The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College
1989年7月22日~ | 人骨発見後、新宿区は厚生省(当時)に再三身元確認調査を要求。 厚生省は「速やかな焼却・埋葬」を求め調査を拒否。 |
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1989年9月21日 | 山本克忠新宿区長(89年当時)は、区議会本会議で、人骨鑑定を区独自で行うと約束、鑑定人の選考に入る。 しかし、国立科学博物館、聖マリアンナ大学、慈恵会医科大学などからは次々に断られ、鑑定の実現は一旦は暗礁に乗り上げた。 |
1991年 | 国立科学博物館人類研究部長・佐倉 朔(さくら はじめ)教授が博物館を退職し、私立大学の札幌学院大学に転職。 これを機に改めて鑑定を依頼。ようやく内諾を得ることができた。 |
1991年8月31日 | 新宿区は佐倉教授に正式に鑑定を委託。 |
1991年9月~ | 北海道と東京を行き来しながらの佐倉教授の人骨鑑定が始まる。 |
1992年3月30日 | 佐倉氏から新宿区に「戸山人骨の鑑定報告書」、いわゆる『佐倉鑑定』が提出された。 |
1992年4月22日 | 新宿区は記者会見を開いてこれを一般に公表、その内容が明らかにされた。 |
究明する会では、公表直後に同報告書を分析。
「外国人のもので、殺人の被害者となった人のものが相当数含まれることが明らかになった」(常石敬一著『骨は告発する―佐倉鑑定を読む』より)のであり、「普通法治国家においては…その身元の確認と殺人(犯罪)の内容を明らかにするのが常識である。」(同書)と、判断した。
以上の結果は、発見された「人骨」は戦争との関係が極めて濃厚となったことを示している。それにも拘らず、新宿区(小野田隆区長)は731部隊との関連は見出せなかったとし、焼骨・埋葬の方針を固めた。
一方、厚生省は、鑑定結果が出る直前に人骨の由来調査に取り組むことを表明した。
緒言P.1~P.3
人骨資料の概観P.4~P.6
鑑定の方法と有効性P.6~P.9
戸山人骨の形態P.9~P.12
血液型P.12~P.13
人骨の経過年数P.13~P.14
人為的加工P.14~P.16
人骨以外の異物P.16
要約P.16~P.18
戸山人骨の鑑定報告書
第9章 要約 P.16~P.18
戸山人骨の鑑定結果を要約すると次のとおりである。
保存状態と風化の程度は個々の骨によって大きな差異がある。ほぼ完形ののこるものもあるが多くは破片である。骨質の差異は主として土中に埋められる前の処理条件に関係していると推測される。フォルマリン等によって固定されたものはもっとも骨質の保存が良く、乾燥標本であったものはこれに次ぎ、他はより風化が進んでいると考えられる。若干の骨は軟部を伴う。
保存状態に差はあるが、すべて土中においてほぼ数十年以上、百年以下程度の期間経過したと想定して矛盾はない。しかし土中埋没以前の経過年数については推定できない。
大部分は頭骨およびその破片で、その他に比較的少数の躯幹骨と四肢骨を含み、部位はかなり全身的である。
数量は、頭骨では比較的大きな部分の残るもの48個のほか、前頭骨を主とする破片14個などの多数の破片があり、体骨では脊椎骨約30個・大腿骨13個、脛骨個17個、その他がある。より詳細な数量は第2章2の記述にゆずる。
個体数の正確な推定は困難であるが、頭骨のうち前頭骨に着目すると少なくとも62体分は存在する。しかし破片の数から見て、全個体数はおそらく100体以上にのぼると推測される。
性別は頭骨を主として推定すると、約3対1の比率で男性が多い。年齢は大部分が成人であるが、少なくとも1体の未成年者が存在する。成人のうちの年齢階層は不確実であるが、壮年が大部分を占め、熟年ないし老年は少数であると考えられる。
顔面等の人種特徴から、大部分はモンゴロイドに属すると推定されるが、モンゴロイド中の特定の人種に同定することは不可能である。また変異性が大きいので、かなり異質な集団に由来する個体が混在していると推測される。日本人が含まれていることもあり得るが、少なくとも一般日本人集団の無作為標本ではない可能性が大きい。
10数個の頭骨に、ドリルによる穿孔、鋸断、破切などの人為的な加工の痕跡を認めた。そのうちには、脳外科手術の開頭術に類似するもの6例、中耳炎の根治手術に類似するもの2例等があり、これらは頸部で切断された死体の頭部に対して実施されたものと推定される。
頭骨の損傷としては、切創および刺創のあるもの1例・銃創の疑いのある痕跡をもつもの1例が認められた。
四肢骨のうちには骨体のいろいろな位置で鋸断されたものが多い。これらの意味は明らかではないが、軟部が付着していた可能性がある。
晒し骨の乾燥標本として使用されたと推定される保存良好な1体分の体部骨格が存在する。
以上
人骨のうち、主要なものに、部位によるローマ字の分類記号と番号を付け、とくに頭骨については保存状態をも考慮して細分した。分類別の骨の数量は次のとおりである。
A | (完全に近く、頭蓋冠、顔面、下顎ののこるもの) | 一〇個 |
B | (頭蓋冠、顔面は残るが、下顎のないもの) | 一八個 |
C | (頭蓋冠のみ) | 二個 |
D | (頭蓋冠の一部) | 一八個 |
F | (前頭骨を主とする破片) | 一四個 |
O | (後頭骨を主とする破片) | 一五個 |
M | (上下の顎骨) | 六個 |
U | (上顎骨) | 一四個 |
L | (下顎骨) | 三五個 |
その他破片(頭頂骨、側頭骨、歯等を含む) | 多数 |
脊椎骨PV | 約三〇個 |
肋骨PC | 一三個 |
大腿骨PFe | 六個 |
頚骨PT | 一七個 |
その他(上肢骨、骨、足骨等) | 若干 |
以上、「戸山人骨の鑑定報告書」(佐倉鑑定)から抜粋
(鑑定書の内容については究明する会発行・「骨は告発する-佐倉鑑定を読む-」に全文掲載)