軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』199号・要約

石井部隊(背蔭河)から脱走した人々を助けた村を試掘調査
 村人が「足かせ」を投げ入れた井戸を確認

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

「足かせ」を投げ入れた井戸の確認調査(2019年5月)
七三一部隊罪証陳列館提供

 背蔭河の石井部隊から脱出した人々を助けた村人の証言に基づいて、現地の五常市によって「足かせ」を捨てた井戸の発掘調査が行われた。

  • 石井部隊最初の人体実験施設「五常研究所」

    ABC企画のハルビン・スタディツアー(2019年10月30日~11月4日)に参加し、背蔭河を再訪問。

    背蔭河は石井部隊の最初の根拠地。1932年9月に土地を没収、翌年「五常研究所」として細菌実験施設を設置したが、厚生労働省の「関東軍防疫給水部略歴」に記載されず。

    3千人とも言われる「マルタ」とされた被験者は、七三一部隊によってことごとく抹殺され、唯一背蔭河の石井部隊から脱出した12人の肉声が当時の抗日聯軍の幹部によって今日に伝えられる。

  • 石井部隊から脱出した人々を助けた村

    背蔭河近く・富有村新発屯の住民が石井部隊から脱出した人々を助けた(韓暁・山邊、『七三一部隊の犯罪 : 中国人民は告発する』三一書房、1993年)。山邉さんは、その時に「足かせ」を投げ入れた井戸の特定と発掘を求めていた。私が2年前に訪れたとき、事情を知っている趙老人から井戸の場所を確認し地図を作成、後日、金成民七三一陳列館館長にも手渡し、発掘を要請した。

    今年3月、五常市文物管理所が、4月~5月発掘調査を行い、井戸の存在を確認。「足かせ」までは十数メートル以上あるので、掘削せず埋め戻した。

  • 背蔭河の石井部隊跡は五常市が史跡として管理

    11月2日に背蔭河を訪問。今は背蔭河小学校となっている「五常研究所」跡、「文物保護単位 五常市人民政府 二〇一六年九月」と記述されたプレートの前で五常市文物管理所の周英杰所長から説明を受ける。

  • 確認した井戸は七三一部隊罪証遺跡に指定

    新発屯では2年前に井戸を確認してもらった趙老人(83歳)に再び会うことが出来た。井戸は試掘調査後に埋め戻され、周りは四角く鉄格子で囲ってあり、「七三一侵華日軍罪証遺跡 二〇一九年六月立」のプレートが掛けられていた。

「足かせ」を投げ入れた井戸の位置(2019年5月)
七三一部隊罪証陳列館提供

 将来、「足かせ」が発掘され、背蔭河の歴史的事実が証明されることを期待している。

(2019年11月15日 記)

七三一部隊罪証陳列館の分館
ハルビンの黒竜江外国語学院に設置へ

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

七三一部隊罪証陳列館の資料ファイル

 11月3日、黒竜江外国語学院(注)に於いて、同学院に設置する予定の「国際平和資料館」(七三一部隊罪証陳列館の分館)構想についてミーティング。出席者は同学院の劉英校長、七三一部隊罪証陳列館の金成民館長など中国側関係者と同学院教師の纐纈健司さんと森正孝さん。そして日本からスタディツアーに参加していたABC企画の和田千代子事務局長、松村高夫・慶応大学名誉教授、川村の3人。

  • 七三一部隊関連記録を収集 ユネスコ「世界の記憶」遺産登録も視野

    最初に劉校長から黒竜江外国語学院の概要について説明。創立30年、1万人の学生と100人の教授がいて、現在は七三一部隊罪証陳列館と協力して平和学の講座を持つ。近い将来に同学院に「平和学科」を創設し、ゆくゆくは七三一部隊関係の記録をユネスコ「世界の記憶」遺産に登録することを目指す。

  • 外国語学院の新展示室に七三一部隊解明の戦後史料を展示 オープンは来年9月18日に

    続いて金館長から、分館は戦後、七三一部隊解明に取り組んだ資料などを収集して展示したい。日本の市民団体の調査活動を主に収集展示したいので、ぜひ、協力していただきたいということであった。

  • 七三一部隊罪証陳列館資料室に並べられた旧日本軍資料群(2019年11月)
    「人骨の会」の資料ファイル(2019年11月)
  • 意見交換

    意見を求められた松村高夫さんは、日本の七三一部隊研究における京大などの非協力の現状を説明し、安倍政権による歴史修正主義がはびこり、研究活動の厳しさが増していると指摘した。

    私からは、南京大虐殺関連記録の「世界の記憶」遺産に登録以降、安倍政権が硬化、「慰安婦」関連記録の登録を日本政府が阻止しようとしていることなどを報告。

    纐纈さんは、同学院に陳列館分館を設置するに当たって、学生の参加も配慮願いたいと要望。

  • 陳列館から日本の市民団体へ要請

    同陳列館から究明する会への要請文には、2020年に「国際平和資料館」を創設、『医学・戦争・平和―七三一部隊史実発掘と伝播記録展(暫定名)』を9月18日にオープンしたい、「究明する会」にも活動記録などを来年3月1日までに寄贈してもらいたい、とのこと。


  • 七三一部隊罪証陳列館から究明する会宛に渡された要請の手紙
  • 七三一部隊本部跡近くに資料室を設置

    七三一部隊罪証陳列館を訪問した10月31日、資料室訪問。資料は31万ページ、写真は1万枚、映像は2千時間に及ぶ。将来的には図書館にしたいという抱負を語る。

 陳列館からの要請を「究明する会」としても前向きに検討しても良いのではないか。

(2019年11月7日 記)

(注)黒龍江外国語学院:黒龍江省哈爾浜市利民開発区師大南路1号
http://www.hiu.edu.cn/zh/
2019年時点での情報です。現在はリンク切れです。(2020.06.14)

2019年人骨の会連続フィールドワーク第4回
 陸軍登戸研究所 ~第九陸軍技術研究所~ 開催報告

島村 英子(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

 11月9日、参加者20名が、生田駅に揃う。

山田朗先生

 新宿、中野、生田の登戸研究所が、一連の秘密戦として重要なラインで位置づけられていた。終戦時、情報は破棄されたが、奇跡的な経緯をたどり、詳しく知られるようになった。明治大学生田キャンパスに、山田朗教授らの尽力により、広く一般に資料や戦跡が残された。

登戸研究所入口

 生田駅から、キャンパス西の生田中学校(研究所の工場跡)を経て登戸研究所入口に出る。ここからは、学芸員の案内。

  • 第一展示室

    登戸研究所の全容 登戸研究所誕生の経緯。

  • 第二展示室

    風船爆弾と怪力(くわいりき)光線。

  • ふ号兵器(風船爆弾)

  • 第三展示室

    特殊兵器製造(スパイ用品…)、防諜・諜報・謀略・宣伝(雑書綴り…)

  • 第四展示室

    偽札偽造。

  • 暗室

    クランク式入口を体験。

  • 石井式濾水機のなかにあった濾水管(濾過筒)
    伴繁雄氏から法政二稿を通して資料館に寄贈
  • 第五展示室

    長野への移転。GHQによる免責。石井式濾水機濾過筒の実物。

  • レストスペース

    背景となる歴史展示。関連する「映像」を拝見。伴繁雄元少佐の勇気で、事実を世の中により広く知らしめることが出来、帝銀事件の証言など、沢山のことが解った。

倉庫跡
内部はこんな感じ
ヒマラヤスギは昔と同じ位置
五号・二六号棟跡
学芸員さんによる大学構内散歩
弥心神社
戦後、関係者によって建てられた碑
昭和の和の字が…

 大学の内・外に亘って、ご親切に案内下さった学芸員の塚本さん、本当に有難うございました。

アンケート結果報告
内容省略
ABC企画主催による731部隊展 成功裡に開催
人骨パネルも出展、好評を得る

鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)

 12月13日(金)~15日(日)、なかのZEROに於いて、『「過去からいま 未来へつなぐ」―731部隊・毒ガス・核兵器を考える―』が開催。映画「ひろしま」の上映、毒ガス島歴史研究所事務局長山内正之さんのお話等も。延べ約500名の参加。人骨の会も人骨パネル展示。

於なかのZERO美術ギャラリー
人骨パネルのコーナーにも人が絶えない
備忘録
フィールドワークの取組み
10月8日(火) 竹内良男さんのグループ(約20名)
11月22日(金) 丸浜昭さんのグループ(約50名)
新刊
戦跡スポットガイド―新宿戸山編―:原作者:Zazou・頒価:500円
2020年 連続フィールドワーク プレ企画講座
報告:陸軍技術研究所の全体像

日時:2月2日(日)午後1時30分~
会場:ウィズ新宿
報告者:鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)
資料代:500円

詳細

【2020年 連続フィールドワーク第1回】
お花見ウォーク~陸軍技術研究所から陸軍軍医学校へ~

日時:4月5日(日)12時50分集合 午後1時出発
集合:JR総武線大久保駅北口改札口
ガイド:鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)
資料代:500円
主催:軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会
連絡先:080-3157-1858(鳥居)
メール:jinkotsu731@yahoo.co.jp

2019.12.18

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