軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

さいたま市長 相川宗一 様

2006年10月4日

「人体の不思議展」に疑問をもつ埼玉の会

代表 中里 武(医師・さいたま市在住)
長内 経男(市民じゃーなる・さいたま市在住)
平尾 晋(元教師・さいたま市在住)
奈須 重雄(市民団体事務局長・越谷市在住)

「人体の不思議展」に関する要望書

《主旨》

 さいたま市に於かれては、「人体の不思議展」の後援を取り下げられるよう強く要望いたします。ご検討のうえ、ご回答願います。

《理由》

 数年前から全国で巡回展示を行っている「人体の不思議展」は、展示されている人体標本や展示方法に各処から疑問の声が上がり、日本医学会は後援を取り下げた経緯があります。

 指摘されている第一の問題点は、生前からの意思に基づく献体によって提供されたとされる人体が、「人体プラストミック標本」とされ、公衆の面前に晒される展示標本となることを生前に承諾していたかどうか疑わしいということです。

 現在の日本では、「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」(以下「献体法」と略す)において、献体の意思を尊重し、死亡した者が献体の意思を書面で示しているならば、「遺族がその解剖を拒まない場合」と「死亡した者に遺族がない場合」との2点に限定して、正常解剖は「遺族の承諾を受けることを要しない」ことが認められています(献体法第4条)。しかし、これは医科・歯科大学(大学の学部を含む)の教育に関する法律であって、一般市民に有料公開される場合を想定したものではありません。まして、展示標本の中には、胎児の標本が数点あり、胎児の意思確認をしたとは思えません。

 更に主催団体の一つである日本アナトミー研究所の安宅克洋氏によれば、「標本は中国の南京蘇芸生物保存実験工場から借り受けたもの」(『週刊現代』48-22,通巻2381,2006年6月17日)とされています。中国で加工された人体標本については、公正な手続きを経ないで人体が提供されているとの指摘もあり、展示で使用するのは倫理的に問題があると思われます。

 第二に展示方法についても、弓を持ったポーズをとった死体、プレート状に水平にスライスされた死体、更には見学者が直接に触れられるものまであり、人間としての尊厳が守られているとは到底思えないことです。

 死体解剖保存法第20条は「死体の解剖を行い、又はその全部若しくは一部を保存する者は、死体の取扱いに当つては、特に礼意を失わないように注意しなければならない」とされ、医学研究や教育の目的で遺体を使用する場合は、最大限の丁重な扱いをすることが定められています。「人体の不思議展」の展示はこの法律の精神から遠くはなれ、礼意を欠いていると考えられます。

 「人体の不思議展」における展示の趣旨は、「人体標本を通じて『人間とは』『命とは』『からだとは』『健康とは』を来場者に理解、実感していただく」と述べられ、人体に関する知識の啓蒙を強調しています。

 しかし、人体の水分・脂肪分をそぎ落として特殊加工された標本は、ロボット風の無機的物体になっており、実際には人体に関する誤った印象を発信しています。このようなデフォルメされた人体の展示は、アニメやゲームの世界との距離のとり方が未成熟な幼児や小中学生対する悪影響が特に懸念されます。

 以上の通り、「人体の不思議展」は人間の尊厳を脅かすものであり、生命倫理上ゆるがせにできない大きな問題であると考えています。したがって、さいたま市に於かれては「人体の不思議展」の後援を取り下げられるよう強く要望する次第です。

以上

「人体の不思議展」に疑問をもつ埼玉の会
【連絡先】
〒330-0063 さいたま市浦和区高砂2-2-6-1103 中里気付
電話&FAX 048-822-0208

会報120号要約へ

保保健3323号

平成18年10月18日

「人体の不思議展」に疑問をもつ埼玉の会
代表 中里 武 様
  長内経男 様
  平尾 晋 様
  奈須重雄 様

さいたま市長 相川宗一

「人体の不思議展」に関する要望書について(回答)

 秋涼の候 ますますご清祥のことと存じます。
 日頃より、さいたま市政にご理解とご努力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、平成18年10月4日付けで提出されました、標記の要望書につきまして回答いたします。さいたま市の名義後援の使用につきましては、申請者から申請された、対象行事の内容があらかじめ定められている基準を満たしている場合に名義後援の使用を承認しております。「人体の不思議展」につきましても、主催者の状況や行事の目的などが基準を満たしており、名義後援の使用を承認したものです。
 ご指摘のありました展示標本に関しましては、主催者である人体の不思議展実行委員会から、標本が正規の手続きに基づく献体であることについて、証明文書により確認しているとの回答を得ておりますことから、本市といたしましては、名義後援承認を取り消すとの判断には至りませんでした。
 また、展示方法につきましては、そのようなご意見があることを受けとめさせていただき、その内容を主催者に申し伝えたところでございますので、よろしくご理解を賜りますようお願い申し上げます。

担当:保健福祉局保健部健康増進課管理担当
TEL 048-829-1293
FAX 048-829-1967
〒339-9588 さいたま市浦和区常盤6-4-4

会報121号要約へ

inserted by FC2 system