軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

『究明する会ニュース』120号・要約

「人体の不思議展」に異議を唱える研究会:開催

 9月23日、人骨の会で研究会「人体は商品なのか?~『人体の不思議展』から見えてくるもの~」を開催。「人体の不思議展」は2002年から日本全国を巡回展示。標本はプラストミックといい、シリコンなどの樹脂をつかった半永久標本。標本の遺体の提供先が不明、営利目的であるなどの疑問の声が上がっている。研究会には約20名が参加。臨床検査技師の平野さんは、「医療の進歩とは違う方向にある気がする」と発言。常石氏は「臓器を部分部分に分けて考えることは全身医療・東洋的な医療に反する。臓器の商品化の一環に見える」と意見を述べた。

「人体の不思議展」さいたま市要請行動報告

10月4日

 「人体の不思議展」に疑問をもつ埼玉の会(代表 中里武・医師)は、さいたま市に要望を提出。当日、要請行動に参加した春日部市の片山いく子市議は、「本物の人体標本」がどこで、どのように作られたか調査もせず、過去の開催実績や日本医学会など専門家の後援があるという点だけで、イベントに疑問を持たない自治体の姿勢には問題がある。営利目的かどうかも、慎重に判断すべき。自分の身内の死体が、もしこのような展示に利用されることがあったらどうなのか、という視点に立ち返るべき、と感想を述べた。

「人体の不思議展」に関する要望書
主旨
さいたま市に於かれては、「人体の不思議展」の後援を取り下げられるよう強く要望いたします。ご検討のうえ、ご回答願います。
理由
省略

要望書全文
グンター・フォン・ハーゲンス博士の悪名高いボディワールドショーに関する解剖学会の声明書

人骨発見17周年集会:『七三一部隊-虚像と実像』

講演録(2006年7月22日)

スライド1

 今年は七三一部隊創設70周年。僕が『消えた細菌戦部隊』を書いてから25年くらいになる。17年前に見つかった人骨は出てきた場所から言うと七三一部隊のものではない。七三一部隊との関連を言うのはある意味で虚像だった。しかしスライド「17年目の転機」にあるように、人骨が埋まっている場所が一箇所ではないことが分かって、七三一部隊とつながる可能性が出てきた。

スライド2

 左側は「終戦メモ、1946-1-11 石井四郎」、右側は「1945-8-16 終戦当時メモ」と書かれている。一昨年、青木富貴子が入手した、石井直筆のノート。

スライド3

 今日は、右のような順に話す。僕は元々理系の学生で、科学者がどれだけ視野が狭くなれるか、を知りたかった。科学者が本性を表すのは戦争中。自分は日本人なので、戦争中の日本の科学者の振る舞いについて研究した。

スライド4

 「日本における科学情報調査」、いわゆるサンダースレポートにある、防疫給水部の配置図。全体を統括していたのは陸軍軍医学校防疫給水部。

スライド5

 右の表は「防疫研究報告」第二部の第99号からとった。1941年に発表された防疫機関の組織図。

スライド6

 右は戦前、軍医学校の構内図。人骨が見つかった場所がわかる。

スライド7

 右は、「防疫研究報告」第二部に、1940年から45年まで論文を掲載していた研究者のリスト。小島三郎、細谷省吾、内野仙治、小林六造、緒方規雄、柳沢謙など、東大などの教授が嘱託として論文を書いていた。

スライド8

 右は「防疫研究報告」第二部。本当は9冊ないといけないが、第7巻が抜けている。石井は1932年に防疫研究室を発足。ハルビンの南100キロくらいの背陰河に実験場を構え、細菌戦の研究をする。もっとも集中的に行ったのは青酸化合物の致死量の研究。

スライド9

 右は「捜査報告手記」。これは1948年に起きた「帝銀事件」という銀行員が12人殺された事件があり、警察の捜査で、日本軍で毒物を扱っていた旧軍の秘密活動の一覧表が作成される。七三一部隊、第九陸軍技術研究所、毒ガス教育の習志野学校、チチハルの毒ガス部隊… 表は背陰河守備隊の名簿。唖然としたのは、七三一部隊で人体実験の被験者になる人は、健康診断を受けて健康な人が対象になる。僕は実験室で殺す人の健康診断をすることにものすごい違和感を覚えた。健康診断の責任者は凍傷実験などをやっていた生理学者の吉村寿人。

全画像

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―以下次号―

新宿区議会2006年第三回定例会
9月20日:かわの達男議員、人骨問題について質問

  • 《質問》
    •  社会新宿区議会議員団のかわの達男です。「総合運動場の整備促進」について、区長と教育委員会にお聞きします。
       戸山運動広場の総合運動場としての整備は進んでいません。この地に人体標本、いわゆる「人骨」が埋められている可能性が極めて高いことが明らかになり、都がこの土地を買収することを遅らせています。この問題について、区が国の見解を求めてきたが、国は、見解を出さないまま今日まで来ていました。ところが、本年6月24日タ刊の朝日新聞に「人骨、別にも埋めた。新宿・旧陸軍軍医学校跡地、元看護師が証言」と報道されました。元日赤看護婦の石井十世さんは、川崎厚生労働大臣との面談で現国立国際医療センター宿舎と戸山一丁日の若松住宅内の公園地に人骨を埋めたことを証言されました。面談した川崎厚生労働大臣は「標本が埋まっている可能性が高い、戸山五号宿舎周辺を調査する」と明言しました。
       そこで、以下五点にわたってお聞きします。
      •  一点目に、この間の東京都および国、さらに国立国際医療センターと新宿区の話し合いの内容や経緯についてお聞かせください。
      •  二点目は、一刻も早く整備するためにも、川崎厚生労働大臣が約束した「人体標本の調査」に区も協力し、発掘調査が一日も早く行われるようにすべきだと思いますが、ご見解をお聞かせください。
      •  三点目は、東京都も新宿区も戸山公園運動広場の整備方針に変更はないと思いますが、あらためて確認します。
      •  四点目は、人骨等の調査、用地取得そして総合運動場としての整備となれば、完成までにはそれなりの時間もかかります。区の基本計画は今後も引き継がれるものと考えますが、教育委員会の所見をお聞かせください。
      •  五点目は、用地取得は東京都が行うこととはいえ、新宿区長の姿勢にかかっています。用地取得に向けた区長の決意と、総合運動場早期整備にかける教育委員会の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  • 《答弁》
    • 新宿区総務部長 布施一郎
      •  一点目:6月24日の新聞記事について、厚生労働省医政局国立病院課に問い合わせをしました。厚生労働省としては、この問題に関して国立国際医療センターを窓口としたいとのお話でした。その後7月7日に国立国際医療センターの方が来庁ざれましたので、区としては総合運動場の整備促進について基本的な方針に変更がない旨を申し伝えました。また、8月4日に東京都建設局公園緑地部計画課と話し合いをおこない、都としては、戸山公園の整備方針に変わりがない事を確認いたしました。以上がこれまでの経緯。
      •  二点目:一次的には国の施設内での調査ですので、国が対応すべきものと考えます。区としては、その調査の中で協力できるものについては協力していきたい。
      •  五点目:新宿区には広い運動場が無い状況にありますので、総合運動場の整備は重要な課題と考えております。区といたしましては、早期の総合運動場整備促進に向け東京都に強く要望してまいります。
  • 《答弁》
    • 教育委員会事務局次長 今野 隆
      •  三点目、四点目に付いて、教育委員会といたしましては、基本的な方針に変更はありません。国の調査等の推移を十分勘案し、早期の総.合軍動場の整備に向けて、東京都に対して戸山公園の第二段階整備を要望してまいります。

2006.10.24

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