軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨問題の解明に関する陳情

2003年6月5日

新宿区議会議長
山添 巌 様

軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

代表 常石 敬一

要旨

 新宿区議会におかれましては、1989年7月22日に旧陸軍軍医学校跡地(当時の国立予防衛生研究所建設現場・現国立感染症研究所)で発見された人骨(以下、「89年人骨」という)に対し、その鑑定および保管にご努力されてこられたことに敬意を表します。この「89年人骨」は2002年3月、「新たな調査の手がかりが得られることもあり得ることから、現状のまま保管する」との厚生労働省の方針に基づき、厚生労働省が新宿区より引き取り、国立感染症研究所敷地内につくられた保管施設に安置されています。
 私たち「軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会」(以下、「究明する会」という)としましては、人骨問題の真相を究明し、国際人道的な解決を図るために政府に対し、第1に保管されている「89年人骨」の身元確認調査と第2に隣接する旧防疫研究室跡地の「新たな人骨」問題の調査を要望しております。
 私たちが要望している第2の「新たな人骨」問題の調査が必要な旧防疫研究室跡地は、新宿区民が建設を望んでいる都立戸山公園内の総合運動施設予定地にあたります。
 特に、関係者の証言によると、敗戦直後に陸軍軍医学校防疫研究室が保管していた標本類が埋められた場所は、総合運動施設予定地内にある現在の国立国際医療センター所有地ということです。
 つきましては、新宿区議会として、旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨問題の解明のために「89年人骨」の保管場所を訪れるとともに、旧防疫研究室跡地の現地を調査され、厚生労働省並びに国立国際医療センター対して、「新たな人骨」問題の調査を行うよう意見書を提出していただくよう陳情いたします。
 新宿区議会が「新たな人骨」問題の調査に尽力され、一刻も早く総合運動施設が建設されるよう努力されることを期待するものです。

理由

 戦時中の未解決問題は、第一義的に日本政府である内閣が責任を持つべき課題であると考えています。陸軍軍医学校が関与した一連の「人骨」問題についても、陸軍軍医学校の施設を引き継いだ現在の厚生労働省が調査にあたるべき課題であり、その総合調整は内閣官房が責任を持つことがなくてはなりません。
 「人骨」が発見されてから10数年、政府は新宿区にその責任を押し付けてきました。その間、新宿区は「人骨」の鑑定を行い、満州第731部隊による中国の被害者遺族から「人骨」の保管についての要望があり、「人骨」をダンボールから桐箱に移し変えて保管するなど「遺骨」として丁重に管理してきました。
 国際的な関心の高まりの中で、厚生労働省は「土地の管理者」との立場から「人骨の由来調査」を行い、2001年6月にその結果を発表しました。
 厚生労働省の調査は、新宿区が行った鑑定と陸軍軍医学校関係者へのアンケートと聞き取り、文献調査に限られていますが、「89年人骨」が戦争に関係しており、敗戦に際して「国が処分した人体標本に由来すると推測される」と結論付けています。このことを踏まえるならば、政府が戦時中の未解決問題として新たな視点から再調査を行う必要があることは明白です。保管している人骨の法医学的鑑定やDNA鑑定などの科学的な再鑑定を行うとともに、厚生労働省以外の陸軍軍医学校の資料を保管している防衛庁などの協力を得て、身元確認調査を行うことがなければなりません。
 そして、その調査の一環として指摘されている旧防疫研究室跡地の「新たな人骨」問題の調査が不可欠です。厚生労働省の報告では「調査では、近隣にも標本が埋められたと聞いたとの回答が得られたが、伝聞による1名からの回答にとどまり、遺骨が埋まっている可能性のある場所も特定されていない。このため、厚生労働省が管理する土地を含め、現に得られている情報からは、発掘調査の必要はないと考えられる」としています。
 しかし、「究明する会」は陸軍軍医学校の元看護婦の方から、「軍医学校の元幹部より、標本類を埋めた場所を進駐軍に掘り返されると困るので埋めた場所の上に官舎をつくって住んでいる」との証言を得、住宅地図でその幹部宅を特定しています。その場所は、旧防疫研究室の西側、現在の国立国際医療センターの宿舎及びテニスコートに間違いありません。厚生労働省は発掘調査によって「新たな人骨」が出てくるのを恐れているとしか考えられません。
 私たちは、戦前戦中の陸軍軍医学校の歴史事実を明らかにするためにも、「89年人骨」の調査のためにも旧防疫研究室跡地の調査は欠かせないと考えます。
 この調査が行われることによって、新宿区民が望んでいる総合運動施設の建設が進むことになります。

 よって、新宿区議会が英知を持って旧陸軍軍医学校跡地で発見された人骨問題の解明に取り組まれることを要望します。

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人骨問題・答弁記録

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