軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』172号・要約

厚生省に欺かれた国会(国民)――731部隊略歴
人骨発見25周年最終イベントDVD上映会&お話・前半

講演録:常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・)

  • 司会(川村)
    司会:川村 一之

     これまで七三一部隊関係者の証言の中で、元軍医で生体実験をした湯浅謙さんの証言を7月に上映したが、その続きを上映する。
     さらに、厚生省から国会に提出された七三一部隊略歴が改ざんされていたらしい。このことを、常石さんが発見したので、報告していただきたい。

  • 常石:講演

     最近、ネット上で七三一部隊の人体実験は全て嘘であることが証明されたなんて書いてある。これまで僕は、科学者の責任だとかかなり広い僕自身の興味の中で七三一部隊を書いてきて、人体実験そのものは主要なテーマにしてこなかった。

    講演:常石敬一

     しかし、従軍慰安婦についての朝日新聞の報道、一つの証言をきっかけにあのようなことが起こるのであれば、七三一部隊・石井機関での人体実験、それを一つにまとめて、その当時の医学界にとってどんな意味があったのかというのをもっとネットウヨクの方々にもわかり易い書き方で書かないといけないかなと思っている。そのきっかけが今日お話すること。

     厚生省が国会に出した資料が、コピーの技術を駆使して、4ページあったものを3ページにして出している。僕も騙されてきた、1982年からだから、30年以上ずっと騙されていた。この国というのは、公文書に関していうと何が事実で、何が嘘なのかわからない。都合の悪いことは国会に提出する資料から消して、知らんふりしている。今さら特定秘密保護もないし、隠すべき秘密など存在しない。

    著書:『七三一部隊』(講談社)

     本題に入る。これ、95年頃に出た本(『七三一部隊』、講談社現代新書)。この中で僕は「関東軍防疫給水部略歴」という小さな節を設け、そこで資料の内容を紹介している。この夏、岐阜の朝日大学の杉島さんという方―彼とは化学兵器の事などを一緒にやっていた。その杉島さんが、日本での七三一部隊の研究史を書きたいというので、「防疫給水部略歴」というのはどこで入手できるかと聞かれた。あの時はダメだったけれど、今はアジア歴史資料センターで見ることが出来るという返事をするために、アジア歴史資料センターにアクセスし、プリントアウトしてみて、4ページの資料を今年の夏に初めて見た。

     今日お手元の資料を見ると(前号2頁参照)、罫線がずれている。昭和12年8月8日、というところと次が昭和15年7月10日、そこの間で罫線は切れている。

     資料の由来は国会答弁。1982年4月6日、衆議院内閣委員会で、厚生省の森山説明員は、部隊略歴の存在を認め、三日後、衆議院大蔵委員会で、厚生省の北村政府委員が、公表を約束する。

     それから二年後の7月9日の参議院の決算委員会。リクルート事件で失脚した藤波孝生がこの資料について「終戦時に作成をいたしました部隊略歴」と言っている。その後、今度は共産党の参議院議員、佐藤昭夫が、「ただいまもありましたこの関東軍防疫給水部略歴と、3ページにわたる資料を厚生省からいただいているわけでありますが、この資料は、既にさっき引用しました昭和57年4月の衆議院大蔵委員会で厚生省政府委員が…」と言っている。ところが、今現在、国立公文書館のアジア歴史資料センターでは4ページのものが公開されている。

     切られていたのは、昭和14年6月23日の「部長以下一同「ノモンハン」事件に参加。」「陸満機密第四号により編成改正完結。」「陸満機密第一四号により編成改正完結。」など10行分。1950年のハバロフスク裁判の記録を見ると、七三一部隊はノモンハンでの戦闘に参加したことを契機に、天皇の秘密命令によって再編強化された。

     実は、左の肩の上に小さくページが振ってある。そこも読めなくしてある。現物の重要さを改めて感じる。

     「関東軍軍馬防疫廠略歴」や「関東軍化学部略歴」は、ノモンハン以前・以後で何も変化していない。七三一部隊も、化学部の516部隊も、軍馬防疫廠の100部隊も、みんな同じようなことやっている部隊で、役割も似たようなはずだが、ノモンハン事件における役割がたぶん、七三一部隊と他の二つの部隊が違っていたんだろう。そのことがノモンハン以降の七三一部隊の人員の増強だとか設備の拡充とか、そういうことに繋がったんだろう、その事を隠したかったのが国会に出された資料なんだろうと、いう風に考えている。

      一〇一国会参議院決算委員会七月九日の議事録で、

    • 佐藤委員:

      「念のために確認します。三ページの資料を渡されたけど、それが厚生省が持っている、公表できる資料のすべてですね」

    • 政府委員(入江):

      「その通りでございます。」

     二年前に調査を約束した政府に対して、佐藤がいろいろ聴く。それに対して入江がこんなふうに答える。

     「その部隊略歴は…七三一部隊…について…行動をまとめたもの…手元資料を精査いたしまして…新しい資料は見つけることが出来ませんでした」

     国会では「一応調べたけれども新しい資料が何も出てきませんよ」という答えを二年後も繰り返している。村山内閣の時にアジア歴史資料センターが出来た。資料が公開されるという前提があるから、戦争についても反省をするし、あれが敗戦だったという事もきちんと理解できる。

     「部隊略歴」について、具体的に何が隠されたのか、陸満機密第何号というのは、どんなものか内容はまだ分からない。アジア歴史資料センターでも未公開。どんなものであったのかというのは、うっすらとはわかるが、具体的な文章そのものは出ていない。

(12月7日実施)

(以下、次号に続く)

略歴「改ざん」に関する記事173号

講演・後半173号

人骨発見25周年「人骨問題の過去・現在・未来」の記録(その4)

講演録(3):石原 憲治 さん(千葉大学大学院特別研究員・元厚生労働大臣秘書官)

 今の死因・身元調査法は、警察が判断するという法律の構成になっているから、これを人骨問題に適用するためには、警察が認めない限り難しい。今の警察に新法の適用を期待できるのかというと、非常に世論の高まりとかいろんなことがないと難しいのかなあという気がします。さらに戦後処理の案件に行政の対応は悪い。

 では具体的にこれからどんなふうな動きをすればいいのか。まず法医学の立場からすると対照資料があれば当該の人骨について個人識別できる可能性がある。大雑把に人種の推定位はできなくないのですけれども、これは黄色人種であるっていうことぐらいしかわからない、北方系・南方系も分かるゲノムもあるが、これは難しい。まずスーパーインポーズ法で、写真と現状で存在する資料の突き合せを行う。写真が入手できているから、スーパーインポーズ法を使えばある程度絞り込みはできる。ただ、スーパーインポーズ法は決め手にはならない。だから可能性があればそこでDNA検査を行う。但し、ミトコンドリアは母系しかわからないし、コンタミによって別のDNAが出る可能性も多い。民間機関では一体20万円位とる。60何体あるからこの会じゃ難しい。誰かが予算を出さなくちゃいけない。だからこれは誰が主体になって鑑定を依頼するか、厚生労働省が一番いいが、やはり世論の盛り上がりと、日本が当時やったことをどうやって検証していくのかということを真剣に考える人が増えれば、おのずからやらなくてはいけないのではないかという結論になるという気はする。

講演資料
(※画像が荒く、一部文字が読み取れないファイルが含まれます)

質疑応答
省略
新聞記事

日刊ゲンダイ:意外や多発 遺体取り違え 東京狛江で26年前の事件が発覚《2015年3月14日(木)》

「戦後はまだ…刻まれた加害と被害の記憶・山本宗補写真展」開催

ロラネット・山田 久仁子

 1月23日~25日に武蔵野芸能劇場で、「戦後はまだ・・・刻まれた加害と被害の記憶・山本宗補写真展」と「中学生のための慰安婦展」をロラネット(フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩)主催で開催。
 写真集に登場する湯浅謙さんは元軍医、2日目の夜、鳥居靖さんに「人骨~731部隊について」映像をまじえながら、お話を伺った。
 人体実験に狩り出された人々と「慰安婦」にさせられた人々の運命が重なり合って感じられた。

2014年12月21日・長谷川ゼミ フィールドワーク感想(前半)

内容省略

2015年お花見ウォーク 空襲被害・人骨・植民地支配

期日:3月29日(日)
コース:軍都新宿フィールドワーク ⇒ 高麗博物館見学

2015.3.22

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