軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』150号・要約

戸山5号宿舎跡地発掘調査結果について

平成23年7月1日
【照会先】医政局国立病院課企画調整官 河内 和彦

    1. 概要

      旧陸軍軍医学校の跡地(新宿区戸山)に埋められたとされる人骨について、その有無を確認するため、諸準備及び事前調査(試掘)を経て4月21日から行ってきた発掘調査が6月30日に終了し、その結果、人骨は確認されなかったものである。

    2. 調査内容
      1. 調査期間

        平成23年2月8日~平成23年6月30日

      2. 場所及び対象面積

        場所:東京都新宿区戸山3-2-4

        面積:304,983㎡

      3. 調査方法

        ①試掘と②本調査

    3. 出土物

      省略

    4. 今後について

      当該地は、国有財産の普通財産であり、今後厚生労働省として使用する予定がないため、所用の手続を経て財務省に引き継ぐことになる。

  • (参考)

    これまでの経緯 省略

排水用土管が新たに出土
厚労省が5月30日と31日に現地で説明会を開催

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

 戸山5号宿舎跡地に人骨が埋められているか否かを確認するための厚生労働省による調査が大詰めに差し掛かった5月30日と31日、発掘現場で見学会が行われた。河内和彦企画調整官が試掘調査からこれまでの本調査の経緯を説明した。
 調査は2月21日から行われ、軍医校時代のコンクリートの基礎が出土。湧水対策や東日本大震災の影響もあり、翌年度に繰り越して6月末まで調査を延長した。これまでの調査で人骨や人体標本に関連する遺物の出土はなかった。
 発見された遺物は主に軍時代に使用されたどんぶりやお椀、皿などの陶器性の食器類約50点。発掘責任者の宇田川調査員によると陶器類は1941年頃の国民食器と呼ばれていたもの。そのほかにインク瓶や薬瓶と思われるもの、注射器やシリンダーなども発掘されていた。
 出土品を見たのち、見学者はC1地点の発掘状況を見学した。そこには南北10メートル以上にわたって伸びている土管状の排水菅が出土。 

(2011年6月)

戸山5号宿舎跡地の現地見学会参加感想

楢崎 修一郎(生物考古学研究所・人類学者)

 現地見学会では厚生労働省の河内和彦氏および藤岡裕樹氏の配慮で、通常は許可されない、発掘区の深堀区まで立ち入ることができた。現地を、積極的に公開する姿勢を評価したい。
 また、現地調査は、テイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部の宇田川肇氏と海野浩幸氏を中心として行われている。特に、宇田川氏は東京都内の江戸遺跡の発掘調査を多数経験しかつ報告書執筆も多数行っており、その調査内容に疑義をはさむ余地はない。
 水分を多く含んでいる状態であることから、人骨が埋葬されていると仮定すれば、十分に残存する可能性が高い。
 できれば、もう少し早い段階での見学会に参加することができればよかったと感じている。

出土した排出管
湧水が出続ける現場
現地見学会に参加して

菊池 実(群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員)

 現場はすでに調査の最終段階となっており、陸軍軍医学校時代の地表面(現地表面ではない)における遺構の検出状況を確認することはできなかった。6号トレンチ東側ゴミ穴から国民食器(陸軍食器)が3月9日に多量に出土していることを考えると、調査の比較的早い段階で当時の地表面が検出されていたのであろう。この段階で一度見学会が行われてほしかった。しかし調査を担当する立場からすれば、段取りや手順を考えると難しかったのであろう。
 国民食器とは、軍用に即時転用可能なものを統一規格による大量生産で民間に流通させると同時に、戦時統制の精神を徹底させる道具でもあった。陸軍徽章の☆印が描かれた陸軍食器、軍需工場で使用された工場食器などがある。外面口縁部に二条の緑灰色の横線が描かれ、高台内には「岐○○○」の生産者別表示記号が印されている。これから生産者の特定が可能である。また個人名を記した湯飲み茶碗も出土している。調査報告書ではこれらの遺物実測図や写真の掲載をお願いしたい。調査区の面積は当時の敷地全体からすれば僅か。今回の調査結果をもって人骨の有無が解決されたものではないが、情報は事実を完全には伝達できないということも考えなければならない。

☆印の中に「醫校」の文字
生産者別表示記号
「東一」は東京第一病院の略称
戸山5号宿舎跡地発掘調査終了にあたってのコメント

発掘終了後、初の厚労省交渉

鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)

 7月7日、厚生労働省医政局国立病院部の河内和彦氏、松田優樹氏と懇談、今回の発掘調査の概要と結果について、正式に報告を受けた。

現地見学会配布資料
発掘当初に発見されたコンクリート基礎
河内氏と松田氏

新聞記事
東京新聞:「新たな人骨 見つからず」《2011年7月2日(土)》

夏目坂から軍医学校跡地へ
新たなフィールドワークの可能性を探る

~「第9回語り継ぐ東京大空襲・新宿の戦争遺跡めぐりとトーク集会について」に参加して~

鳥居 靖(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会・事務局長)

説明する檜山さん
銃刀、軍刀等が所狭しと並ぶ
檜山ミュージアム

 6月12日、午前中は都営地下鉄大江戸線牛込柳町駅に集合。檜山ミュージアムを主催する樋山紀雄さんの案内でフィールドワーク。午後は新宿文化センターに於いて、鳥居が人骨問題について報告した。他は文化資源学会会員の春日恒男さんから「戦争遺跡保存の意味と市ヶ谷記念館」について、牛込区高齢者クラブ連合会会長の中陣正雄さんから「新宿空襲体験」について。

喜久井町観音
戦災供養観音像

(注:ニュースの中で「樋口」とあるのは「檜山」の誤りでした。お詫びして訂正します)

人骨発見22周年「戸山人骨発掘調査報告会」

日時:7月17日(日)
報告:川村 一之(人骨の会・元新宿区議)
コメンテーター:菊池 実(群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員・考古学)
会場:ウィズ新宿

訃報

奥村和一さん(享年86歳)が5月25日に、堤順子さんが6月20日に、それぞれ逝去。
お二人のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。

2011.7.10

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