軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』131号・要約

人骨発見19周年集会
「国に問われる責任~つぐないか、救いか~」

7月21日
新宿歴史博物館講堂
資料代1000円
パネリスト
佐藤健生(ドイツ強制労働補償基金)、浅倉美津子、泉祐子(薬害肝炎訴訟)、神美知宏(ハンセン病問題基本法)、川村一之(人骨問題)

神奈川大学STSフォーラム
「戦後日本医療犯罪史の原点―京都・島根ジフテリア予防接種禍事件」

 1948年に京都と島根で起きた「ジフテリア予防接種禍事件」は、占領下の日本で起きた死亡者84人という世界最悪の薬害事件。昨年11月17日、神奈川大学で開かれたSTSフォーラムは被害に遭われた田井中克人さんをお招きしてその実態や経過、当時の厚生省の対応などについてお話をうかがう。田井中さんは後遺症と闘いながら長年勤めてきた高校を辞め、事件の解明に奔走する毎日を送っている。

父の「備忘録」
 田井中さんは事件後54年経って、父親が亡くなり遺品を整理しているときに、朝日新聞の縮刷版を見つけた。当時の「天声人語」にジフテリア予防接種禍について書かれたものを発見し、それが重大事件であったことを知った。後日母親は一冊のノートに綴られた父の「備忘録」を出してきた。それをきっかけに当時の文献を探し、被害者遺族のお宅を一軒一軒訪ねた。
 「被害者の心は癒されることはないのに、薬害は繰り返されている」。田井中さんは憤る。

GHQの指導下、事件は起きた
 ジフテリアは日本では15年戦争から戦後までに栄養不良などが原因で増加し、1945年には86,000人の患者が発生し、8,000人が死亡している。GHQ保健福祉局は46年2月に予防接種実施の命令を出し、48年7月に「予防接種法」制定、その年の10月と11月にジフテリアの予防接種が実施される。

七三一部隊関係者が関与?
 ジフテリアの予防接種は、細菌の出す毒素をホルマリンで無毒化したものを使う。事件を起こしたワクチンは大阪日赤医薬学研究所が製造した。事件を調査した京都府衛生局は「京都ジフテリア豫防接種禍記録」を発行。GHQの指示があったかもしれない。直接事件を起こした工藤と調査記録を残した大田黒は、いずれも七三一部隊関係者。

なぜ事件は起きた?
 ワクチンは、設備の整わない工場でずさんな管理体制の下、つくられた。問題は厚生省の検査の過程で、合格は26しかなかったものをGHQの圧力で出荷してしまった。医療に携わる側の人命を預かるという意識の薄弱さと、厚生省の国民の命よりGHQの顔色という意志の弱さが一番の弱者である幼児への甚大な被害を出してしまった。

明らかになる事実と薬害を隠蔽する厚生省の体質
 被害は京都で起こる。最初の一報は48年11月8日。最終的に68名の死亡者と538名の被害者をだした。島根では京都の被害報告を受け、いったん接種は中止になるが厚生省の誤った判断で再開、結局島根では死亡者16名、被害者324名を出す。
 予防接種を実施した責任はすべて接種を指導、命令した厚生省にある。杜撰な検査で殺人ワクチンを認可したのも厚生省。当時、「民事訴訟が起こされ場合は国の敗訴は確実である」として、早期の見舞金の支給を促した法務省の見解が残っている。厚生省はすべての罪を大阪日赤に押しつけて責任逃れをした。

圧力
 厚生省の責任が問われるニュース報道が削除された。これにはGHQも一枚噛んでいる。死者が出ても予防接種を続けるというGHQの強圧な態度とそれに服従する厚生省の構図がわかる。

終わりに
 田井中さんの本の中に16番目の被害者の父親が残した「回想」が載っている。亡くなられた息子さんは2歳。
「注射を受けなかった者が果たして三千円の罰金を取られたのか。正直に受けた者は尊い命を取られた。残念に思う。毒液を注射されたあの場合、最も適当な処置を早急に行わず、一一月十七日頃医師に毒素浄化を頼みしも時期遅しとして行わず、遺憾に思う。人間の生命を尊しとしない責任観念のない薬製造者並に検査官の最も重い罰を願う。後々注射を受ける全人類の為に!」

防衛省が自衛隊衛生学校「彰古館」の標本リストを提出

 防衛省は6月11日、郡和子衆議院議員が要求していた自衛隊衛生学校「彰古館」の標本リストを提出した。「彰古館」の人体標本は主に陸軍軍医学校が作製した標本が戦後国立東京第一病院で保管され、その後自衛隊衛生学校に移管されたことが関係者の証言などで分かっている。特に注目されるのは陸軍軍医学校病理学教室が作製した病理標本との一致である。しかし、残念ながら「彰古館」の人体標本の多くは関連資料がなく、作製年や衛生学校が受け入れた年月日などの標本履歴を示すものがなかった。
 今後は標本履歴も含めて資料調査を継続し、人体標本の作製過程や軍陣病理学の実態に迫る必要がある。

第169回国会質問議事録

参議院厚生労働委員会
4月10日(木):谷博之議員(民主) 議事録

【 ウェブサイト:参議院インターネット審議中継

衆議院厚生労働委員会
5月14日(木):郡和子議員(民主) 議事録

【 ウェブサイト:衆議院インターネット審議中継

3月13日、納骨施設を追悼
左端が郡議員、右端が谷議員
新聞記事

朝日新聞:ハンセン病法成立《2008年6月12日(木)》

2008.7.6

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