上告棄却の不当判決に抗議し、政府に人骨問題の徹底究明を求める

2000年12月19日
人骨焼却差止住民訴訟原告団(原告団長 渡辺 登)        
人骨焼却差止住民訴訟弁護団(弁護団長 森川金寿)        
軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会(代表 常石 敬一)
連絡先 電話  03(3355)3341       
    FAX 03(3355)3356 弁護士 南 典男

 本日、最高裁判所第三小法廷において、上告棄却の判決が下された。
 本訴訟は、東京都新宿区の住民が、旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨の焼却の差し止めを求めた住民訴訟である。
 私たちは、このような不当な判決を下した最高裁に抗議するとともに、日本政府に対し、人骨問題の徹底した究明を求めるものである。
 第1に、本判決は、本事件の実質審理に入ることなく却下判決を言い渡した一審とこれに追随した二審判決を支持した不当な判決である。
 本来、住民訴訟は行政に対する住民の監視機能を充足させることが制度の目的である。ところが、本判決は、「回復困難な損害を生ずるおそれがある場合」の判断の基準を金銭の多寡にした上、住民の人骨焼却費用(449万5000円)は「回復困難な損害を生ずるおそれがある場合」に当たらないとして上告人らの住民差止請求を棄却した。これは、第2に述べた人骨を処分することの社会的重大性を無視し、住民の差止請求の可能性を奪うことになり、住民訴訟制度の意義を圧殺するものである。最高裁第三小法廷は、司法の役割を自ら放棄したものとして、批判されねばならない。
 第2に、本判決は、本件人骨の処分が国際的にも国内的にも重大な社会的な意味を持つことを無視した判決であり、極めて遺憾である。
 本件人骨は新宿区が行った鑑定で、外国人を含む陸軍軍医学校の標本類であることが明らかとなった。また、厚生省の調査においても、「戦場から集められた戦死者」ではないかとの指摘がある。だとすれば、人骨の身元確認調査とその処置は、政府が責任を持つべき戦後処理の一環であり、赤十字条約違反という外交問題にも発展する重大問題である。
 しかも、本件人骨発見地に隣接する防疫研究室跡地に本件人骨と類似する人骨が埋まっている可能性が指摘されている。
 このような社会的意義を無視した本判決は、極めて不当なものであり、国内外の抗議の声を受けるであろう。
 ただ、本判決は、本件人骨の処分について何ら実質的判断をしていないのであり、本件人骨の焼却を是認する判決ではないことは明らかである。
 したがって、被上告人新宿区は、住民に向き合った地方自治体として、区民、国民、そしてアジア諸国の人々が注視している本件人骨の保存を継続し、調査に協力しなければならない。
 日本政府は、21世紀を目前にして、戦後処理の一環として、人骨問題の真相究明に全力を注ぐべきである。



     

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