軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』164号・要約

人骨発見24周年報告 その2「寄り添う医師と切り捨てる医師」(後半)
チェルノブイリ、水俣、カネミ油症、そしてフクシマ

常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)

    『放射性被曝の歴史』(中川著)を手にする常石代表
  • 改めてチェルノブイリを思う
     長崎・広島の苦しみを多くの日本人が知るようになったのは1954年のビキニ被ばくの時から。世界では1950年のストックホルム平和アピール以降、反核の機運が盛り上がっていた。ボクは1973年~89年の16年3ヶ月長崎に暮らし、被ばく者ともずい分付き合った。長崎などがあるのに、なぜ福島の事故が繰り返されたのか。
     その中で改めてチェルノブイリに思い至る。関連の図書を別表にまとめた。
     ①はイリーンという、切り捨てる側の医者による書。ウクライナやベラルーシの医者たちが、如何に自分たちの作業を妨害したか、ということが書かれている。イリーンと真っ向から対立したのが②のアレクセイ・V・ヤブロコフ。これらを読んで思うのは、長崎・広島の被ばく者のデータが如何に悪用されているか、ということ。
     福島の原発事故の被害者たちが、チェルノブイリの被害調査の嘘っぱち、イリーンやIAEAやWHOがやった調査の嘘っぱちを暴いているのではなかろうか、その元になった広島・長崎のデータの嘘っぱちをボクらに教えてくれているのではないかと、そんな風に思えた。それでたどり着いたのが⑦(「放射線被爆の歴史」)。中川は学年で僕より一つ上で、この本が出る5ヶ月ぐらい前にガンで亡くなった。この本は最近増刷されている。表紙には次の言葉がある。

    「今日の放射線被ばく防護の基準とは、核・原子力関係のために被爆を強制する側が、それを強制される側に、被ばくがやむを得ないもので、我慢して受認すべきものと思わせるために、科学的装いを凝らしてつくった社会的基準であり、原子力開発の推進策を政治的、経済的に支える行政的手段なのである」

     改めてインパクトを感じる。中川の本には米国や国連を中心とした動きが書かれている。その後笹本征男の⑧(『米軍占領下の原爆調査―原爆加害国になった日本』)が出る。タイトルには、広島・長崎の被ばくデータを悪用することによって放射線被害の実態を矮小化する、そのことに加担した日本という意味が込められている。笹本はボクより一つ年下だが、彼もガンで、3年前に亡くなった。

     予防衛生研究所は何のためにできたか。ABCCのカウンターパートとして、被ばく者たちのデータを集めるためにつくられた。これも笹本に言われて初めて気づいた。
  • 科学的中立
    原田正純さん
    (1934年生2012年没)
     「公害や薬害のように被害者が加害者に成ることがありえない事件においては、私は被害者の立場に立つことが中立だと思う。」
     故・原田正純は10年ぐらい前に東京大学の講演でそう発言し、以来事あるごとに話していた。
     NHKの「視点・論点」(2013年5月16日放映)で滋賀大学元学長の宮本憲一は水俣の被害について指摘した。
     「司法の判断は汚染された魚を摂取した経歴があって感覚障害があれば、総合判断して水俣病と認めるというもの。行政の基準は、原則として先の4つの症候の組み合わせがあることとしてきました。この病像の対立は水俣病とは何かという基本的な認識の相違といってよいでしょう。」
     行政による4つの症候の組み合わせというのは裁判で否定されている。
     これはカネミ油症でも同じ。NHKのETV特集『毒と命~カネミ油症母と子の記録~』(2013年5月25日放映)。カネミ油症事件は1968年に食用の米ぬか油の中にPBCが混じってしまったと言われていた事件だが、実際にはPBCだけではなくてコプラナーPBCと呼ばれるダイオキシン類も混入していた。
     「油症事件の発覚から10年後、「台湾油症事件」が発生した。台湾大学公共衛生学部が20年以上追跡調査を行っている。そこから次世代被害者の実態が明らかになってきた。」「ホルモン異常や発育の遅れ、免疫不全など様々な影響が出ている。これらの異常は胎児期にダイオキシンに晒されたため。台湾では油症患者の母親から生まれた子供は申請すれば被害者として認められ、医療費の自己負担分は免除される。」
     日本では、重症患者の母親から生まれた子供であり、なおかつ体に不自由な部分がいくつかあっても、血液をとってPBC濃度が一定の基準になっていないと認定されない。
     九大に油症研究班があるが、動物実験すらやっていない。ひとり長山淳哉がこつこつやって、原因物質はPBCではなくてダイオキシン類だ、ということを突き止めた。
     国が認定基準を決めると、動きが取れなくなってしまう、というのが、原爆についても水俣についても油症についても、力のない弱者が被害者となって国と争うときに繰り返されるパターンとなっている。その一番大規模なのがABCCを中心とした長崎・広島の被ばく者データの悪用。
     長崎について中川が著書で言っているのは、ABCCの研究は爆心地から2kmのところに線を引いて、その中にいる人たちが被ばく者だと言っているが、高線量被ばく者の症状ばかり言っていて、低線量被ばく者は切り捨てられる。
     今回の事故で被ばく被害見直しをする必要がある。これを最後の機会にする必要がある。福島の被ばく者たちが低線量被ばくの傷害が出るのは5年後ぐらいだと思う。チェルノブイリの被害者たちは、当時ソ連では十分に情報が知らされなかった。隣のポーランドでは食料の管理を徹底した。だから内部被ばくは少なかった。だけどベラルーシやウクライナは汚染された食べ物を食べて内部被ばくした。そういう苦い経験を踏まえて、情報は全て公開して欲しい。怖いけれども自分で見て、聞いて、自分で判断して進んでいきたい。

     最後に自分のことに戻ると、ボク自身も自分のガンについて知りたい。今まであまり自分自身と向き合ったことがなかったが、向き合っていくしかない。多分これは事故当時、原発の近くに住んでいた人たちが今思っていることで、ごくわずかな情報でもいいから情報は全て教えて欲しい。その上で判断するのは自分たちなんだ、ということではないか。

別表:チェルノブイリから広島・長崎を思う
題名(日本語出版年)著者(訳者)/出版社
日本語で読めるチェルノブイリ事故の当事者/国による報告書
①『チェルノブイリ虚偽と真実』(1998年)L. A. イリーン(本村智子、浜田亜衣子、高村昇、本田純久、芦澤潔人、山下俊一、本村政彦)/長崎・ヒバクシャ医療国際協力会(Webで公開)
②『チェルノブイリ被害の全貌』(2013年)アレクセイ・V.ヤブロコフ,ヴァシリー・B.ネステレンコ,アレクセイ・V.ネステレンコ,ナタリヤ・E.プレオブラジェンスカヤ(星川淳、チェルノブイリ被害実態レポート翻訳チーム)/岩波書店
③『チェルノブイリ事故から25年 ウクライナ政府報告書』(2012年)緊急事態省(市民科学研究室)/市民研(Webで公開)
④『チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書』(2013年)非常事態省(日本ベラルーシ友好協会)/産学社
非当事者による報告
⑤『低線量汚染地域からの報告』(2012年)馬場朝子・山内太郎/NHK出版
⑥『チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害: 科学的データは何を示している』(2012年)IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部(松崎道幸)/合同出版
広島・長崎を思い出す
⑦『放射線被曝の歴史』(1991年)中川保雄/技術と人間(2011年増補版は明石書店)
⑧『米軍占領下の原爆調査―原爆加害国になった日本』(1995年)笹本征男/新幹社

質疑応答・25周年に向けて意見交換:省略

東京教組の11名を戸山案内

安松 狢

陸軍戸山学校の登攀訓練

 9月15日(日)、戸山ヶ原を歩く。一行はwamを見学後にスタート。人骨発見現場からほぼフルコースを3時間半で見学できた。終了後も韓国料理店へ。

幸徳秋水と高橋お伝
フィールドワーク「陸軍士官学校と東京監獄」に参加して

荒川 美智代

案内人:鳥居

 残暑の残る9月29日、「陸軍士官学校と東京監獄」のフィールドワークに参加。永井荷風は、大逆事件の幸徳秋水らを目撃していた。(「花火」(1919年「改造」)。市谷監獄と東京監獄は1903年から7年間、同じ敷地に共存していた。

工事現場から50人分の人骨、日本統治時代の解剖用か

朝鮮日報:2013年11月7日 崔燕真(チェ・ヨンジン)記者

 ソウル恵化警察署は、先月18日にソウル大学医学部で、人骨が大量に見つかり、捜査に乗り出した、と6日発表した。見つかった骨はおよそ50人分。

2013年度 連続フィールドワーク 第4回 東大と上野公園

12月8日(日)
東京メトロ湯島駅

人骨発見25周年企画

【七三一部隊員は語る】DVD上映会
第一回「七三一部隊語り部フォーラム」を見る 2月9日(日)午後2時~4時
若松地域センター第1集会室
(以降3月から6月まで、毎月第2日曜日午後2時~4時)

連続フィールドワーク
3月30日(日)午後1時~ お花見ウォーク JR高田馬場駅戸山口改札口
9月28日(日)午後1時~ 東京砲兵工廠 JR水道橋駅東口改札口

人骨発見25周年集会 7月20日(日)時間・会場未定

2013.11.24

定期購読者募集のご案内

年間4~6回発行している『究明する会ニュース』の定期購読をお願いしています。お申し込み詳細は【定期購読者募集】のページをご覧ください。
inserted by FC2 system