軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』143号・要約

厚労省、新たな「人体標本」発掘調査へ始動
~東京都、新宿区と協議を開始~

川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)

 厚生労働省は五月の連休明けに、旧戸山五号宿舎周辺の「人体標本」発掘調査を行うため、地元の東京都や新宿区と協議を開始した。厚労省医政局政策医療課・河内和彦企画調整官が申し入れ、新宿区からは埋蔵文化財を担当する地域文化部文化観光国際課の山田秀之課長が出席、山田氏は調査目的が達成される調査方針を示して欲しいと要望。

 今回の調査にあたって、証言や記録などの基礎的なデータを整理すると、第一に石井証言、第二に森村誠一著『続・悪魔の飽食』(1982年7月20日)の記述、第三に下里正樹記者による『赤旗』1989年7月31日の記事がある。

社会的に注目されている調査なので、調査目的をはっきりさせ、調査方法などを公開し、公開調査を行うべき。また、出土品などを細かく記載した調査記録を作成し、報告書にまとめることを最低限行ってもらいたい。

 人体標本が発見された場合には、その保存と鑑定の方法を専門家にゆだね、関連する異物がないかどうか、器具や書類などを入念に調査し、人体標本の身元確認への手がかりがないかどうか、また標本の作成から遺棄までの年代特定ができる資料がないかどうかの徹底した調査が行われるべき。調査主体の厚生労働省はもちろんのこと、東京都や新宿区も共同で調査にあたるよう要望する。

(2010年6月16日 記)

  • 発掘調査の担当窓口
    • 厚生労働省 医政局 政策医療課
      • 河内和彦 企画調整官
        • 電話 03-3595-2261/Fax 03-3501-5712
      • 佐生啓吾 予算係長
        • 電話 03-3595-2261/Fax 03-3595-2261
    • 新宿区 地域文化部 文化観光国際課
      • 山田秀之 課長
        • 電話 03-5273-3807/Fax 03-3209-1500
    • 同 文化資源係
      • 栩木 真 主任主事・学芸員
        • 電話 03-5273-3563/Fax 03-32091500
平成22年 第2回定例会一般質問要旨
(新宿区議会 6月10日)

かわの議員(社会)

  1. 今年度、厚生労働省と新宿区との話し合いは、いつ誰とどのような話し合いが行われたのか。
  2. 宿舎はいつごろ解体工事が行われる予定なのか。
  3. この土地は、江戸時代は尾張藩の下屋敷があった埋蔵文化財の包蔵地。文化財の保護・発掘という点から新宿区の考えは。
  4. 調査の公開は、調査方法の公表と合わせて不可欠。国と十分連携をとり、安全に配慮しつつも調査の公開はしっかりと行うべきだと思いうが、どうお考えか。
  5. 最後に、総合運動場の整備について。様々な調査を前提とするが、早急に整備計画を策定し、総合運動場の整備促進を図るべき、どうお考えか。

答弁要旨

担当・地域文化部文化観光国際課:山田 秀之 課長

本年5月に厚生労働省から申し入れがあり、厚生労働省、国立国際医療研究センター、東京都、新宿区の四者で当該調査についての打合せを行った。

そこでは、22年度の国の予算で当該調査に要する経費を措置し、国として調査する旨、説明があり、当該調査に伴う文化財保護法の手続きについての意見交換をした。 当日の意見交換を踏まえ、解体工事を含む今後の調査全体の行程については、あらためて厚生労働省から考えが示される。当該土地は、尾張徳川家下屋敷跡の一部であり、埋蔵文化財保護法に基づく発掘届が提出された際には、遺跡の保護、保存が図られるように、区として、しっかりと申し入れをする。人体標本発掘調査についても、調査の目的が達成される適切な手法で、十分な調査を行うよう、区として申し入れを行う。

次に、総合運動場の整備について。今年度、厚生労働省が予算措置している人体標本発掘調査の結果によっては、総合運動場に関する東京都公園整備事業の計画に影響が出る可能性があるので、平成23年度に策定を予定していた新宿区の「総合運動場整備計画」については、調査結果を踏まえた上で再検討。

新聞記事

沖縄タイムス:
遺骨が語るもの▼2 国に欺かれた殉死・新たな屍拒否する沖縄《2010年6月10日(木)》

連続フィールドワーク第一回

篠突く五月雨の中を多くの方が、
しょうけい館、九段会館、靖国神社、遊就館を見学

大竹 一郎

 五月雨に煙る5月23日(日)午後、長谷川順一氏による九段周辺の戦争遺跡の解説・見学会を開催。25名の参加。

 しょうけい館は、日中戦争・アジア太平洋戦争で、戦傷病者の労苦についての証言と歴史的資料等を収集・保存・展示し、後世に、戦争の惨禍を「承継(しょうけい)」する厚生労働省の施設。

 二階の洞窟内野戦病院のジオラマは、戦争の現場をよく伝えている。その裏には、病院船時代の氷川丸が、夜間海峡を航行している模型がある。最近、火野葦平、田村泰次郎、大岡昇平等の戦争文学の傑作を読むようにしているが、病院船で搬送されている方々の船内生活を描いた作品は見あたらない。

 靖国神社は、国家のために一命を捧げられた人々の霊を慰め、その事績を後生に伝えようと明治2年に明治天皇によって、東京九段のこの地に創建された東京招魂社が起源で、明治12年に靖国神社と改称された。遊就館の入り口付近に、軍用馬、軍用犬と軍用鳩の慰霊碑が建っている。日中戦争時に前線へ補給する軍需物資(輜重)の輸送手段は、軍用馬か人力であり、中国大陸等へ渡った軍用馬約100万頭、その後、日本へ帰り着いた軍用馬は一頭もいなかったという。遊就館内には、三八式歩兵銃から零戦、彗星、特攻兵器の桜花、回天まで武器が展示されている。本土上陸作戦に備えて、「特攻兵器、伏龍」の訓練が、昭和20年に真剣に行われ、殉職者も出たとの展示がある。最初の神風特別攻撃隊が発進した昭和19年10月時点で、日本は連合軍に完敗であったのであり、海軍史研究家、戸高一成氏によると、この時点で講和・和平を言い出す大本営参謀は一人もいなかったとのことであるが、この時点で講和・和平になっていれば、3月10日の大空襲、沖縄戦も無かったであろうし、広島・長崎ももちろん無かった。

病院船・氷川丸の模型
雨中に煙る軍用馬慰霊碑
人骨発見21周年集会
専門家にきく!
軍医学校跡地の発掘調査で何がわかるか

日時:7月18日(日)午後1時開場/1時30分開始
経過報告:川村 一之(軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会)
パネル・ディスカッション
コーディネーター:常石 敬一(神奈川大学・科学史 『骨は告発する』著者)
人類学の立場から:楢崎 修一郎(生物考古学研究所・人類学者)
考古学の立場から:菊池 実(群馬県埋蔵文化財調査事業団主席専門員)
会場:ウィズ新宿
資料代:1000円

2010.7.4

定期購読者募集のご案内

年間4~6回発行している『究明する会ニュース』の定期購読をお願いしています。お申し込み詳細は【定期購読者募集】のページをご覧ください。
inserted by FC2 system