軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』163号・要約

人骨発見24周年報告
常石氏講演「寄り添う医師と切り捨てる医師」開催

鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)

講演:常石 敬一/司会:川村 一之

 7月21日、若松地域センターにて標記の集会開催。参加者20余名。

司会の川村一之から、人骨問題の24年間を振り返る概説があった。そして、東日本大震災と原発事故を踏まえ放射線被曝の問題はこれから、と発言。

寄り添う医師と切り捨てる医師

常石 敬一(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・代表)

しみじみと語る常石代表
  •  ボクが七三一部隊を調べるようになったのは、科学者・医者はいかに非人間的なことができるのかということを明らかにしたいと思ったから。3・11後、福島県が放射線健康リスク管理アドバイザーとして迎えた山下俊一は切り捨てる医師の典型で、七三一部隊の医者よりひどい。
     「被ばく者、カネミ油症の被害者、有機水銀の被害者が、どうしたら社会の目を意識せずにこうむった被害を訴えることができるのか」と、寄り添う医師の原田正純さんは言った。同じ地域で被害を被った人とそうでない人、国に認定された被害者と認定されなかった被害者の間にも差別がある。「認定基準」というのは、二重三重の差別の構造を生みだす。
  • 5年後
     何故ボクがそんなことを考えるようになったかというと、ボク自身が3・11から5年後の日本を考えるようになったから。
     東電福島原発の所長だった吉田さんが食道ガンで亡くなった。ボクも震災の前に食道ガンが疑われ、精密検査を受けて結果を待っていたときに地震があった。やがて原発の電源が止まった。ボクは日本でも軽水炉ならなんとかなると、「原発とプルトニウム」(PHPサイエンス・ワールド新書)で主張した。3・11の時も緊急炉心冷却装置が働いて何とかコントロールできると思っていたが、その日のうちに一号炉はメルトダウン、翌日水素爆発を起こした。
     14日にCTスキャンの結果を聞いた。ガンは転移しステージ3だった。4月に無事に手術できた。半年前から福島に「免震重要棟」があったおかげ。6年前の新潟の地震で柏崎刈羽原発で計器が破損し、その後「免震重要棟」がつくられた。
     「常石さん、ソ連はチェルノブイリの事故から5年で崩壊した。日本がどうなるか、見届ける必要がある」
     自分が休む間、非常勤講師をお願いした友人から言われた。ガンに負けるなという励ましだろうが、そう言われると今の日本を5年間はウォッチする必要がある。それで山下の振る舞いが気になった。
  • 放射線の光と影
     「放射線の光と影」(第22回日本臨床内科医学会講演[2008年9月]、2009年3月)という資料を見る。山下は78年長崎大学卒業。ちょうどボクが教えていた頃だが付き合いはなかった。
     新聞記事を二つ。「福島第一原発事故:国連報告書『福島県健康調査は不十分』」(毎日新聞、2013年5月24日)によると、「福島第一原発事故を調査していた国連人権理事会の特別報告者、A・グローバー氏は『人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ』と指摘。」
     国連の人権理事会は、日本は日本の法律通りにしなければいけないと言った。
     もう一つは「被曝と『無関係』…福島の甲状腺がん患者数」(2013年5月28日)。
     「『原子放射線の影響に関する国連科学委員会』(UNSCEAR)は、福島県民の甲状腺の最大被曝線量は、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の60分の1以下で、現在の甲状腺がんの患者数は『被曝と無関係に発生する割合』としている。」
    チェルノブイリで甲状腺ガンの患者数が増えていったのは5年後。
     同じ国連の中でも原発に対して、推進するグループと慎重なグループが存在している。因みに、UNSCEARというのは、原子力の商業利用を進めるためにつくられた。最初は遺伝学者なども入っていたが、今は原発を推進したい人たちで構成されている。
     日本の旧原子力安全委員会も敦賀の一号炉や高速増殖炉の下に活断層はないと言っていたが、変動地形学の専門家たちは、あれは活断層だと言っていた。規制委員会に変わって変動地形学の学者が入り、指摘されるようになった。
     それと似たようなことを山下は「放射線の光と影」の講演で演じた。
     「いち早く無機ヨウ素剤を投与することで甲状腺の被ばくをブロックし、その後の発がんリスクを予防できる。いったん被ばくをした子供たちは生涯発がんリスクをもつ。」
     福島でヨウ素剤の配布を止めたのは山下らアドバイザーたちだ。
     また、山下は、「チェルノブイリの放射線被ばくの住民への影響で認められているのは甲状腺ガンだけ。白血病だとか白内障だとか免疫の低下だとか、国連の場では認められていない」と切り捨てている。
     もう一つ、ここが一番のポイント。
     「広島、長崎の原爆被ばく者の長年にわたる健康影響データは、50年以上、世界の放射線安全防護基準の基本データとなっている。」
     つまり、放射線被ばく量の閾値の設定に、外部被ばくだけ評価した広島・長崎の放射線被ばく者のデータが使われている。
     山下は講演の最後で、
    「20歳未満で10~100ミリシーベルトの被ばくで癌が起こりうる。CT一回で10ミリシーベルト」だから何回もCTを撮ると危険と、極めてまっとうな指摘。ボクみたいなガン患者はマメにCTを受けるが、それはリスクとベネフィットの関係。
  • カメレオン?
     5月3日に福島の二本松市で、震災後福島は安全だと言い続けてきた山下は住民の質問に、
    「私は、基準を作る人間ではない。基準を示したのは国で、私は日本国民の一人として国の指針に従う義務がある。」
    専門家としての自覚も当事者としての自覚も全くない。10ミリシーベルトでも危険と言っていたではないか。しかも福島の子供たちは事故がなければ浴びる必要のない線量だ。その人たちに国が20ミリシーベルトと決めたんだから我慢しろと、そんなこと言えるのだろうか。
     科学者というのはこんなカメレオンみたいに変わることができるのか。それは科学者のとる態度なのか、社会は専門家に何を期待するのか。彼は県民のためのアドバイザーなのか。国や県の方針を押し付けるためのアドバイザーなのか。

(以下次号へ)

新聞記事

朝日新聞:陸軍極秘機関 若者が迫る【「登戸研究所」6年かけ映画に】《2013年8月29日(木)》

張可偉さん、来日!
七三一部隊展で証言

 8月29日~31日、明治大学で「七三一部隊展」開催。9月1日の記念シンポジウムでは常徳の細菌戦犠牲者遺族、李宏華氏・易友喜氏とともに七三一部隊犠牲者遺族の代表として張可偉さんが証言。張可偉さんは七三一記念館書記、単張清さんと来日。証言集会の後京都で証言活動をこなし、9月4日帰国。
 なお、七三一部隊展は引き続き登戸研究所資料館にて無料公開中(10月26日まで)。

【今後の予定】2013年度連続フィールドワーク

第3回:陸軍士官学校と東京監獄 9月29日(日)JR市ヶ谷駅集合
第4回:東大と上野公園 12月8日(日) 東京メトロ湯島駅集合

【耳より情報】慰安婦問題のサイト開設

HT FOR JUSTICE 日本軍『慰安婦』―忘却への抵抗・未来の責任

ウェブサイト:http://fightforjustice.info/

2013.9.15

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