第百六十四回国会衆議院 決算行政監視委員会第三分科会議録 第一号

1 ハイライト(ここがポイント)

川崎国務大臣 今二つの御意見があったと思います。一つは、DNA鑑定等科学的知見が上がってきているのだから、それによってできるのではないか。一方、答えたのも医療の専門家ですけれども、まだ難しいと。ただ、今フィリピン等戦没者の遺骨収集の中で、DNAの鑑定の技術者と我々の接触も多うございますので、もう一度その人に問うてみよう、第一番目は。これはどちらが正しいか、できるんじゃないか、いや、こちらの側は難しいという話でしたから、私の方から専門家に聞いてみましょう。
 それから、二番目の話は、今郡委員が特定できるという話でございましたので、特定できるならぜひ教えてください。それは私どもも、そうしたものが埋められているということになれば当然掘り出して、そして、どなたにしても、日本人であっても中国人であっても、丁重に埋葬はしなきゃならないこう思いますので、ぜひ教えていただきたい。
 また、郡さんじゃなくてもその関係者の方が知っているというんだったら、第二の証言者になりますので、第一の証言者がいることは事実です、しかし、その方がどこだという特定ができなかった、埋めたらしいという話は言っているわけですから、第一の証言者はいる。第二の証言者として、いや、私はいるところは知っているという方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。善意で申し上げているんです。できればそういうものを解明していくのは当たり前のことだろう、こう思いますので。
郡分科員 今川崎大臣から大変力強い御答弁をいただきました。NGOの方々が、本当に一生懸命一生懸命調査を続けられております。その結果、埋められたというふうにされる地域の特定を既に行っております。これは、住宅地図と、それから航空写真でもしっかりと確認できるものでございます。ぜひ、大臣の今の御答弁にございました、この場所で調査を進めていただきたいというふうに、重ねてお願いを申し上げます。
 戦後六十年を過ぎたわけでございます。川崎大臣も戦後生まれだというふうにおっしゃっておりますが、戦時中のさまざまなことというのを後世にずっと引きずることがないようにしっかりとした調査を行って、そしてまた国の内外にこの調査結果を発表していくということは、政府のかつての戦争に対する責任を果たすことにまさにつながるわけでございますし、そして近隣諸国との友好関係を深めていくというのも、過去の歴史への認識があってこそでき得るものだというふうに思っております。
 厚生労働省は、土地の管理者としての立場からこの人骨の由来を調査してきたわけでございますけれども、新たな調査の手がかりが得られることもあり得るというふうにしておりますので、新しい調査方法がわかっているのであれば、それを必ず実施していただく。そしてまた、その骨が、標本が埋められたのではないかというふうに言われている地域も特定されている。ぜひそこの調査もやっていただきたい。
 先ほど大臣から大変力強い答弁をいただきまして、私もそうですけれども、きょうは傍聴に、その市民運動を長年続けてこられた皆様方もおいでになっておられます。大変心強い思いで聞かれたことだと思います。
 大臣、実はこの人骨が保管されている場所、国会から車で二十分ほどぐらいでしょうか、本当に静かなところで、私も、桜の満開の時期でございましたけれども、伺わせていただきました。大臣もぜひこの施設に視察に行っていただきたいと思います。その上で、ぜひ省内の方々と今後の対策についてお話をしていただきたいというふうに考えております。
 最後に、その点につきましてお尋ねをいたします。
川崎国務大臣 多分、六月の十八日で国会が終わるんだろうと思いますので、時間ができましたらいろいろなことをさせていただきたいと思います。



2 詳細(全文)は以下の通り

郡分科員 民主党の郡和子でございます。
 このところ、小泉さん、間もなく任期が終わるというところで、ポスト小泉をめぐってのいろいろ報道もなされているところであります。
 安倍官房長官が靖国神社の参拝については明言を避けられました。小泉さんが靖国神社参拝をするということをめぐって、日中また日韓の外交が大変冷え込んでいるということは皆さんもよく御認識のとおりでありまして、ここをいかに解決していくのかというのが、次の総裁・総理に求められる重要な課題だと思っております。そこの説明責任を果たされないというのは大変残念だなと、この報道に関して実は感想を持たせていただきました。正しい歴史認識を持って、そして周辺の各国と仲よくしていくというのが外交の第一であろうと思います。
 きょう、実は厚生労働大臣にお尋ねしたいなと思いましたのは、先日の厚生労働委員会の中でも、戦傷病者等の妻に対する給付金の法案等に関しても大変前向きの御答弁をされていました。また、ハンセン病問題の解決にも前向きに御検討されるということ、それから、戦時中徴用されました朝鮮半島出身者の戦死者に対しての遺骨の返還にも大変前向きに努力される、そういう答弁をされていて、大変心強く、私も強く共感するというふうに思っているところです。
 そこで、きょうは、私はもう一つの遺骨問題について取り上げさせていただきたいと思っております。
 これまで実は我が党でも何度か質問させていただいた件でございますけれども、それは、国立感染症研究所のございます戸山研究庁舎内に保管されております人骨の取り扱いについてでございます。
 納骨から四周年に当たりました三月の二十七日、私もその施設にお参りをさせていただきました。お花をお供えいたしまして、本当にどういうお気持ちでいらっしゃるんだろう、そういう追悼の誠をささげてきたわけでございます。
 百体以上と言われる大量のこの人骨というのは、研究所の建設中に発見され、そしてまた新宿区が行った鑑定や厚労省の調査で、旧陸軍軍医学校時代の標本ではないかというふうなことを聞き及んでいるところです。
 そこで、最初に、厚労省がこの人骨を保管することになった経緯につきまして、簡単にお尋ねしたいと思います。
外口政府参考人 お答え申し上げます。
 平成元年七月に新宿区戸山にある戸山研究庁舎の建設工事現場で発掘された人骨につきましては、墓地、埋葬等に関する法律の趣旨を踏まえ、新宿区が当初保管しておりました。
 平成四年に、国会におきまして人骨の由来等について調査すべきとの議論がございまして、土地の管理者の立場から、厚生省、当時でございますけれども、としても、その由来について調査をすることとなりました。
 人骨の由来調査につきましては、当時の陸軍軍医学校関係者等に対して面接による聞き取り調査や質問票等によるアンケート調査などを行いまして、平成十三年六月にその結果を公表いたしました。この報告におきましては、発掘された人骨が旧陸軍軍医学校が処分した人体標本に由来すると一応推測されるとしており、この結論を踏まえれば、国が埋葬及びそれまでの間の保管に当たるべきものと考えられます。
 このため、政府として人骨を保管することとし、担当省庁を決定するに当たり、人骨が発見された土地を管理し、長期間にわたり調査を実施してきた厚生労働省が、平成十四年三月に新宿区から人骨を引き取り、人骨が人体の一部であることを踏まえて弔意を示しつつ、保管に当たることとしたものでございます。
郡分科員 今御答弁いただきました軍医学校時代の標本類、あるいは標本製作用の医学教育用に集められた死体の一部であったろうという調査結果が出たわけでございます。
 きょう、実は川崎大臣に事前に写真をお見せいたしているかと思います。私もこういうふうに提示をさせていただくのが大変つらい思いもいたしますんですけれども、これが当時発見された骨の一部でございます。十数個の頭骨に脳外科手術の跡、あるいは中耳炎と同じような、大変類似するような、そういう人為的な加工の痕跡があった、あるいはまた、ここに銃創の跡がありますけれども、こういうようなものがあったということでございます。
 今し方報告がありましたとおりに、陸軍軍医学校の標本ではないかということですけれども、通常、大学の医学部などで病院などにございます病理標本というものは、これは死体解剖保存法で、遺族の承諾を得るというのが基本原則となっております。今お見せいたしましたこの人骨というのは死体の一部でございまして、倫理上から見て適切な管理がなされているとは到底思えないわけですけれども、大臣の所見はいかがでございましょうか。
川崎国務大臣 遺族の承諾について申し上げれば、この死体解剖保存法自体が昭和二十四年制定でございますので、この法律と照らしてということでは遡及するのは無理だろうと思います。
 ただ、人骨が遺体の一部であり、尊厳を持って取り扱う必要がある、これは当然のことで、保管施設を設け弔意をあらわしておるということで、厚生労働省として保管をさせていただいているということでございます。
郡分科員 これらの骨の鑑定結果では、顔面等の人種特徴から、大部分がモンゴロイドに属すると推定されるが、モンゴロイド中の特定の人種に同定することは不可能であるなどとございまして、日本人が含まれていることもあり得るが、少なくとも一般日本人集団の無作為の標本ではない可能性が大きいというふうにされております。要するに、この人骨というのは日本人以外のアジア系の人々が含まれているという鑑定の結果でございます。ですから、これは戦時中に、関東軍の防疫給水部、いわゆる満州にございました第七三一部隊に送られて人体実験された人々の遺族の方々から、これは自分の肉親ではないか、そういう訴えも寄せられていると聞いております。
 厚生労働省としてはこういう方々に対してどのような対応をなさっているのか、お尋ねをいたします。
外口政府参考人 厚生労働省におきましては、平成十三年に公表いたしました人骨の由来調査では、この人骨の由来につきましては、ただいま御指摘の関東軍防疫給水部、第七三一部隊との関連を含め、明らかにすることができなかったところであります。
 厚生労働省としては、御家族からの申し立てにつきましては、申し立て書を持参された方々と面会し、当該文書を受領いたしまして、後日、申し立て書を持参された方々との面会の場を設けまして、長い時間をかけて関係者の聞き取り調査を行ってきましたが、人骨と七三一部隊との関連は確認できなかったこと、これ以上の調査が困難であること、人骨は土地の管理者として丁重に保管することをお話ししてまいりました。
郡分科員 鑑定の結果では七三一部隊との関係は確認できなかったということではありましたけれども、全く関係がないという鑑定結果ではなかったわけで、関係もあり得るということであろうと思います。
 実は、夫ではないかという申し立てをされておりました敬蘭芝さん、夫を七三一部隊に送致された敬蘭芝さんは、一九九一年のことですけれども、この人骨の中に実は夫の骨が含まれているのではないか、日本政府に対して、事件の真相を明らかにしてほしいというふうに申し立てを行っております。日本政府からはこの敬さんに対して何の連絡もありませんで、大変失意のうちに、ことしの五月四日に亡くなられました。
 厚生労働省の調査報告の中でも、これらの骨というのは、戦場から集められた戦死者らから作製されたものが含まれていた可能性があるというふうにされているわけでございます。厚生労働省が行った陸軍軍医学校の関係者へのアンケート調査におきましても、戦場に遺棄されている多数の中国兵の戦死体の中から、主として頭部戦傷例を選別し標本として持ち帰ったものと聞いている、あるいはまた、教官が卒業生に研究に必要な戦死体を軍医学校に送ってもらいたいと頼んでいたので、送った卒業生がいたのかもしれないというような回答も寄せられていると承知しています。
 もし、これほど多くの日本人以外の方々の人体を戦前の陸軍軍医学校が入手しているとすれば、これは、一九〇八年に我が国が批准しております傷病者の状態改善に関する第二回赤十字条約に違反しているものと思われます。この条約は、戦死者を略奪や虐待から保護するために、その氏名を伝えて遺留品を返還するように定めているからでございます。また、同じように、戦死者の人道的な扱いを定めましたジュネーブ条約、この精神にも反していると言わざるを得ないわけでございます。戦時国際法におきましては、死者がだれであるのかしっかりと識別した後に、その後でなければ埋葬も火葬もしてはならないというふうになっております。また、死因が不明の場合であれば、その死因について公に調査するということが定められているわけでございます。
 国際法、国内法が求める、死者と遺族に対する人道的、倫理的な取り扱いの趣旨に沿って、身元の確認や死因の究明をする公の調査を可能な限り尽くすことが誠意ある対応だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
外口政府参考人 戦時国際法等についてお答えする立場にないかもしれませんけれども、人骨につきまして、やはりそれが医学の標本として軍医学校に保有されていたという可能性があるわけでございまして、こういったことにつきまして、私ども、その土地の管理者の立場からいろいろな調査をしてまいりました。先ほど申し上げましたような面接調査あるいはアンケート調査、それから軍医学校関係の資料の調査等を行ってまいりました。ただ、そこからはなかなか手がかりがつかめなかったわけでございます。
 いずれにいたしましても、そういった人骨の由来ということについて大変関心があるわけでございますので、そういったことも含めまして今その人骨を保管している、こういうことになっているわけでございます。
郡分科員 保管をしているというふうな御答弁でございました。これは、新たな調査の手がかりが得られることもあり得ることから現状のままで保管をするというふうな御説明であったかと思います。そういう御説明がなされてから、もう既に四年経過しております。このままですと、もう半永久的にあの施設のままに、確かにあの骨の方々、それぞれお名前があって御家族もあった方々だろうと思います、そういう方々の骨がそのままずっと、調べることもせずそのまま置かれるということになりはしないかと、大変心配しているところです。
 最近では、この種の調査におきまして、DNA鑑定やそれからミトコンドリアDNA鑑定、またスーパーインポーズ法など、新しい科学的知見に基づく鑑定手法が開発されて、これは確立しつつあるというふうに伺っています。シベリア抑留者の身元の調査や、また北朝鮮の拉致被害者の調査でも、政府がDNA鑑定に基づいて遺骨の身元確認を行ったというのは記憶に新しいところです。
 また、二〇〇三年のことでございますけれども、沖縄戦におきまして戦死された方々の遺骨の身元調査に、このスーパーインポーズ法という方法が使われました。頭蓋骨を生前の写真とコンピューターで合成いたしまして、目とか鼻とか口とか耳などの位置、そしてまた頭蓋骨との一致状況を見て、その身元を特定するというものだそうですけれども、これでぴたっと身元が特定されたと。
 中国の方からの訴えにありますように、皆さん、生前のお写真も政府の方にお渡しされているわけです。これらの骨とその写真とを合わせてみれば、その人なのかどうかというのはすぐさまわかることだと思うんです。なぜ、こういうような調査をされて、中国からのお訴えをなさっている方々を安心させてさし上げることができないのでしょうか。
外口政府参考人 個人の識別につきまして、DNAを使った鑑定、あるいは同じDNAですけれどもミトコンドリアを使った鑑定、それから写真を使ったスーパーインポーズ法というのがございます。
 ただ、いずれの方法につきましても、例えばDNA鑑定の方法は、サンプルの採取の方法とか、それから、例えばホルマリンを使っている場合にはこれは変性して、なかなか難しゅうございますし、それからミトコンドリア法も、ヘテロプラスミーとか、技術的には、それだけやればすべてわかるというのじゃなくて、これもどちらかというと補助的に使う方法でございます。
 また、スーパーインポーズ法も、技術自体はだんだん進歩しているようでございますけれども、スーパーインポーズ法だけで個人を特定するようなそういった、ある程度もうちょっと手がかりがある中で、絞り込んだ中でということはあるかもしれませんけれども、まだ手がかりが不足している中で、スーパーインポーズ法とかそれからミトコンドリア法などで、それだけで個人を特定することはなかなか困難ではないかと考えております。
 また、私どもも、そういった技術革新の方法については十分意を用いてまいりたいと考えております。
    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕
郡分科員 今、まだスーパーインポーズ法についても確かな技術法ではないというような御発言もありましたけれども、なぜやってみないのかということの方が私にとっては疑問であります。
 確かに、七三一部隊に送致されていって、私の夫ではないかという申し立てがあるわけです。御遺族の方は、写真もあわせて出されているわけですね。そういう中で、この頭骨があって、では、これと合わせてみれば済む、あるいはまた、この頭骨自体の写真をしっかりとデータベース化してとっておけば、さまざまな申し立てがある人たちに対して、それを照合してお答えもしやすくなるのではないかと思うんですが、それについて何ら行動を起こさないというのは、かえって調べたくないのではないかというようなうがった見方もできるんだろうというふうに思いますが、いかがでしょう。
外口政府参考人 確かに、御家族のお気持ちを考えれば、何とか自分の肉親を捜したいというお気持ちであろうかと思います。
 ただ、現状におきまして、今の技術のレベルでは、ある程度絞り込めるような情報がないと、結果として、肯定もできなければ否定もできないという結果に終わる可能性が多いと思います。そういったことも含めまして、私どもとしては、今の技術、さらなる技術革新が必要ではないか、あるいはもっと手がかりが必要ではないか、かように考えておる次第でございます。
郡分科員 それでは、ちょっと質問を別の方向に持っていきたいと思います。
 実は、陸軍軍医学校に勤めておられました看護婦さんが、現在の国立国際医療センターの宿舎付近に敗戦直後多くの標本を埋めたと聞かされたという証言をなさっておられます。この土地というのは東京都に売却する方針だというふうに伺っておりますけれども、人骨標本があるのではないかというようなことをめぐりまして大変交渉が難航しているというふうに聞いています。
 そういう中で、ことしの一月に開かれました第一回国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議に出された資料、これを見させていただきました。これによりますと、その地域というのは、戸山三丁目二の四、戸山五号宿舎ということになりますけれども、「既存宿舎の現在地建替」というふうにこの配付資料ではございました。東京都に売却する計画というのはなくなったのでしょうか。
松谷政府参考人 戸山五号宿舎地の周辺一帯の約一万平米につきましては、関東財務局から平成二年度に、非効率に土地を利用している旨の指摘を受けてございまして、平成五年度より、東京都に公園用地として順次売却を行っているところでございます。平成九年度までに約六千六百平米の売却を完了しているところでございます。
 残る戸山五号宿舎地につきましても、財務省による平成十年から十二年度にかけて行われました行政財産等の使用状況実態調査において、売却するなど有効に利用する必要がある財産と指摘されたため、引き続き売却を検討してきたところでございます。
 しかしながら、この土地の売却については、東京都と折衝を続けてきたわけでございますけれども、周辺施設から今御指摘のように人骨が発掘されたこと等から、現在この折衝が中断しているという状況でございます。
郡分科員 都の方は買いたくないということなんでしょうか。これは、その標本があるのかないのかしっかり調べて、なければそれで売れるわけでしょうし、そういう調べもせず、そのままその土地を宙ぶらりんの状態にしておくというのは大変、どんなものなのかというふうに思います。
 厚生労働省としては、この地域の発掘調査の必要はないというふうなことをこれまでおっしゃられているようですけれども、売却するのか、あるいは宿舎を建てかえるのか、そのいずれにしましても、この際、調査をしっかりとされるべきだと思います。ぜひこの点についてお答えください。
松谷政府参考人 戸山研究庁舎建設時に発見されました人骨の由来につきましては、先ほど答弁がございましたように、厚生労働省が発見場所の土地管理者として実施した調査結果が平成十三年六月に取りまとめられているところでございます。
 その調査結果によりますると、標本が近隣にも埋められたと聞いたとの回答が得られたが、伝聞による一名からの回答にとどまり、遺骨が埋まっている可能性のある場所も特定されていない、このため、厚生労働省が管理する土地を含め、現に得られている情報からは、発掘調査の必要はないと考えられると報告されているところでございます。したがいまして、御質問の人骨発掘調査の実施につきましては、現時点におきましても行う必要はないと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、この土地の売却につきましては引き続き検討していきたいと考えております。
郡分科員 今局長から御答弁ありました、たった一人の伝聞にすぎないということでございましたけれども、そういうふうな話を聞いていると。そして民間のこの問題を追及している団体がいらっしゃるわけですけれども、この方々の調査では、その場所というのも特定されております。こういうことを考えますと、ぜひここの発掘調査をしていただいて、本当に標本類が埋められているのかどうなのかということを明らかにされるべきだと思います。
 この人骨につきましては、その由来、中国の戦死者の方々によるものではないかという見方があるということですけれども、今申しました、国が処分した人体標本に由来するというふうなことでございますし、戦時中に集められた遺体ではないかという疑いも濃厚でありまして、本来は丁重に扱わなくてはならないものだと思いますし、それを無造作に捨ててしまっている。八九年に発見された人骨についてでございますけれども、無造作に捨てられているのを、建築をするときに新たに発見されたわけです。さらに、そこの場所というのは、陸軍軍医学校という国の機関であったわけでして、これは国の責任は免れないものだというふうに思います。
 大臣、これまでのやりとりをお聞きになって、いかが感想を持たれましたでしょうか。お答えください。
川崎国務大臣 今二つの御意見があったと思います。一つは、DNA鑑定等科学的知見が上がってきているのだから、それによってできるのではないか。一方、答えたのも医療の専門家ですけれども、まだ難しいと。ただ、今フィリピン等戦没者の遺骨収集の中で、DNAの鑑定の技術者と我々の接触も多うございますので、もう一度その人に問うてみよう、第一番目は。これはどちらが正しいか、できるんじゃないか、いや、こちらの側は難しいという話でしたから、私の方から専門家に聞いてみましょう。
 それから、二番目の話は、今郡委員が特定できるという話でございましたので、特定できるならぜひ教えてください。それは私どもも、そうしたものが埋められているということになれば当然掘り出して、そして、どなたにしても、日本人であっても中国人であっても、丁重に埋葬はしなきゃならない、こう思いますので、ぜひ教えていただきたい。
 また、郡さんじゃなくてもその関係者の方が知っているというんだったら、第二の証言者になりますので、第一の証言者がいることは事実です、しかし、その方がどこだという特定ができなかった、埋めたらしいという話は言っているわけですから、第一の証言者はいる。第二の証言者として、いや、私はいるところは知っているという方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。善意で申し上げているんです。できればそういうものを解明していくのは当たり前のことだろう、こう思いますので。
郡分科員 今川崎大臣から大変力強い御答弁をいただきました。NGOの方々が、本当に一生懸命一生懸命調査を続けられております。その結果、埋められたというふうにされる地域の特定を既に行っております。これは、住宅地図と、それから航空写真でもしっかりと確認できるものでございます。ぜひ、大臣の今の御答弁にございました、この場所で調査を進めていただきたいというふうに、重ねてお願いを申し上げます。
 戦後六十年を過ぎたわけでございます。川崎大臣も戦後生まれだというふうにおっしゃっておりますが、戦時中のさまざまなことというのを後世にずっと引きずることがないようにしっかりとした調査を行って、そしてまた国の内外にこの調査結果を発表していくということは、政府のかつての戦争に対する責任を果たすことにまさにつながるわけでございますし、そして近隣諸国との友好関係を深めていくというのも、過去の歴史への認識があってこそでき得るものだというふうに思っております。
 厚生労働省は、土地の管理者としての立場からこの人骨の由来を調査してきたわけでございますけれども、新たな調査の手がかりが得られることもあり得るというふうにしておりますので、新しい調査方法がわかっているのであれば、それを必ず実施していただく。そしてまた、その骨が、標本が埋められたのではないかというふうに言われている地域も特定されている。ぜひそこの調査もやっていただきたい。
 先ほど大臣から大変力強い答弁をいただきまして、私もそうですけれども、きょうは傍聴に、その市民運動を長年続けてこられた皆様方もおいでになっておられます。大変心強い思いで聞かれたことだと思います。
 大臣、実はこの人骨が保管されている場所、国会から車で二十分ほどぐらいでしょうか、本当に静かなところで、私も、桜の満開の時期でございましたけれども、伺わせていただきました。大臣もぜひこの施設に視察に行っていただきたいと思います。その上で、ぜひ省内の方々と今後の対策についてお話をしていただきたいというふうに考えております。
 最後に、その点につきましてお尋ねをいたします。
川崎国務大臣 多分、六月の十八日で国会が終わるんだろうと思いますので、時間ができましたらいろいろなことをさせていただきたいと思います。
北村(誠)主査代理 時間です。
郡分科員 はい。
 ありがとうございます。それぞれに名前があった人たち、名前も知らされず、言いたいことも言えないまま、この地に眠らざるを得なかった方々、ある期を経て、この世に再び骨として出てこられたわけであります。その方々の叫びというもの、真摯に耳をそばだて聞いてまいりたいというふうに思っております。
 ありがとうございました。質問を終わります。


     

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