省なり海軍省の後身である官庁であるということではないわけでございまして、陸軍省の後身官庁ではないわけでございますから、陸軍省のし残したことは全部丸ごと引き受けるというような立場にはないわけでございます。
 それで、私が先ほど申し上げましたように、陸軍省と厚生省との業務での接点というものは、引き揚げてきた方々の生活援護に始まる。そうしますと、どの地域から、同日の何時に、何人引き揚げてこられるという情報をもとにいたしまして、応急的な生活援護の受け入れ態勢を整える、こういう仕事が厚生省の任務であったわけでございます。そういう観点での接点から始まっておりまして、陸軍省の仕事を丸ごと引き受けるのが厚生省の揺りかごから墓場までということではないかということには、ちょっと私としては応じかねるわけでございます。

鈴木(喜)分科員 時間がありませんので、ここでやめさせていただきますが、大臣にもお願いしておきます。こういった問題について、どこにも行き場のない問題を何も全部厚生省が拾えと言っているわけではございませんが、何とかこの問題を人道的にも、また国際的にも評判を落とすような、信頼できなくなるような、そういった問題にされないように、何とか身元確認のための御協力をよろしくお願いしておきます。


第123回国会 厚生委員会 第2号   平成四(1992)年二月二十七日(木曜日)午前十時一分開議
   回答者 寺松尚厚生省保健医療局長 多田宏厚生省援護局長 末次彬社会局長 山下徳夫厚生大臣 

鈴木(喜)委員 鈴木喜久子ですけれども、初めて厚生委員会で質問をいたします。よろしくお願いを申し上げます。
 去年の予算委員会の分科会、一九九一年の三月十三日、それからその前日であります三月の十二日の法務委員会、その両方を通じまして、新宿区というところにあります旧陸軍の軍医学校の跡に、今現在厚生省の国立予防衛生研究所というものがもうすぐ建ち上がるという形で建設をされております。その建築現場でございますけれども、その敷地の片隅から白骨が三十五体、かなり異様なものでございますし、ただばらばらとではなく整然と入っていたらしいのですが、その部分についてそういった形で人骨であるところの白骨が出てまいった。もうこの事件は既に三年ぐらい経過しておりますが、そのことについて質問をいたしました。そのときに御答弁も数々、法務委員会も、また厚生の分科会でもいただきましたけれども、またその後の経過、動きもございますでしょうから、その点について伺っていきたいというふうに思います。
 私がその分科会の中で厚生省にお尋ねをした部分でございますけれども、ここは旧陸軍の軍医学校の跡でございまして、その後に厚生省が管理をされ、建物の中も利用されていたわけでございますが、それは昭和二十年以降、終戦以降のお話だということで、その前の建物の配置が一体どうなっていて、そこにはかなり軍の人体実験やら細菌戦の実験やらがされていたと言われている建物やら、そういった研究所があった。その敷地の中の配置図等があるようであれば、また、何らかの手がかりになるような資料があればお出しいただけるというお約束をいただいているのです。それについてなかなかそういうものが手に入らないということでございましたが、この点はいかがになりましたでしょうか。

寺松政府委員 今先生から御質問いただきました点でございますけれども、前回の予算委員会の分科会で御質問いただきまして、私がそれでは調べてみましょうと、こういうお話をしたと存じます。
 私ども、これは先生御承知なんでございますが、旧陸軍の軍医学校から土地等の管理を引き継ぎました。これは国立医療センターが引き継ぎまして、それをそのセンターから今度は国立健康・栄養研究所に対しまして引き継ぎを受けておるわけであります。そこで、これに関連いたしまして、旧陸軍軍医学校当時のいろんな関係資料というものにつきまして私どもも鋭意調べさせていただきましたのでございますが、いずれの機関におきましても該当するようなものを引き継いでいないということでございます。したがいまして、きょう先生の方にお示しすることができない、こういうわけでございます。

鈴木(喜)委員 これを出されないというと、どういうところを一体お調べになって、その上でないという結論が出せたのでしょうか。その点も具体的にお知らせいただきたいと思います。

寺松政府委員 私ども、今申し上げたとおりでございますけれども、国立医療センター、それから現在の国立健康・栄養研究所と申しておりますが、その辺の機関を調べたわけでございます。

鈴木(喜)委員 この問題に関しましては、後でもお話しいたしますけれども、一体こういうことを調べたり、この人骨を一体どのようにするのか。これから先、これはどなたかが異常な形で亡くなられていることは間違いがないのですが、やはり眠るべきところに安らかに眠らせてあげなければいけないし、そういった形できちんとした始末をつけなければいけないんだけれども、一体どこがそれをやるのかということについていろいろと厚生省の中でもお話がぐるぐるしまして、どこも受け手がない、こういったことがあったわけでございます。
 昨年私がお伺いしたときに、資料を探してみましょう、こういうものがあったら出してみましょうということは、その医療センターでありますとかそこにあるものだけをちょろちょろっと調べるということではなくて、もう少し責任を持って各軍、旧陸軍の関係でありますとかそういうところもお調べいただく、そういうことを厚生省の中で、部局はどこの管轄になるかということとはその時点では関係なく、厚生省としてひとつやっていただけるということで私たちは大変な希望を持ったわけでございますけれども、ただいま伺いますと、センターの中を見ましたということでは、それは今まで私が質問する前にもやられていたことではないか、このように思いますが、この点、例えば他の省庁、防衛庁の資料でございますとかそういうものはお調べいただけなかったのでしょうか。

寺松政府委員 人骨が出た場所が私どもの健康・栄養研究所の敷地の中でございますから、もしもそれに関連するとすれば、それを引き継ぎました国立医療センター、あるいはそれを引き継いだ健康・栄養研究所というものが一つ何かあるのではないかと思うのが当然だと思いますし、それはやったわけでございますが、今先生がおっしゃいました関係省庁というものの例示としまして防衛庁のお話が出ました。私どもも、今聞いたところではございますけれども、防衛庁の図書館等で調べまして、陸軍軍医学校の五十年史というようなものはあるようでございます。それは明治十九年から昭和十一年までの年史というような形で書かれておるものと承知しておりまして、その中には見出すことができません。

鈴木(喜)委員 どうもありがとうございました。そういう五十年史、またこちらでも参考にもさせていただいて、いろいろと調べていきたいというふうに思います。
 ところで、この人骨でございますけれども、その際にも申し上げましたし、法務委員会では、この人骨が出た際に、これは犯罪に関係があるかもしれないということで、警察の方からの調べ、そして科学捜査研究所ですか、警視庁の方の科捜研で調べたという結果などについて法務省で伺い、そしてまた厚生の分科会の方では、そのものについての鑑定をどうするかという問題についてもちらっと伺ったんじゃないかと思います。
 鑑定をしようとして、掘り出された場所が新宿区でございますから、新宿区が主体となりまして、これは一体どういう人骨であるのか。科捜研の方からのお答えでは、これは犯罪に関係あるかどうかわからないけれども、死後二十年以上たっているということで、これはもう時効の問題がございますので刑事訴追の可能性がありませんから、犯罪にもうならないということで打ち切られて、細かいある程度のことは私の質問のときにも答えていただいているわけでございますけれども、もっとより肝心な、この骨が果たして日本国民のものであるか、巷間うわさされておりますような中国から強制連行されてきて、そこで何がしかの犠牲になった方々の骨ではないかということで、その人種ですね、性別まではそのときわかっているのもあったということなのですが、人種は一体どこの、外国人なんだろうか日本人なんだろうか、そういうことについてわからなかった。
 それでその鑑定を、ではそういうことまで専門的に調べてもらおうとしますと、なぜかこれが依頼を受けた方が断ってこられる。何かどこからか圧力があるのじゃないかということをこの間の質問のときにも申しました。その後この鑑定についてどういうふうないきさつになりましたかということについて、厚生省の方でおわかりになっている点がありましたらお知らせいただきたいと思います。

寺松政府委員 今委員が申されましたとおり、いろいろと新宿区の方では検査を依頼されたようでございます。なかなか検査の相手を見つけることができなかったようでございますが、最近、昨年の九月でございますか、新宿区が人骨の鑑定を外部の研究者に依頼することになったという旨の新聞報道は私ども承知いたしておりまして、その後その結果がどうなったかはつまびらかにしてございません。

鈴木(喜)委員 昨年の九月に依頼したというこの依頼先、それからどういったことを依頼したかという鑑定の依頼内容とか、そういうことについてはおわかりでいらっしゃいますか。

寺松政府委員 今先生御質問の件につきましては、私どももお聞きしたわけでありますけれども、新宿区の方で私どもに御回答いただいておりません。

鈴木(喜)委員 そうしますと、厚生省の方では、鑑定を頼みましたよということだけを抽象的に新宿区の方からお聞きになったということでございますか。

寺松政府委員 私どもは土地管理者と申しますか、その人骨が出ましたところの土地管理者でございますので、法令に従いましてそのように届け出をし、私どもの土地管理者としての義務は果たしておると考えておりまして、その結果につきましては新宿区が責任を持ってやるということになっておるわけでございますから、そのようにお任せをしておるわけでございます。

鈴木(喜)委員 これは後からもいろいろとお願いもし、問題にもしていかなければならないところだと思いますけれども、一年前にもやはり寺松さんからのお答えだったと思うのですが、局長はそこで、私は土地を管理しておりますから、ここについては警察に知らせて、それでお渡ししたのだからもうこれで義務は全部果たしております、そればかりを、議事録を今ずっと見ていますと、たしか三回か四回答えておられる。繰り返しますがと、それ以上何も言っていただけない。唯言っていただいたのは、資料等を探していただけるというところまででございましたよね。
 これは厚生省というお役所の性格からいっても、いかにこれが旧陸軍のことで厚生省はその後でございます、土地管理者としての義務だけでございますとおっしゃいましても、やはりここで持っておられ、現在この土地を使われ、その土地から人骨が異常な事態として三十五体も発見されたという事態があった場合に、しかもそれについてただ単にこれが病死の方ということではなく、そうではない異常な亡くなり方をされたものであり、うわさとして、そういう形で中国から強制連行されてきた人たちの犠牲者の一部ではないかというような話が出てきて、それを調べている人たちもいるというような現状の中で、ただこれは土地の管理者でございますから知りません、これは旧陸軍のことでございます、医学校のことまでは存じませんということではなかなか済まないのではないかと私は思うのです。
 今後この問題についてもどういうふうに対処していっていただけるものか、この点私たち自身が非常に苦慮しているところでもあり、強くお願いをしていかなければいけないところだと思うのですが、ただ単に土地の管理者としての責任、これだけで突っぱねられたのでは困るのですよね。これは日本人だけでなく、日本の地で亡くなられた方々、その遺族の方々ということを考えますと、そこに対する適切なとらえ方、対応の仕方で最も適合したお役所として厚生省はあるのじゃないかと思うのです。今ありませんからとか紋切り型のお役所としての豚ではなく、こういった問題をこれから先もどのように対処していかれるのかということの窓口にぜひなっていただきたいというふうに思います。
 この点について今後どのようにしていくかということで考えていっていただきたいと思うのですが、この場所というのは、予防衛生研究所というものができまして、そこでは近隣との問題もあり、そこでの安全性の問題についてもさまざまな議論がなされているところだと思いますけれども、そうしたものができ上がるということも、ここから人骨が発見されたということは何かしらただ単に偶然とだけは言えないような、一つの神の摂理みたいなものまで感ずるような問題ではございます。ですから、この問題についてこれから先きちんとしたけじめを厚生省でつけていただきませんと、なかなかその次の問題も運用上も発展していかないのではないか、私はそういうふうな感じすらするわけでございますが、この点について厚生省でこれから先どのような形で事実解明またはその後の処理、対応等をしていただけますか、この点を伺いたいと思います。

寺松政府委員 何度も何度も同じことを申し上げておるようでございますが、関連の関係法令等にのっとりまして私どもは土地管理者として所定の手続きをやった。したがいまして、法律に基づきまして今度は新宿区の方がその辺の人骨の、何といいましょうか解明もやるということで御依頼をされているようでございますので、その結果を見守りたい、このように思っております。

鈴木(喜)委員 これは今そういうことでよろしいのでしょうか。援護局の方でもそのような形でよろしいのですか。

多田政府委員 援護局の方というふうに御指摘ありましたのは、多分設置法の「旧陸海軍に属していた者の復員その他旧陸海軍の残務の整理」に関する事務、これが厚生省の所管になっているではないかということを御指摘になっておられるのだろうと思います。この事務、用語だけ読みますと何かかなり幅広く読めるわけでございますけれども、経緯をずっとたどっていきますと、第二復員省で所掌していたこの復員その他の残務処理の事務を順次引き継いでまいりまして、そして最終的に厚生省がこれを引き継いでいる、こういう経緯でございます。したがいまして、具体的には人事関係資料をもとにして行う事務であって、恩給の進達ですとか履歴証明ですとか、そういう人事関係の事務を引き継いでいる、こういうふうになっておりまして、全般的に軍の残務整理を引き継いだということではないというふうに考えております。

鈴木(喜)委員 これも前にも伺いました。そうではない、だから軍のことを全部厚生省が、援護局が引き受けるということはできないのだということを伺っているわけでございますけれども、そこでもう一つ社会局長、いかがでございましょうか。

末次政府委員 ただいまの人骨の件に関しまして、社会局としては所掌事務から見まして関係がないものと考えております。

鈴木(喜)委員 この問題について関係がない。この人骨について、もしこの後、外国人であったというような鑑定結果が出た場合に、それでは厚生省としてはどこが受けていただいて、全部厚生省で管理するということでなくても、人骨がこうこうであったというようなことを新宿区から厚生省の方に申し入れた場合に、どのような対応の仕方を厚生省としては考えておられますか。

寺松政府委員 私からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、今先生の御質問の件につきまして、一般論といたしまして、厚生省として、私どもは土地管理者として果たすべき義務は終了したと思っておるのでありますが、仮に新しい事実が判明いたしまして、それに対処すべき問題が生じるかどうかわからないということだと思いますけれども、もしも仮にそういうものがあった場合には、その事実の内容に応じましてそれぞれの関係省庁が対応されるものだ、このように思います。

鈴木(喜)委員 一般論としてということですが、その内容に応じましてそれぞれの関係官庁が対応されるということでは、それの関係官庁に交渉をされるといいますか、調整をされるのは厚生省以外にはあり得ないと思うのですが、その点はいかがですか。

寺松政府委員 厚生省としてというのもあれでございますけれども、やはり新宿区から東京都を経てそれぞれ関係の省庁と御相談なさるのではないかと存じます。

鈴木(喜)委員 それはおかしいと思うのですね。ここで今言っていることは、新宿区の方から厚生省に対して、こういうふうな形で、人骨で、こういうふうなこれこれの結果が出たと、今言っていることが何もわからないという結果になるかもそれはもちろんわかりませんけれども、仮にわかった場合に、これはどこでやりますかと突っぱねるということでは、全く厚生省としては何もしないと同じですよね。どこの省庁がされるかはその後の問題として、この問題を持ってきて最初にされるのはやはり厚生省じゃないんでしょうか。私はそのように承っておりますが、いかがでしょうか。

寺松政府委員 先生にお答えするのも同じことなのでございますけれども、やはり仮定の話はなかなかしにくいのではないかと思います。したがいまして、もしも新しい事実があって、それぞれの対応をしなければならないというようなことになれば、それは関係の省庁が対応されることになるのではないかと一般論で申し上げたわけでございます。

鈴木(喜)委員 もう一度押し問答するようですが、各関係の省庁が対応されるということは、そういう言い方をすると、厚生省は関係ないよということを言っておられるのと同じですか。

寺松政府委員 明快にお答えできぬのじゃないかと思います。というのは、どんな事態が出てくるかわかりませんので、仮定の話は私の方からお答えするのはいかがかなと思います。

鈴木(喜)委員 何回聞いても同じですけれども、もう一度聞きます。
 もし仮に、仮定だと言われたら困るのですが、鑑定結果がもうすぐ出るという、昨年の九月からの鑑定結果がもうすぐ出るということを踏まえて、ここで出てきた場合に、新宿区の方がこれを関係各省庁、どこかでそれに対応されるかもしれませんけれども、私が今一般論として伺った中では、局長としてはお答えしにくいところではあるかもしれませんが、厚生省のところに持っていって、各関係省庁に、どこかが対応されるということであったら、そこについてまず持っていけば、取りまとめとまではいかないまでも、何とかそこでの調整をしていただけるということに私は理解をいたしますが、次の問題に移る前に厚生大臣、このことについて一言お願いいたします。

山下国務大臣 これが一体か二体ならともかくも、三十五体となりますと、これはやはり大きな一つの問題であると思います。今局長からいろいろお話し申し上げましたが、私といたしましては、これをただ単に十分調査をしないで、無縁仏として弔うということは心残りがあります。今の局長の話では、もう十分調査をしたと言っておりますが、さらに私の責任において周辺の聞き込みであるとかそういうこと等をもう一回やってみまして、また適当な時期にお答えすることといたしたいと思います。

鈴木(喜)委員
 どうもありがとうございました。それでは大臣からのお言葉をいただきましたので、ぜひその聞き込みの中にこれからの鑑定結果ということも踏まえまして一大臣からの直接のお約束と私は受けとめまして、よろしくどうぞお願いを申し上げます。



第123回国会 法務委員会 第9号   平成四(1992)年四月二十四日(金曜日)午前十時一分開議
   回答者 寺松尚厚生省社会医療局長 木村政之内閣官房内閣外政審議室内閣審議官 原田隆法務大臣

鈴木(喜)委員 今回、それのまたもとになるような外国人の人権にもかかわる問題として一つ問題が生じて、新聞等にも大きく取り上げられました問題を質問していきたいと思います。
 昨年の八月の末に、東京都の新宿区の戸山町、現在そこは厚生省の予防衛生研究所というのが建設予定で、相当に建ち上がっているところの土地ですが、昔、旧陸軍の軍医学校のあった跡のところの工事現場から三年ほど前に、そのころは三十五体ぐらいの人骨が掘り出されたという事件がございました。そして、それをさっき申しました去年の八月の三十一日になりましてから新宿区がこの骨についての鑑定を依頼しました結果がことしの三月の末に出て、その公表が今月の二十二日になされたわけでございます。
 前々からこの骨が一体どのような経過でここに埋められたのかということについてさまざまな憶測それから推理、推測がなされてきたわけでございますけれども、日本人がそこでもしかしたら戦災で焼けて倒れて、それが全部そこに埋められていたのかもしれない。その場所が軍医学校の研究所であり、しかもそこは七三一部隊という名称で知られる給水それから防疫の研究をするという名目の研究所のあったところ、石井さんという方のおられた場所であるというようなことがあって、さまざまな憶測が、新宿区ばかりではなく全国的になされていたわけです。これについて私は、二年前に衆議院に入って以来さまざまな形で委員会等において質問をしてきたわけでございますけれども、基本的には、この骨がどこの国においてきちんと眠ることができるか、その骨をその場所できちんと眠らせてさしあげることがまず第一に必要なことじゃないか。日本だったら日本、そのほかだったらそのほかの国で、しかもそのほかの国で眠らせるということ自身の調査の中で、一体どのような経緯でこういった人骨がここにこういうふうにたくさん埋められていたのかということについてやはり調査していかなければならないのじゃないか、こういった立場から質問をしてきたわけです。
 新宿区は早くから区議会で全会一致で鑑定を決め、鑑定を依頼しようとしたのですけれども、なぜかどこに行っても、最初は受けても、断られるという形で、二年近くがそのままいたずらに過ぎてしまって、葬儀屋さんの倉庫の段ボールの中にむなしくその骨が眠っていたのですけれども、幸いにして昨年受けていただいた大学の先生のところで出た結果ということになりましたらば、この結果を鑑定書が出てきて見てみますと、人体は三十五どころではなくて、頭の骨だけでもそれぞれの方のが五十個ぐらい、全体の骨から見ますと、約百余りの遺体の骨であるということがわかった。しかも、非常に多くの頭蓋骨の部分がありまして、この骨の部分には、弾が撃ち込まれてできた穴があいているというのが一つ、それからドリル様の物で頭に穴をあけるというような、脳外科的な形での頭に穴をあけるというようなこととか、中耳炎の治療のように耳の下のところを穴をあけるというような、人為的な工作を加えられたものがまたたくさん出てきた。そのほかに、首の骨のところは鋭利な刃物で切り断たれている、そういった、どう考えても自然に亡くなられた方または焼け死んだ方の骨というような可能性のない、首だけ切って、そしてそれが頭蓋骨になってというような形のものが多いというような結果が非常にたくさん出てまいりました。
 年齢も壮年の方が多く、しかも女性がその中に約四分の一含まれている、男性が四分の三、そして少年と思われる十五歳ぐらいの骨も一つ含まれている、こういった結果が出てきたわけでございます。そして、人種についてはモンゴリアン、モンゴル系のというところまでぐらいしか判明はしないのだけれども、しかしその中には、例えば日本人というような一つの民族ではない、その骨の中に、日本人もあるかもしれないけれども、しかし日本人だけでない、日本人を含むかもしれないけれども、そうでない人たちもある骨であるということが今回の鑑定の結果わかったわけでございます。厚生省の方にもその当日既に鑑定書は送付されていると思うのですが、非常に重要な事態になってきたと思うのです。
 二十二日の当日に新宿区の方が発表したコメントの中に「人骨の身元調査に対して国(厚生省)からは拒否されているという従来からの経緯もございますが、この鑑定を国(厚生省)に送付し、今後さらに協議を行います。」というふうに書かれております。そして、区としては、これを引き取り手のない、引き取り手のわからないそうした方の遺骨というふうにして、そういうものについては墓地、埋葬等のそういう方々の法律ということで、区長として、焼いて葬りたい、こういうふうに一応言っているわけですが、ここまでいろいろなことが明らかになってきた現在、そこに研究所を建てておられ、しかもその前に軍医学校の用地であったその土地を今管理しておられる厚生省としてはどのように考えられますでしょうか。

寺松政府委員 先生の御質問、厚生委員会でもお答えいたしましたけれども、発見されました人骨につきましては、土地の管理者といたしまして、法令等に定めます所要の手続に従いまして適正に処理したと思っているわけでございます。
 先般、先生今おっしゃいました新宿区に鑑定の結果が出たということの事態になりまして、私どもは、とりあえず土地の管理者であります国立健康・栄養研究所を所管しております立場から保健医療局におきまして、新宿区から御協議があった場合には、鑑定結果の具体的な内容あるいは区の考え方等も十分お聞きいたしまして考えてまいりたい、このように思っております。

鈴木(喜)委員 十分お聞きするところまでは結構ですけれども、考えてまいりたいの内容がまず知りたいわけです。今ここでこの骨を焼いてしまったり、そしてまたこれを埋葬してしまった場合には、もうこれ以上何もわからなくなってしまいます。今ここまで鑑定の結果が出たということについては、厚生省としてはこの調査について、もっと詳細なものについてあらゆる調査をすべきじゃないのですか。

寺松政府委員 今の先生の御質問でございますが、私どもまだ正式に新宿区からお話を聞いておりません。新聞等では報道されておるわけでございますし、先ほど御説明いただきました鑑別の結果につきましてはいただいておるわけでございますが、非常に専門的なことでございますので、区の方で十分佐倉先生から、鑑定の先生からお聞きになっているように聞いております。したがいまして、その辺のお考え方もいろいろお聞きした上で、今後の人骨の取り扱いにつきましては、土地の管理者としての立場を踏まえつつ、新宿区の協議に慎重に応じてまいりたい、このように思っております。

鈴木(喜)委員 何もお答えになっていないのと同じだと思うのです。慎重に応ずるということはどういうことなんですか。今までの厚生省の態度を踏まえということは新宿区も言っているのです。そうしますと、どうしてもそこで専門的なことをお聞きになって、どんな専門的なことをお聞きになるかわからないけれども、それによって、ああもうわかったのですね、ここまでわかったのだから、もうこれ以上はわからないのだから、これを焼いて埋めてしまいましょう、そして日本で手厚く葬りましょう、そういった結論を出される可能性があるかどうかということを聞いているのです。

寺松政府委員 先ほども申し上げましたように、新宿区から正式にはお話がございません。したがいまして、新聞報道等につきましては、人骨を葬るとか焼骨するという場合については厚生省ともよく相談する、こういうふうに聞いておりますので、恐らく新宿区からお話があるかと存じます。それに応じまして私どもも考えてまいりたい、このように思います。

鈴木(喜)委員 もうここの場面において新宿区は主体じゃないのですよ。新宿区は厚生省に御相談をしたいと言っているんですよ。だから、詳しく聞いてから返事をするのじゃなくて、現在出てきているものがこの鑑定書なんですよ。それについて、基本的な姿勢としてこれ以上調査をしようとしているのかしていないのか、その点を伺いたいと言っているのです。ただ単に新宿区から聞いてそれで答えを出すというだけの答えを今私はここでいただこうと思っているわけじゃないのです。ここで、もっと詳しく調査をする必要があるかないか、そう思っておられるかどうかを聞いているのです。

寺松政府委員 厚生委員会でございましたか、先生が厚生大臣に御質問になりましたときに厚生大臣が申し上げたと思いますが、いろいろと聞き込み等もやってみたい、こういうことでございまして、私どももその指示を受けましていろいろとやっておりますが、何分昔のことでもございますので非常に難しいということは御承知おきいただきたいと存じます。

鈴木(喜)委員 何分昔のことであっても、今ここまで鑑定の結果出てきたわけですよ。何もわからない骨でございます、昔のことはわかりませんというふうなことを前にもいろいろな、私の個人的なところでの質問についても、それからまた公の委員会での質問についても、そのことについてはもうわからないことばかりでございますと言っていたことが鑑定で、それも半年ですよ、半年の鑑定の中でこれだけのことがわかってきているわけですよ。このわかってきたことを、何分昔のことでございますからなどと言っている間にどんどん年がたってしまいますよ。今ならまだ生きておられる方もある、生き証人の方もある、そしていろいろな文書もどこかにあるかもしれない。そういったことにどのぐらい厚生省が熱意を持ってやっていただけるかどうか。
 私はこの問厚生委員会で質問したときに、厚生大臣が、調査をしましょう、そういった確認をしていただいたことを非常に前向きな姿勢として評価をしておりますけれども、それについて、今こういったものが具体的に出てきたときに、まだ新宿区と相談しましてとか中身を聞きましてということではなくて、もっと具体的にそして主体的に厚生省がかかわってもらいたいと思うのです。厚生省としてはこの問題を区の問題だと思っておられるのですか。
 既にこの問題は、軍が関与して異常な形で昔なら首を運んできたと思われるんだよ、切断して運んできたと思われるんだよというふうに言っている、こういう事情からいきますと、これはやはりこれまでの戦争の責任の一つの事態ではないか、私たちのもう少し先輩の人たちがずっと行ってきた戦争の中の一つの結果、こういうものが出てきたのじゃないかと思われるのです。これは国の問題としてかかわらなければならないので、新宿区の問題、区が主体となった問題ではないのですけれども、そのあたり厚生省は、厚生省が主体だというお考えがおありなんでしょうか。

寺松政府委員 私の方からお答えするのが適当かどうかと前の御質問のときにもお答えしたのでございますが、私どもは土地管理者としての立場からはいろいろとこの問題についてかかわりがあるので、先ほども申し上げましたように厚生大臣からいろいろ、今先生が御指摘のように、まだ現存される方がいらっしゃるかもしれない、それからいろいろな資料があるかもしれない、そういう中からいろいろと聞き込み等もやって調べるように、こういう御指示をいただいておりますので、そのお話は私どもが今担当してやっておるところでございます。

鈴木(喜)委員 今のその調べておられることと、今回ここに衝撃的なこうした鑑定書が出てきたこととのその結びつきで現在どのように考えておられるか、この鑑定書というもののほかにもこの骨をもっともっと細かく調べていく必要があるのではないかということを、私はさっきから再三お尋ねしているのですけれども、その必要がありともないとも今言えないということなんですか。

寺松政府委員 鑑定結果でございますけれども、私ども、やはりこれは十分鑑定者の方の御意見を聞かれた新宿区の方から直接詳しくお聞きして、これに対して判断するということになると思います。私ども、新聞等で報道されていることがどうのこうのという問題じゃございませんで、やはり役所としまして、その辺のお話を十分聞いた上で考える、こういうことだと思います。
 それから、鑑定結果のお話はそれといたしまして、いわゆる人骨の由来という問題はまた別途あるわけでございます。鑑別の方法につきましては、これは新聞報道のところでございますけれども、モンゴロイドというお話でございまして、まだどこという人種を特定できないというふうに伺っております。したがいまして、その辺を十分お聞きしたい、このように考えておるわけであります。

鈴木(喜)委員 そのモンゴロイドというところから、今、一つの民族ではなさそうである、少なくとも複数の民族が入っているんだ、仮に日本人が入っていたとしても他の民族も入っているんだというところまでこの鑑定書の中でわかっているし、そのことは鑑定書の中の文言で書いてあって、
専門的な用語でも何でもない。私が読んでもわかるような、そういった言葉で書いてあるわけですから、その点について、あと何を区からもう一度詳しくお聞きになるのか。詳しくお聞きになることは、それは十分に聞いていただきたいと思いますけれども、決定されるのは区ではなくて厚生省の方であるということについての自覚をお持ちいただきたい、このことを言っているわけです。
 区に相談を受けたからただ相談に乗るということではなくて、ぜひとも厚生省として主体的に動いていただかないとこの問題は解決しないし、もっともっと調べる必要があるのではないか。少なくともここで今この人骨を焼いたり埋めたりしてしまうことのないようにぜひともお願いをしておきたい。骨が語っている、語りかけていただいていることについて、その日をふさいでしまうようなことを厚生省というお役所の手でしないでいただきたいということをぜひともここでもう一度お約束をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

寺松政府委員 今先生がおっしゃいました、口を封ずるとか封じないとかいう問題じゃございませんで、やはり事実について私ども十分調査もし、伺っていきたい、このように考えております。

鈴木(喜)委員 市町村長の埋葬の権限、義務というものについては、埋葬とか火葬を行う者が判明しないとき、いないとき、このときに区なら区長さんができるわけでございますから、そうなりますと、今回の場合には、この土地の管理者が厚生省であり、しかもこれを埋めたのがその土地の所有者、そのころの管理者である者が埋めたわけで、その土地を今管理しておられるのが厚生省だとしますと、埋葬、火葬を行う者の権限は区にはもはやないというふうに考えなければならないのだろうと思います。この人骨を埋蔵物というふうに考えたとしましても、その所有権は、骨の所有権というふうな言い方はおかしいのですが、やはり現在の土地の管理者というところに一定の権限というものは来るのだろうと思われます。この点についても厚生省の方でよくお調べいただき、また、くれぐれも申し上げておきますが、ここでこの人骨について軽々に焼いたり埋めたりすることのないようにお願いをしておきたいと思います。
 この問題は、私は厚生省が、この間の厚生大臣の調査についてのお約束ということも含めまして、これからもずっと骨の物理的、科学的な調査と並行して、周りの人たちのいろいろな意味での調査とか、または海外に置かれております軍事裁判の資料その他について、今回も七三一部隊の資料はアメリカの方から情報公開で回ってきたというふうに聞いておりますが、そういった資料も含めましてそれを調査するということを、おいおいとかだんだんとかいうことではなく、きちんと特別の調査委員会でもつくってやっていただきたいと思います。この点について、厚生省ばかりでない問題として、厚生省と内閣、お二方からお聞きをしたいと思います。

寺松政府委員 先生のお話の件でございますけれども、この人骨自身の問題についていろいろ調査するということは先ほど何度も申し上げました。それから、この人骨にかかわりますことで、海外で保管されている資料につきまして土地管理者としてやるのが適当なのかどうかはよくわかりません。私もそう思います。しかしながら、機会あるごとにまた努力もしたいとは思いますが、その辺は御了解いただきたいと存じます。

木村説明員 人骨の調査の問題につきましては、厚生省からも私ども報告は受けております。いずれにいたしましても、現在、厚生省の方で新宿区から説明を聴取するということを聞いておりますので、内閣といたしましてはその結果を見守りたいと思っております。

鈴木(喜)委員 ぜひ、内閣としては結果を見守り、この問題を放置することのないようによろしくお願いするとともに、厚生省としましては、先ほどから何回もしつこく申し上げましたけれども、済みません、寺松さんもう一回、骨の保存ということについて、軽々に、私たちの目や耳に触れないというか、ただ一片の御報告だけを承って、もうこれは焼くことにしましたとか埋めることにしましたということのないように、国民の疑惑がまだまだある段階ではこれを解明するための努力をしていただきたいのですが、一言お約束いただけませんか。

寺松政府委員 何度も申し上げておるので同じことの繰り返しになるのでございますけれども、今、葬るとか葬らぬとか、勝手にやみに葬るとかいうような話ではないと私ども思います。したがいまして、これは御承知のように、墓地、埋葬等に関する法律とかあるいは死体取扱規則というような法律もございます。この法律からいきますと区も関係してくるわけでございますので、区とも十分協議しながら対応していきたい、このように考えております。

鈴木(喜)委員 この点については、ここで調査をやめるということのないように、ここまで出てきた大変な鑑定書でございますので、ここから突き進んだ形でやれるようにぜひともお願いしたいと思います。
 最後に法務大臣、この問題についてお考えがありましたら、一言お聞かせください。

田原国務大臣 所管を越える話でありますが、政治家の一人としてお答えします。
 国民の重大な関心が集まっている事件ですから、うやむやにすることなく処理をしていただきたい、こう思います。

鈴木(喜)委員
 どうもありがとうございました。終わります。



     

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