The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College
大竹 一郎
7月18日(日)、「専門家にきく! 軍医学校跡地の発掘調査で何がわかるか」が開催。
冒頭、人骨の会の川村一之氏が経過報告。
続いて、佐倉鑑定作業にも助手として参加した人類学者の楢崎修一郎氏から、「人骨問題、人類学の立場から」と題して、以下のようなお話があった。まず、人体人骨の特徴と、人骨から得られる情報(性別、死亡年齢、死因など)、遺跡発掘の際に出土した人骨の取り扱い上の注意などの一般論があり、それから八九年に出土した戸山人骨の調査の様子とこれから出土が予想される人骨(人体標本)の発掘調査に期待されることを整理して、「あらゆる可能性も考慮しつつ、先入観を廃し、できる限り中立の立場で科学的冷静さを保ちながら望むことが重要」と指摘した。
続いて、多くの戦争遺跡調査を行ってきた菊池実氏から、「考古学の立場から」と題して、お話があり、最終的に報告書が刊行されなければ、調査は未完結である、等の説明が為された。
質疑応答では、東京都で埋蔵文化財の調査経験のある参加者から、オープンな調査、学際的な調査。検証に耐えうる考古学的な調査を求める声、また、調査主体はどこか、との質問がなされた。これに対し、川村氏から、調査主体は厚生労働省であり、人体標本が埋められているかどうかを確認するために掘る。埋蔵文化財が出てくれば、東京都も調査に加わる事になる、との説明がなされた。
最後に、集会アピールを採択し、今後の発掘調査を見守る行動を提起して、集会を終えた。
2010年7月18日
私たちは今日、1989年に旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨の真相究明を求めて発見21周年の集会を開催しました。
私たちは、今回の発掘調査が、新宿戸山の人骨問題の真相究明に繋がるよう、関係各省に以下のことを要求します。
記
人骨発見21周年集会「専門家にきく!軍医学校跡地の発掘調査で何がわかるか」参加者一同
省略
以下、人骨発見21周年集会の講演記録を数回に渡って掲載。
川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)
人骨と言うが本当は死体。身元の確認と遺族への返還が目標。そのためにきちんとした鑑定、文献調査、そして「軍陣医学」の実態解明が必要。
今度調査する地点は、元看護師・石井十世さんの証言が発端。2001年、厚生労働省は国の責任を認めて、現状のまま保管するという報告書を出したが、石井証言は無視された。私たちの粘り強い努力の結果、2006年、ようやく石井さんの証言を当時の川崎厚労大臣が聞きとり、再調査が決まった。ただ、調査地点には医療センターの宿舎がある。今年、職員の方が全員退去されたので、今年度から撤去工事を始めて、実際の調査に着手する。
発掘調査に当たっては、厚生労働省が公開して調査をするということに尽きる。それに並行して、陸上自衛隊衛生学校に70個ほど保管されている陸軍軍医学校時代の標本の調査、保管されている人骨の新たな知見に基づいた科学鑑定も必要。
文献では、森村誠一さんの『続 悪魔の飽食』の記述と下里正樹さんという『赤旗』の記者の記事では、少しずつ記述が違う。もう一つ、遺棄されたものには医療器具とか書類がある。これは身元確認に繋がる可能性もある。考古学的な調査が必要。
今日は、お二人の専門家から発掘調査でどういうことがわかるかということを中心にお話ししていただく。私たちも勉強しながら厚生労働省に専門家の意見を伝えて、きちんとした調査が出来るようにしたい。
これから一年間、また僕たちの人骨の会は地味にコツコツと厚生労働省に言って行く材料がお二人から得られるのではないか。今回の調査は、たかだか100年くらいの間の人間の骨。
『科学』という雑誌で日本人のルーツを探る研究があった。面白かったのは、四万年前の中国では淡水魚が利用されていた。これは骨に含まれる炭素や窒素の分析でわかる。なぜ中国人の事をと思うかもしれないが、7万年前にアフリカから分かれてアジアに来て、日本人なんて特別にあるわけではない。日本人のルーツを見るというのは、アジア全体で見る必要がある。今日二人の専門家の話も、そういう背後の大きな歴史の流れがにじみ出てくると思う。
(次号に続く)
毎日新聞夕刊(一面):厚労省発掘調査へ 《2010年7月8日(木)》
東京新聞(山手版):今秋の調査、公開を 「究明する会」がアピール《2010年7月19日(月)》
根岸 恵子
8月4日、厚生労働省と交渉を行った。厚生労働省の出席者は、大臣官房会計課施設整備室・渡辺久志営繕専門官、医政局政策医療課から河内和彦企画調整官、西岡雄飛運営管理係長、佐生啓吾予算係長の四人。人骨の会からは、常石代表以下、川村、渡辺、石川、奈須、鳥居、根岸。
交渉はまず21周年集会アピールを常石代表から厚労省に手渡し、考古学的な埋蔵文化調査をしてほしいと要望した。
これに対して河内企画調整官・渡辺専門官は、まずは解体撤去。発掘して、骨や埋蔵文化財が発見されれば適切に調査をする。公開については隠すつもりはないが、安全管理はしなくてはいけない、とのこと。
<資料> 厚生労働省配布資料 入札説明書 (解体工事完了は11月19日)
9月26日(日)
大手門前集合
講師:長谷川 順一
第三回「陸軍士官学校」:11月21日 市谷駅改札口
第四回「上野戦争の戦跡」:2011年1月23日 上野駅公園口改札口
2010.9.5
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