軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会

The association demanding investigationon human bones discovered from the site of the Army Medical College

厚生労働大臣 川崎二郎 様

2006年6月23日

元日赤看護婦 石井十世(いしい・とよ)
陸軍軍医学校および国立東京第一病院勤務

看護婦として41年間奉職し、退職の後もこうして私の話をお聞き届け下さることを光栄に存じます。

  1. 人体標本について

     私は日赤の看護婦となり、昭和19年に召集されて陸軍軍医学校の口腔外科に勤務しました。事務員ではなかったので、遺体を扱ったこともあり、解剖の様子を見たことがあります。臨時東京第一陸軍病院には霊安室が三つあり、私は軍医学校に近い霊安室によく行きました。病院には下働きの人がいて霊安室の遺体を裸にして、名札を首につけてホルマリンの水槽に入れるところを見たこともあります。衛生兵も協力したと思います。ホルマリンを入れた水槽は軍医学校と臨時東一の渡り廊下のわきにありました。下働きの人が解剖するための遺体を水槽から引き揚げていました。水槽の近くに解剖室があって、見学することができました。解剖した後の人体標本は娯楽室の地下にぎっしり置いてありました。娯楽室は軍医学校の第三病棟からみて、少し登った上のほうにありました。空襲で建物が焼けた後でも標本は、霊安室や解剖室の近くの廊下などにたくさん置いてありました。大きなガラス瓶に入れた全身の標本もありました。

  2. 人体標本の処分について

     終戦後、アメリカ人が進駐してくるというので、その前に人体標本が見つからないように処分しようということになりました。国立東京第一病院の庶務課長をした松下菊松さんから相談を受けたこともあります。私が知っている処分した場所は、国立栄養研究所のわきと松下菊松さんの宿舎付近、口腔外科で使っていた技工室の前の3カ所です。地図に記した所です。その他に戸山公園の箱根山にあった防空壕に入れたとも思いましたが、場所はわかりません。

    ① 国立栄養研究所のわきについて

     国立栄養研究所の建物は、陸軍軍医学校の軍陣衛生学教室と標本室・図書館に使っていた建物で、空襲で焼けずに残りました。この建物のわきに人体標本を埋めたのを見ていたことを覚えています。衛生兵が片付けていました。今の感染症研究所の建設中に、この場所で「人骨」が発見されました。4年前、近くに納骨施設が出来て大変喜んでおります。今年もおまいりに行きました。

    ② 松下菊松さんの宿舎付近(戸山ハイツ八号地第二住宅、現在の国立国際医療センター戸山五号宿舎付近)について

     陸軍軍医学校防疫研究室の周辺と松下菊松さんの宿舎付近、その前のがけのところに人体標本を埋めたと聞いています。野良犬が掘り出して、骨をくわえていったことがありました。松下さんは進駐軍に掘り出されたら困るので、木造の宿舎を建てて国立東京第一病院の医長クラスの人たちに住んでもらい、監視の意味もあって自分も住んだといってました。松下さんはその後、世田谷に家を新築しましたが、引っ越さないで亡くなるまでここにいました。責任感の強い人でした。

    ③ 口腔外科の技工室の前

     空襲で焼け残った陸軍軍医学校の建物に整形外科で使っていた建物(済生会病院の横)がありました。戦後、国立東京第一病院になってから、その建物に産婦人科が入りました。私は東一病院になってから、産婦人科に移りましたので、その建物で仕事をしていました。その建物の南はしに口腔外科で使用していた技工室がありました。人体標本は技工室の前に穴を掘って埋めました。ガラス瓶から標本を取り出して埋めました。私が手伝いましたからよく覚えています。

  3. 松下菊松さんのこと

     松下菊松さんと知り合ったのは松下さんが東一病院の庶務課長になってからです。その頃まで、人体標本はありました。アメリカ人に見つからないようにしてあったのです。主人の政一は傷痍軍人で入院していましたので松下さんと顔なじみだったのです。そして、松下さんは事務部長を務めた後、社会福祉事業振興会に勤めました。その頃、主人は一足早く同振興会に勤めており、住まいが同じ戸山ハイツなので、松下さんは私の自宅に立ち寄ってお茶を飲みながらよく話をしました。そのときに松下さんから「進駐軍が来て人体標本を掘り出されたら困るので、埋めたあとに医長クラスの宿舎を建てて住んでもらい、監視の意味もあって自分もそこに住んだ」という話を聞きました。

  4. 厚生労働大臣に伝えたいこと

     半世紀以上経ったのに、遺骨を掘り起こして供養していただけることはありがたいと思います。仏様も喜んでいると思います。よろしくお願いします。

以上、申し述べましたことに間違いありません。

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