軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』158号・要約

厚生労働省、初めて731部隊犠牲者遺族の訴えに応える
―身元確認の要請から21年後

 日本政府厚生労働省は2012年10月10日、「人骨」問題に関する経過報告を説明する文書を人骨の会に託した。同会は同文書を翻訳し、10月23日に遺族あてに送付した。

厚生労働省の返答文書―
人骨は丁重に管理し、年1回は拝礼
同文書には、標記の外、身元確認ができる検査方法に注視している、遺族から情報提供があった写真等は大切に保管している、問合せには誠実に対応していく、とある。
身元確認を求める731部隊犠牲者遺族の皆さんに応える

 同文書は郭曼麗さん、張可偉さん、張可達さん、王亦兵さん、朱玉芬さん、李鳳琴さんの6人に送達した。

厚生労働省厚生科学課の回答文書
人骨発見23周年集会報告Ⅱ
人類学の進歩と人骨(前編)

馬場 悠男(元国立科学博物館人類研究部長)

馬場 悠男 さん
  • 人類学とは何か

     人類学とは、ヒトの個体や集団を科学的に研究する学問。

  • 背景としての人類進化

     人類は約700万年前にアフリカで誕生し、20以上の種に分かれ、猿人、原人、旧人、新人と進化した。現在は新人であるホモ・サピエンスのみ。私たち東アジア人は、10万年から5万年ぐらい前にアフリカにいたホモ・サピエンスの子孫。東アジアには、祖先の特徴を止めている南方系と、寒冷地に適応した北方系の2つのタイプがいる。
     アフリカからアジアに渡って、旧人が原人を押しのけ、新人が原人と旧人を絶滅させた。上野の国立科学博物館に300万年前の猿人、160万年前の原人、ネアンデルタール人の復元展示がある。
     日本には、今から4万年くらい前に、南から北からいろいろなホモ・サピエンスの集団がやってきた。

  • 人種とは何か

     アフリカから世界に拡がった人々は気候環境に適応して変化した。人種の違いは表面的なもの。
     独立した生活集団で、解剖学的に形質が違い、交雑できないときに、別の種と見なされる。種を分けると亜種になる。
     人種は亜種。ニグロイド、モンゴロイド、コーカソイド、(アフリカ系、アジア系、ヨーロッパ系)。4つに分けると、オーストラリア先住民(アボリジン)が入る。
     もう1つ民族というのは文化的な概念で、帰属意識によって分かれる。なので、言語集団にかなり近い。
     日本人には3つの民族がある。本土日本人、アイヌの人たち、琉球の人たち。人種的には単一で民族的には単一ではない。

  • 祖先の人類種は混血したか

     ネアンデルタール人は私たちとずいぶん違うので交雑はないと考えられていたが、最新技術で、アジア人とヨーロッパ人にはネアンデルタール人のDNAと共通する部分があった。
     一般的に言えば、近縁な集団の鑑別は非常に難しい。判別しようとする集団の比較資料が多い場合は、判別の可能性が高まる。見つかった骨の個体数が非常に多くて保存状態がよければ、ある程度は可能。しかし、戸山人骨の場合は個体数も多くなく保存状態もよくない。それから遺伝的な特徴に関しては、たまたま稀な特徴が見つかればいいが、簡単にはいかない。

  • 日本人集団の形成史から考える

     東アジア人・日本人の集団形成史を理解し、その中で、問題の人骨を考えてみる。まず、アジア人の顔形を比較する。東南アジアの人は立体的で目は二重。北東アジア人は、平らな顔で目も一重。本土日本人は北に近い。
     サピエンスが4万年ぐらい前にアフリカから日本列島にきた。彼らは祖先の特徴を止め、立体的な顔をしていた。これを受け継いでいるのが縄文人。こういう顔立ちは、世界の平均にも近い。立体的な顔で手足の先の方が長い。
     その後、一部の人々が、35000年ぐらい前にシベリアに入り20000年ほど暮らしたために、手足の先の方が短く、顔が平らで、目も細い北方アジア人が生まれた。彼らはマンモスやトナカイを獲っていた。10000年ぐらい前から気候が暖かくなり、獲物が少なくなったので、南に拡大して、中国人(漢民族)になった。この拡大現象は今も続き、ベトナムやタイの辺りにもたくさんいる。
     北方アジア人たちは、中国北部で農耕技術を獲得、さらに6000年ぐらい前に揚子江の辺りで水田の稲作が始まる。そして今から2700年前ぐらい前から日本列島にくる。進んだ金属器の文化も持ち、弥生時代が始まる。
     もともと日本列島には縄文人がいた。西日本に北方アジア系の人々が入り、どんどん人口を増していく。その結果、本土日本人と言われる私たちの大部分は北方アジア人の影響を受けた。縄文人の遺伝子をそのまま受け継いだのがアイヌの人たち。両者を半々が琉球の人たち。そんなことが、人骨やDNAの研究で分かってきた。つまり、日本には3つの民族集団が住んでいる。先住民であるアイヌの人々の権利の見直しが進んでいる。

(以下、次号に続く)

アンケート結果報告
省略

2012年連続フィールドワーク 第4回 東大と戦争

期日:11月25日
集合場所:東京メトロ湯島駅

【備忘録】

11月4日(日)
中央大学学生9名
戸山ヶ原フィールドワーク

2012.11.16

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