軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

第123回 国会 厚生委員会第2号
平成四(1992)年二月二十七日(木曜日)午前十時一分開議

質問者鈴木喜久子衆議院議員
回答者寺松尚厚生省保健医療局長
多田宏厚生省援護局長
末次彬社会局長
山下徳夫厚生大臣

鈴木(喜)委員
 鈴木喜久子ですけれども、初めて厚生委員会で質問をいたします。よろしくお願いを申し上げます。
 去年の予算委員会の分科会、一九九一年の三月十三日、それからその前日であります三月の十二日の法務委員会、その両方を通じまして、新宿区というところにあります旧陸軍の軍医学校の跡に、今現在厚生省の国立予防衛生研究所というものがもうすぐ建ち上がるという形で建設をされております。その建築現場でございますけれども、その敷地の片隅から白骨が三十五体、かなり異様なものでございますし、ただばらばらとではなく整然と入っていたらしいのですが、その部分についてそういった形で人骨であるところの白骨が出てまいった。もうこの事件は既に三年ぐらい経過しておりますが、そのことについて質問をいたしました。そのときに御答弁も数々、法務委員会も、また厚生の分科会でもいただきましたけれども、またその後の経過、動きもございますでしょうから、その点について伺っていきたいというふうに思います。
 私がその分科会の中で厚生省にお尋ねをした部分でございますけれども、ここは旧陸軍の軍医学校の跡でございまして、その後に厚生省が管理をされ、建物の中も利用されていたわけでございますが、それは昭和二十年以降、終戦以降のお話だということで、その前の建物の配置が一体どうなっていて、そこにはかなり軍の人体実験やら細菌戦の実験やらがされていたと言われている建物やら、そういった研究所があった。その敷地の中の配置図等があるようであれば、また、何らかの手がかりになるような資料があればお出しいただけるというお約束をいただいているのです。それについてなかなかそういうものが手に入らないということでございましたが、この点はいかがになりましたでしょうか。

寺松政府委員
 今先生から御質問いただきました点でございますけれども、前回の予算委員会の分科会で御質問いただきまして、私がそれでは調べてみましょうと、こういうお話をしたと存じます。
 私ども、これは先生御承知なんでございますが、旧陸軍の軍医学校から土地等の管理を引き継ぎました。これは国立医療センターが引き継ぎまして、それをそのセンターから今度は国立健康・栄養研究所に対しまして引き継ぎを受けておるわけであります。そこで、これに関連いたしまして、旧陸軍軍医学校当時のいろんな関係資料というものにつきまして私どもも鋭意調べさせていただきましたのでございますが、いずれの機関におきましても該当するようなものを引き継いでいないということでございます。したがいまして、きょう先生の方にお示しすることができない、こういうわけでございます。

鈴木(喜)委員
 これを出されないというと、どういうところを一体お調べになって、その上でないという結論が出せたのでしょうか。その点も具体的にお知らせいただきたいと思います。

寺松政府委員
 私ども、今申し上げたとおりでございますけれども、国立医療センター、それから現在の国立健康・栄養研究所と申しておりますが、その辺の機関を調べたわけでございます。

鈴木(喜)委員
 この問題に関しましては、後でもお話しいたしますけれども、一体こういうことを調べたり、この人骨を一体どのようにするのか。これから先、これはどなたかが異常な形で亡くなられていることは間違いがないのですが、やはり眠るべきところに安らかに眠らせてあげなければいけないし、そういった形できちんとした始末をつけなければいけないんだけれども、一体どこがそれをやるのかということについていろいろと厚生省の中でもお話がぐるぐるしまして、どこも受け手がない、こういったことがあったわけでございます。
 昨年私がお伺いしたときに、資料を探してみましょう、こういうものがあったら出してみましょうということは、その医療センターでありますとかそこにあるものだけをちょろちょろっと調べるということではなくて、もう少し責任を持って各軍、旧陸軍の関係でありますとかそういうところもお調べいただく、そういうことを厚生省の中で、部局はどこの管轄になるかということとはその時点では関係なく、厚生省としてひとつやっていただけるということで私たちは大変な希望を持ったわけでございますけれども、ただいま伺いますと、センターの中を見ましたということでは、それは今まで私が質問する前にもやられていたことではないか、このように思いますが、この点、例えば他の省庁、防衛庁の資料でございますとかそういうものはお調べいただけなかったのでしょうか。

寺松政府委員
 人骨が出た場所が私どもの健康・栄養研究所の敷地の中でございますから、もしもそれに関連するとすれば、それを引き継ぎました国立医療センター、あるいはそれを引き継いだ健康・栄養研究所というものが一つ何かあるのではないかと思うのが当然だと思いますし、それはやったわけでございますが、今先生がおっしゃいました関係省庁というものの例示としまして防衛庁のお話が出ました。私どもも、今聞いたところではございますけれども、防衛庁の図書館等で調べまして、陸軍軍医学校の五十年史というようなものはあるようでございます。それは明治十九年から昭和十一年までの年史というような形で書かれておるものと承知しておりまして、その中には見出すことができません。

鈴木(喜)委員
 どうもありがとうございました。そういう五十年史、またこちらでも参考にもさせていただいて、いろいろと調べていきたいというふうに思います。
 ところで、この人骨でございますけれども、その際にも申し上げましたし、法務委員会では、この人骨が出た際に、これは犯罪に関係があるかもしれないということで、警察の方からの調べ、そして科学捜査研究所ですか、警視庁の方の科捜研で調べたという結果などについて法務省で伺い、そしてまた厚生の分科会の方では、そのものについての鑑定をどうするかという問題についてもちらっと伺ったんじゃないかと思います。
 鑑定をしようとして、掘り出された場所が新宿区でございますから、新宿区が主体となりまして、これは一体どういう人骨であるのか。科捜研の方からのお答えでは、これは犯罪に関係あるかどうかわからないけれども、死後二十年以上たっているということで、これはもう時効の問題がございますので刑事訴追の可能性がありませんから、犯罪にもうならないということで打ち切られて、細かいある程度のことは私の質問のときにも答えていただいているわけでございますけれども、もっとより肝心な、この骨が果たして日本国民のものであるか、巷間うわさされておりますような中国から強制連行されてきて、そこで何がしかの犠牲になった方々の骨ではないかということで、その人種ですね、性別まではそのときわかっているのもあったということなのですが、人種は一体どこの、外国人なんだろうか日本人なんだろうか、そういうことについてわからなかった。
 それでその鑑定を、ではそういうことまで専門的に調べてもらおうとしますと、なぜかこれが依頼を受けた方が断ってこられる。何かどこからか圧力があるのじゃないかということをこの間の質問のときにも申しました。その後この鑑定についてどういうふうないきさつになりましたかということについて、厚生省の方でおわかりになっている点がありましたらお知らせいただきたいと思います。

寺松政府委員
 今委員が申されましたとおり、いろいろと新宿区の方では検査を依頼されたようでございます。なかなか検査の相手を見つけることができなかったようでございますが、最近、昨年の九月でございますか、新宿区が人骨の鑑定を外部の研究者に依頼することになったという旨の新聞報道は私ども承知いたしておりまして、その後その結果がどうなったかはつまびらかにしてございません。

鈴木(喜)委員
 昨年の九月に依頼したというこの依頼先、それからどういったことを依頼したかという鑑定の依頼内容とか、そういうことについてはおわかりでいらっしゃいますか。

寺松政府委員
 今先生御質問の件につきましては、私どももお聞きしたわけでありますけれども、新宿区の方で私どもに御回答いただいておりません。

鈴木(喜)委員
 そうしますと、厚生省の方では、鑑定を頼みましたよということだけを抽象的に新宿区の方からお聞きになったということでございますか。

寺松政府委員
 私どもは土地管理者と申しますか、その人骨が出ましたところの土地管理者でございますので、法令に従いましてそのように届け出をし、私どもの土地管理者としての義務は果たしておると考えておりまして、その結果につきましては新宿区が責任を持ってやるということになっておるわけでございますから、そのようにお任せをしておるわけでございます。

鈴木(喜)委員
 これは後からもいろいろとお願いもし、問題にもしていかなければならないところだと思いますけれども、一年前にもやはり寺松さんからのお答えだったと思うのですが、局長はそこで、私は土地を管理しておりますから、ここについては警察に知らせて、それでお渡ししたのだからもうこれで義務は全部果たしております、そればかりを、議事録を今ずっと見ていますと、たしか三回か四回答えておられる。繰り返しますがと、それ以上何も言っていただけない。唯言っていただいたのは、資料等を探していただけるというところまででございましたよね。
 これは厚生省というお役所の性格からいっても、いかにこれが旧陸軍のことで厚生省はその後でございます、土地管理者としての義務だけでございますとおっしゃいましても、やはりここで持っておられ、現在この土地を使われ、その土地から人骨が異常な事態として三十五体も発見されたという事態があった場合に、しかもそれについてただ単にこれが病死の方ということではなく、そうではない異常な亡くなり方をされたものであり、うわさとして、そういう形で中国から強制連行されてきた人たちの犠牲者の一部ではないかというような話が出てきて、それを調べている人たちもいるというような現状の中で、ただこれは土地の管理者でございますから知りません、これは旧陸軍のことでございます、医学校のことまでは存じませんということではなかなか済まないのではないかと私は思うのです。
 今後この問題についてもどういうふうに対処していっていただけるものか、この点私たち自身が非常に苦慮しているところでもあり、強くお願いをしていかなければいけないところだと思うのですが、ただ単に土地の管理者としての責任、これだけで突っぱねられたのでは困るのですよね。これは日本人だけでなく、日本の地で亡くなられた方々、その遺族の方々ということを考えますと、そこに対する適切なとらえ方、対応の仕方で最も適合したお役所として厚生省はあるのじゃないかと思うのです。今ありませんからとか紋切り型のお役所としての豚ではなく、こういった問題をこれから先もどのように対処していかれるのかということの窓口にぜひなっていただきたいというふうに思います。
 この点について今後どのようにしていくかということで考えていっていただきたいと思うのですが、この場所というのは、予防衛生研究所というものができまして、そこでは近隣との問題もあり、そこでの安全性の問題についてもさまざまな議論がなされているところだと思いますけれども、そうしたものができ上がるということも、ここから人骨が発見されたということは何かしらただ単に偶然とだけは言えないような、一つの神の摂理みたいなものまで感ずるような問題ではございます。ですから、この問題についてこれから先きちんとしたけじめを厚生省でつけていただきませんと、なかなかその次の問題も運用上も発展していかないのではないか、私はそういうふうな感じすらするわけでございますが、この点について厚生省でこれから先どのような形で事実解明またはその後の処理、対応等をしていただけますか、この点を伺いたいと思います。

寺松政府委員
 何度も何度も同じことを申し上げておるようでございますが、関連の関係法令等にのっとりまして私どもは土地管理者として所定の手続きをやった。したがいまして、法律に基づきまして今度は新宿区の方がその辺の人骨の、何といいましょうか解明もやるということで御依頼をされているようでございますので、その結果を見守りたい、このように思っております。

鈴木(喜)委員
 これは今そういうことでよろしいのでしょうか。援護局の方でもそのような形でよろしいのですか。

多田政府委員
 援護局の方というふうに御指摘ありましたのは、多分設置法の「旧陸海軍に属していた者の復員その他旧陸海軍の残務の整理」に関する事務、これが厚生省の所管になっているではないかということを御指摘になっておられるのだろうと思います。この事務、用語だけ読みますと何かかなり幅広く読めるわけでございますけれども、経緯をずっとたどっていきますと、第二復員省で所掌していたこの復員その他の残務処理の事務を順次引き継いでまいりまして、そして最終的に厚生省がこれを引き継いでいる、こういう経緯でございます。したがいまして、具体的には人事関係資料をもとにして行う事務であって、恩給の進達ですとか履歴証明ですとか、そういう人事関係の事務を引き継いでいる、こういうふうになっておりまして、全般的に軍の残務整理を引き継いだということではないというふうに考えております。

鈴木(喜)委員
 これも前にも伺いました。そうではない、だから軍のことを全部厚生省が、援護局が引き受けるということはできないのだということを伺っているわけでございますけれども、そこでもう一つ社会局長、いかがでございましょうか。

末次政府委員
 ただいまの人骨の件に関しまして、社会局としては所掌事務から見まして関係がないものと考えております。

鈴木(喜)委員
 この問題について関係がない。この人骨について、もしこの後、外国人であったというような鑑定結果が出た場合に、それでは厚生省としてはどこが受けていただいて、全部厚生省で管理するということでなくても、人骨がこうこうであったというようなことを新宿区から厚生省の方に申し入れた場合に、どのような対応の仕方を厚生省としては考えておられますか。

寺松政府委員
 私からお答えするのが適当かどうかわかりませんが、今先生の御質問の件につきまして、一般論といたしまして、厚生省として、私どもは土地管理者として果たすべき義務は終了したと思っておるのでありますが、仮に新しい事実が判明いたしまして、それに対処すべき問題が生じるかどうかわからないということだと思いますけれども、もしも仮にそういうものがあった場合には、その事実の内容に応じましてそれぞれの関係省庁が対応されるものだ、このように思います。

鈴木(喜)委員
 一般論としてということですが、その内容に応じましてそれぞれの関係官庁が対応されるということでは、それの関係官庁に交渉をされるといいますか、調整をされるのは厚生省以外にはあり得ないと思うのですが、その点はいかがですか。

寺松政府委員
 厚生省としてというのもあれでございますけれども、やはり新宿区から東京都を経てそれぞれ関係の省庁と御相談なさるのではないかと存じます。

鈴木(喜)委員
 それはおかしいと思うのですね。ここで今言っていることは、新宿区の方から厚生省に対して、こういうふうな形で、人骨で、こういうふうなこれこれの結果が出たと、今言っていることが何もわからないという結果になるかもそれはもちろんわかりませんけれども、仮にわかった場合に、これはどこでやりますかと突っぱねるということでは、全く厚生省としては何もしないと同じですよね。どこの省庁がされるかはその後の問題として、この問題を持ってきて最初にされるのはやはり厚生省じゃないんでしょうか。私はそのように承っておりますが、いかがでしょうか。

寺松政府委員
 先生にお答えするのも同じことなのでございますけれども、やはり仮定の話はなかなかしにくいのではないかと思います。したがいまして、もしも新しい事実があって、それぞれの対応をしなければならないというようなことになれば、それは関係の省庁が対応されることになるのではないかと一般論で申し上げたわけでございます。

鈴木(喜)委員
 もう一度押し問答するようですが、各関係の省庁が対応されるということは、そういう言い方をすると、厚生省は関係ないよということを言っておられるのと同じですか。

寺松政府委員
 明快にお答えできぬのじゃないかと思います。というのは、どんな事態が出てくるかわかりませんので、仮定の話は私の方からお答えするのはいかがかなと思います。

鈴木(喜)委員
 何回聞いても同じですけれども、もう一度聞きます。
 もし仮に、仮定だと言われたら困るのですが、鑑定結果がもうすぐ出るという、昨年の九月からの鑑定結果がもうすぐ出るということを踏まえて、ここで出てきた場合に、新宿区の方がこれを関係各省庁、どこかでそれに対応されるかもしれませんけれども、私が今一般論として伺った中では、局長としてはお答えしにくいところではあるかもしれませんが、厚生省のところに持っていって、各関係省庁に、どこかが対応されるということであったら、そこについてまず持っていけば、取りまとめとまではいかないまでも、何とかそこでの調整をしていただけるということに私は理解をいたしますが、次の問題に移る前に厚生大臣、このことについて一言お願いいたします。

山下国務大臣
 これが一体か二体ならともかくも、三十五体となりますと、これはやはり大きな一つの問題であると思います。今局長からいろいろお話し申し上げましたが、私といたしましては、これをただ単に十分調査をしないで、無縁仏として弔うということは心残りがあります。今の局長の話では、もう十分調査をしたと言っておりますが、さらに私の責任において周辺の聞き込みであるとかそういうこと等をもう一回やってみまして、また適当な時期にお答えすることといたしたいと思います。

鈴木(喜)委員
 どうもありがとうございました。それでは大臣からのお言葉をいただきましたので、ぜひその聞き込みの中にこれからの鑑定結果ということも踏まえまして一大臣からの直接のお約束と私は受けとめまして、よろしくどうぞお願いを申し上げます。

人骨問題・答弁記録

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